県立小林

宮崎県の小林高校女子バスケットボール部は、県立高ながらウインターカップ12年連続、通算37回の出場を誇る。『世界一楽しむ』ことをテーマに掲げるチームにおいて、3年生の江頭璃梨と高田栞里は昨年大会のベスト8を経験し、「楽しむことは結果にも繋がってくるんだと実感した」と語る。日々の練習から楽しんで取り組む県立小林を引っ張る2人に、チームの特徴とウインターカップへの意気込みを語ってもらった。

「自分も頑張ろう」と思わせてくれる存在

──それぞれ自己紹介をお願いします。

江頭 江頭璃梨です。佐賀県の城西中学校出身です。中学の時は最後の中体連で優勝しましたが、九州大会では1回戦敗退でした。身長は171cmでポジションはパワーフォワード、得意なプレーは外からのスピードあるドライブです。中学校の時は自分が一番大きかったのでセンターをしていましたが、ドリブルもできるのでボール運びもしていました。

高田 高田栞里です。出身中学は熊本県の託麻中学校です。中学時代は県優勝もしていないし、九州大会に出たこともありませんが、熊本の県選抜には選ばれていました。今はセンターをしていますが、小学校と中学、高校に入学したばかりの頃まではガードをしていました。中学を引退した時は165cmだったのに、そこから急に身長が伸び始めて今は174cmです。なので、どのポジションもオールラウンドにこなせます。得意なプレーはリバウンドと1対1です。

──2人も県外出身なんですね。宮崎県の小林高校に進学した理由を教えてください。

江頭 小林高校以外にも他の県や地元の高校から推薦をもらっていました。いろいろと練習に参加させてもらったり、各県のウインターカップ予選の試合を見ている中で、小林高校が自分に一番合ったプレースタイルだと思い、雰囲気もしっくりきました。3年間の寮生活になるので不安もありましたが、「ここでチャレンジしたい」、「3年間頑張りたい」という気持ちが強くて小林高校を選びました。

高田 きっかけは母から「小林高校はどう?」と言われたことです。最初は全然考えていなかったんですが、試合を見に行ったらスゴイというのを一目で感じて。バスケットスタイルも走って楽しそうだったし、チームの雰囲気もすごく明るくて「ここでバスケをしたい」と思いました。父は私が県外に行くことを反対していたんですけど、母が「行け行け」って(笑)。自分も小林高校に行きたいと思ったので選びました。

県立小林

「小さくても勝てるということを証明したい」

──高田選手から見て、江頭選手はどんなキャプテンですか?

高田 普段からおしゃべり好きです。しゃべる面ではとにかく優れていて、チームの雰囲気が悪くなっても江頭さんがまとめてくれます。今までもいろいろと苦しいことはありましたが、この人に頼っていけば何でも解決するぐらいの賢さとおしゃべりさを持っています。プレー面では1年生の時からお互いに切磋琢磨していて、ライバル的な存在ですね。何回も助けられたし、先日のウインターカップ予選でもずっと声をかけてくれて、「自分も頑張ろう」と思わせてくれる存在です。

──では、江頭選手から見た高田選手はどんな選手でしょうか?

江頭 良い意味でバカになれる。バスケでも生活でもバカになって楽しめるし、場を盛り上げてくれます。私は何かあると落ち込むタイプで、じっくりと考えた上で「じゃあ、こうしよう」という感じですが、高田さんは空気を読まないというか、先生に怒られても「いいじゃん、気にするな、行くぞー!」みたいな(笑)。キツい練習の時も一人だけバカになって、すごく声を出してくれますね。部活だけじゃなくて体育の授業でもバカになれるので、他の人と混ざっても自分という存在を堂々とアピールできる人です。

高田 これだけバカと言われると褒められているのか分からないです(笑)。それでも、今は明るくバカになって雰囲気を変える時だなと、意識してやっている時もあります。

──小林高校はどんなチームですか?

江頭 チームが掲げているテーマは『世界一楽しむ』です。去年の(フェスターガード)ヤヤさんたちの代から『楽しむ』を合言葉に取り組んできました。全国では初戦敗退だった私たちが去年はベスト8をつかむことができて、楽しむことって結果にも繋がってくるんだと実感しました。今年も楽しむことを継続して、とにかく何でも明るく盛り上げていくことを意識して取り組んでいます。

高田 小林のプレースタイルはまず走ること、そしてリバウンドとルーズボール、ディフェンスで流れをつかむことです。私たちは全国だけでなく、宮崎県内で見てもそんなに大きいチームではありません。だからこそリバウンドとルーズボール、ディフェンスは全国のどのチームにも絶対に負けないという意地を一人ひとりが持っていて、練習中からその部分は全員が意識して取り組んでいます。

──2人は去年のウインターカップでベスト8経験していますが、小林高校が日本一になるためには何が鍵になると思いますか?

江頭 桜花学園さんや岐阜女子さんには留学生がいるので高さでは負けてしまいますが、私たちは体力と速さで勝ちたいと思っています。この小さいチームがウインターカップで優勝する姿を全国の皆さんに見せることができたら、いろいろな人の希望も広がるだろうし、小さくても勝てるということを証明したいです。

県立小林

「毎日何か一つでも成長しようと心がけた」

──以前、前村かおりコーチにインタビューをした時に、『SLAM DUNK』や『キングダム』など漫画の話を生徒にすると聞きました。そういうコーチはあまり多くないと思いますが、実際に指導を受けている2人はどう感じていますか?

江頭 いろいろな話をいろいろなところから持って来てくださるんですよ。普通じゃないという言葉は良くないかもしれないですが、良い意味で異常者です(笑)。だから自分たちも「異常者になろう!」って。いろいろな意味で「バスケットに人生を懸ける!」という感じですね。なので、ウチは異常者の集まりです(笑)。

──チームの明るさがよく伝わります(笑)。それでも新型コロナウイルスの影響でインターハイが中止になったり、練習もいつも通りできない期間が続きました。

高田 インターハイ中止を知った時は「マジか」という気持ちでした。でも、先生から「その事実は変えられないから、今の1分1秒でもできることをやろう」と言われ続けて、すぐに切り替えることができました。ウインターカップは開催されることを信じて、「ウインターカップで日本一になろう」とみんなに言い続けて、モチベーションを下げないように頑張ってきました。

江頭 自粛期間中は寮が閉鎖になりました。みんなが寮に戻って来てからも、モチベーションが下がってしまう中でもどうやって上げていくかということを3年生で話し合っていました。1年生も合流したばかりだったので、チームの交流を深めながらチーム力と個々のスキルを上げていくことを意識して、毎日何か一つでも成長しようと心がけていました。

──では、最後にウインターカップでの注目ポイントを教えてください。

江頭 チームとしてはディフェンス力や脚力、ルーズボールに飛び込む姿やメンタル面に注目してほしいです。全員が「楽しむぞ」という気持ちで大会に挑むので、そういう表情や雰囲気一つひとつを見てほしいです。個人的には最後の大会になるので、コートやベンチにいる時もキャプテンとしてチームを支えるために声掛けの部分はやり続けたいです。プレーではリバウンドと得点が役割なので、その部分はどんな試合でも絶対にやり続ける、チームを勝利に導くプレーをしていきたいです。

高田 私はセンターなので、ここで点が欲しいという時に自分で得点を決めたいです。1対1でもガンガン仕掛けて、高さでは敵わない留学生を相手にしても技術でどんどん勝負していきたいと思います。