田代直希

「チームメートを信じる、意見を尊重することを今シーズンは意識」

地区4連覇を目指す琉球ゴールデンキングスは開幕節で宇都宮ブレックスに連敗を喫したが、そこからは負けなしで開幕10試合を終えた。中でも最後の2試合は、故障により外国籍選手がジャック・クーリー1人のみという苦しい状況での勝利であり、そこにはキャプテンの田代直希も大きな手応えを感じている。

「開幕からメンバーが全員揃っていない状態で10試合が終わり、そこでの8連勝はよく戦えたと思います。外国籍選手が1人の時でも2試合を勝ち切れたことで、自信に繋がりました。今後も日本人選手が外国籍とマッチアップする機会は増えていきます。特に帰化選手がいるチームを相手にした時は、確実にそうなってくる。そういった中で、外国籍が1人でも勝てることを証明できたのはうれしかったです」

この8連勝中、田代もピック&ロールからのクリエイト役やタフなディフェンスでチームに貢献していた。自身のプレーについては「良くもなく悪くもなかったです。良いプレーができている時間帯は、自分が思い描いている通りに上手くボールをさばけたりシュートを打てています。ただ、そうでない時もあり、まだ調子の波があります」と分析する。

昨シーズンに続いて主将を務める田代だが、リーダシップのとらえ方については「根本的に考え方、価値観が大きく変わりました」と明かす。

「1年目はとにかく頑張って、先頭を走って熱くプレーしようと思っていました。それが途中でケガをして思い通りに身体が動かない、先頭を走り続けることが困難になってきました。ケガで試合に出られなかった時は自問自答をする時間が多かったです。どうすればチームが良くなるのか、コロナの自粛生活もあって考え込んだことで徐々に変わっていきました」

「今はリーダーだからと先頭を走る必要はない。そもそも僕一人が頑張っただけでは勝てない。チームメートを信じる、意見を尊重することを今シーズンは意識しています。そういった意味で価値観は全く違うと思います」

田代直希

「ミスは悪いものですが、成長するためには必要なもの」

この怪我とは左足首の手術のことだ。昨シーズンの田代はこの故障によって12月15日の試合が最後となり、わずか20試合出場に終わった。手術を経て「できること、できないことがよりはっきりしてしまいました」と、以前のような身体能力ではなくなってしまった。

今、田代は27歳とまさにこれからアスリートとして全盛期を迎える時期だ。その時にこのような状況に直面するのは、相当にタフであったことは想像に難くない。ただ、そこで彼は「プレースタイルを変えないといけない。なるべく身体能力に頼らないプレーに切り替えていく必要があると思いました」と新たな道を模索する。

「新しいスタイルへの手応えはかなりあります。もっと早くこういうバスケットボールのとらえ方ができれば、もっと楽にプレーできていたとすごく思いました」

田代はスタイルチェンジへの好感触を語るが、そこにはあるベテランの大きな助けがあった。「チームメートに石崎(巧)さんという身体能力に頼らないプレーをするお手本がいたことは、本当にプラスになったと思います。僕が一方的に、こんな時は何を考えているのか、どうしたらいいのか、など質問攻めをしました。バスケットボールの知識の豊富さ、物事の考えている深さが僕とは全く違う。どれだけ自分がバスケットボールのことを浅く考えていたのかを突きつけられました」

また、チームの雰囲気も昨シーズンから変わっていると田代は言う。「藤田(弘輝)ヘッドコーチ、遠山(向人)アシスタントコーチとスタッフ陣がとにかく明るく、ポシティブをテーマにしてやっている影響はもちろんあります。そしてポシティブな選手たちが集まっています。今まではミスやターンオーバーに対して練習中からすごくネガティブになっていました。ミスは悪いものですが、成長するためには必要なもの。そのように価値観を変えていきたいです。選手全員が100%を発揮できる場を目指しています」

田代直希

次節の川崎戦は「自分たちの今の力を測れる良いチャンス」

ショートブレイク明け、琉球が対峙するのは強豪の川崎ブレイブサンダースだ。「東地区の上位で実力があるチームです。自分たちの今の力を測れる良いチャンスだと思います」と、優勝候補にどんなプレーができるか楽しみにしている。

故障者も戻ってきて、ようやくフルメンバーで戦える状況になることへの思いをこう明かす。「全員揃ってのバスケットボールをできていなかったのでワクワクしています。ただ、初めてなので上手く噛み合うのかは、試合をやってみないと分からない。キム(ティリ)選手の出場は、デビュー戦の途中で負傷退場したのみです。試合勘を取り戻すのに時間はかかります。そういった部分については危機感も抱いています」

「先は長いですが、ここまで良い形で連勝を伸ばせています。負けていい試合は一つもないですし、外国籍が1人でもしっかり戦ってこられたのは僕たちの財産です。それをこの5連戦でも続けていきたいと思います。さらにチームとしてよい状態でいられるように頑張っていきたいです」

琉球は8連勝中だが、その相手は現在勝率5割以下のチームのみだ。だからこそ、この週末の川崎戦は、今の琉球がリーグトップを狙える力を持っているのかを示せる絶好の機会となる。そして難敵撃破のためには、田代の攻守に渡る活躍も重要な要素だ。大ケガを乗り越え新たなスタイルでプレーする彼が、生まれ変わった琉球をどのように導いていくのか楽しみだ。