松脇圭志

富山グラウジーズは今夏に、若手No.1の得点能力を誇る岡田侑大や『ミスター・トリプル・ダブル』ことジュリアン・マブンガを獲得し、Bリーグ屈指の『個性派集団』となった。オフェンス力に長けた選手が多い中で、ルーキーながら開幕からの10試合すべてで先発に抜擢され注目を集めているのが松脇圭志だ。シューターの印象が強い松脇だが、本人は『ディフェンスファースト』を貫くことで指揮官の信頼を得ている。そんな松脇にこれまでの10試合と今後の目標を聞いた。

「自分が先発だと聞いた時は驚きました」

──富山は開幕から8勝2敗と好スタートを切りました。10試合を経てチームとしての手応えはどうですか?

最初はジョシュ(ジョシュア・スミス)と(リチャード)ソロモンがいない状態で、外国籍選手はジュリアン(マブンガ)一人でしたが、そこにみんなが加わってやっとチームになってきた感じがします。それぞれの個性を生かせていて、結構良いチームになってきていると思います。

──松脇選手は開幕からの10試合すべてで先発を任されています。これは『勝ち取った』という表現で合っていますか?

そういうことにしておきます(笑)。オフシーズンに2番ポジションのメンバーが発表になった時は、正直すごくヤバいなと思いましたよ。こんなにすごい人が集まるの? って。ベテランと新人王なので(笑)。それに京都ハンナリーズとの開幕戦当日まで、先発が誰になるかは分かりませんでした。なので自分が先発だと聞いた時は驚きましたね。僕が先発になることもなくはないと思っていましたが、可能性としては高くないと思っていたので、驚きの方が大きかったです。

──今言ったように、同ポジションにはベテランの水戸健史選手や城宝匡史選手、勢いのある岡田侑大選手がいます。その中で先発を任されている要因は何だと思いますか?

やっぱりディフェンスの部分が一番大きいのかなとは思いますね。これまでの10試合でも相手チームのエースや得点源の選手につくことが多かったので、そこの部分で期待してもらっていると感じます。自分でもディフェンスは通用していると感じています。

──関東大学リーグ戦で3ポイントシュート王に輝き、得点ランキングでも4位に入っていたので、大学時代はシューターのイメージが強かったです。

それ、結構言われるんですよ。シューターとして見られがちですが、高校の時からディフェンスをすごく意識していて、僕としては今も第一にディフェンスというのがあります。ただ、やっぱりディフェンスよりもオフェンスの方がインパクトがあるので、そこの部分を見られていたのかなと思いますね。大学の時の時も周りからシューターと言われても、僕自身は「僕はシューターなのか?」という感じでしたし、本心は「ディフェンスの方がやっているんだけどなあ」って(笑)。

──それでも今シーズンも10試合中4試合で2桁得点を記録するなど、得点力の高さも証明していますね。

でも、やっぱり僕はディフェンスファーストです。それこそ周りには得点力が高い選手が揃っているので、僕がそんなに得点に特化しなくても良いと思っています。ジュリアンも宇都(直輝)さんも(前田)悟さんも点を取れるので、その中で僕はディフェンスからやっていこうかなと。オフェンスも大事ですが、それは前が空いた時にシュートを狙っていきたいです。

──逆に言うと得点力に長けた選手が揃っているからこそ、松脇選手はよりディフェンスに集中できるということですか?

そうですね。そのおかげで前からプレッシャーを与えたり、高い位置からマークしたりできているので、今はディフェンスに全力を注ぐことができています。

松脇圭志

「全員で我慢することが今は必要」

──松脇選手が思う、このチームの一番の強みは何ですか?

ボールプッシュできる選手が多いので、ディフェンスからのスピードあるバスケットができていることですかね。(浜口)炎さんからもディフェンスの部分は言われているので、みんな意識してやっています。僕は昨シーズンの途中から富山の練習に参加していますが、炎さんが来てから確実に全員のディフェンスに対する意識が変わったと実感しています。もちろん、昨シーズンもディフェンスについて言われていましたが、結局はオフェンスだけになっていた部分がありました。でも、今はチームとしてのディフェンスの手応えも感じています。

──逆に、この10試合で得た課題は何ですか?

毎試合のように流れが悪い時があったり、相手に勢いを持っていかれる時があります。その部分で我慢できている時もあれば、我慢できずに自分たちで崩れることが多いので、全員で我慢することが今は必要だと思います。個人的にはディフェンスはもちろんですが、僕がノーマークのタイミングを見てジュリアンがパスをくれます。そういったノーマークでのシュートを確率良く決められるようになりたいです。

──タレントが揃う富山でルーキーながら先発を任されています。松脇選手自身、世間からも注目されているなと感じますか?

は、はい(笑)。注目してもらえるのはうれしいですがプレッシャーもあります。岡田が来ちゃったせいで、新人王が岡田と昨シーズンの悟さんとで続いているんですよね。みんなからも「松脇が続いて3連続になったらヤバいね」って密かに言われているみたいなので、僕はプレッシャーを感じているんです(笑)。

──確かに2年連続と3年連続では重みが違いますね(笑)。実際のところ、新人王の自信はどうですか?

もちろん新人王を狙っていきたいですが、それよりもチームに貢献したい気持ちの方が大きいです。

──頼もしいですね。ただ、学年では後輩となる岡田選手が新人王ですから、これは松脇選手も……。

そういうのが多いんですよ。そうやって言われるから、僕はどんどんプレッシャーに……(笑)。

──失礼しました(笑)。今は自分の色を出しつつ、しっかりチームに貢献しています。理想とする選手像はありますか?

僕の中ではディフェンスがすごく大事です。なので、どの選手からも「こいつのディフェンスは面倒くさい」とか「マークされたくないな」と思われたいです。まだ対戦していないので分からないですが、東地区の上位チームの選手はディフェンスがすごく上手だと聞きます。悟さんもアルバルクの選手のディフェンスをすごく嫌がっていたので気になりますね。対戦はまだ1カ月ぐらい先ですが、代表選手を止めることができれば、僕の自信にも繋がると思っています。

松脇圭志

「逆に個性が強い人が多すぎて良い雰囲気になっている」

──富山は個性的なメンバーが揃っていますが、チームの雰囲気はどうですか?

逆に個性が強い人が多すぎて、良い雰囲気になっていると思います(笑)。プレー面でもソロモンとジョシュが加わって息も合ってきているので良い感じですし、僕自身も楽しくバスケットをしています。

──何が一番楽しいですか?

ルーキーイヤーなので比較対象が大学になってしまいますが、やっぱり外国籍選手の影響は大きいですね。ウチの外国籍選手はみんなタイプが違うので、そこがすごく面白いです。

──それこそ今シーズンはウイングやガードの外国籍選手が増えています。もうマッチアップはしましたか?

レバンガ北海道のジョーダン・テイラーとマッチアップしましたが、すごく動きが外国人でした。ディフェンスをしていて感じたのが緩急のつけ方や手足の長さ、一歩目の速さが全然違うんですよ。なんか外国人ぽくて、すごかったです(笑)。あれは日本人ではないなと。

──松脇選手のプレーを見ていると、とても落ち着いてるのでルーキーとは思えないのですが、こうやって話を聞くとナチュラルな感じで面白いですね。

「ベテランみたいな顔している」とよく言われます。風貌とかもそんな感じで「ルーキーではない」って(笑)。良く言えば落ち着いていると思います。

──では、最後に次節の広島ドラゴンフライズ戦に向けての意気込みをお願いします。

僕がまだアイザイア・マーフィー選手につくかは分からないですが、新人の中でも注目されている選手なので、「僕が止める」とまでは言わないけど、みんなで抑えて連勝したいと思います。「僕が止める」と言うと僕だけのチームみたいになっちゃうので、みんなで止めます(笑)。