アルバルク東京

コロナ下でのシーズン、アルバルク東京の対策

Bリーグが開幕して1カ月が経過した。日本国内における新型コロナウイルスの感染者数は落ち着いているものの、まだワクチンができる目処は立たず、スポーツ界は大きな影響を受けている。プロ野球やサッカーJリーグは、一足先に観客数を制限してシーズンを再開。Bリーグも同じく観客数を制限して開幕を迎え、スタンドは密を避けた『市松模様』となっている。それでもフィールドの広い野球やサッカーと比べれば、コートが狭く屋内のアリーナで行われるバスケットボールは『密』になりがちだ。だからこそ、試合運営は細心の注意を払われて行われている。

アルバルク東京はB1で他の試合に先駆けて、10月2日に2020-21シーズンの開幕戦を行った。東京都立川市のアリーナ立川立飛でここまで3試合を開催している。A東京はシーズンに向けたチーム練習を行っていた8月中旬に、3人の選手からPCR検査で陽性反応を出した。感染症対策を徹底していても、出る時には出てしまうことを身をもって経験している。だからこそ、アリーナでの対策は徹底している。

10月21日、水曜ナイトゲームの宇都宮ブレックス戦。モノレールの立飛駅を降りてすぐの場所にあるアリーナ立川立飛の入り口には検問所のようにテントが設置してあり、非接触の検温モニターで体温をチェックされた者しか敷地内には入れない仕組みになっていた。入場口や飲食、グッズの売り場の待機列には選手の足型やマスコットのルークをあしらったマットが用意され、小さなことではあるがファンを楽しませるとともに、『密』を避ける配慮がなされている。

これまでであれば入場の際に手渡ししていたゲームデープログラムなどの配布物は、すべて座席に置くことで接触を減らした。また自由席の設定はなく、全席が指定席となっている。会場内を歩く人はすべてマスク着用で、このあたりはファンも徹底している。

選手やスタッフを守る配慮も怠らない。ロッカールームからベンチへと選手が移動する動線は、すぐ上にいるファンと距離が近いのだが、飛沫防止シートがかけられた。またテーブルオフィシャルなど進行関連の卓の配置も見直され、試合運営に支障をきたさない範囲の中で『密』を避けている。

前例がない中での会場作りは大変だったに違いない。A東京の運営担当を務める手塚明子は、「コロナの状況が見えない中で、最初はお客様自身が会場に足を運んでくれるのかが見えず、『この会場は安心して楽しんでいただけます』と伝えることが大事でした」と語る。A東京は『新型コロナウイルス感染症予防と感染拡大防止について』と題した、アリーナでのコロナ対策をまとめたWebページを作成。これは来場者への注意喚起であるとともに、不安を感じている人に対策を説明する内容にもなっている。

アルバルク東京

「安心して会場に足を運んでいただきたい」

肝心なのはバランスだ。感染対策は大事だが、何もかも禁止禁止で縛ってしまうのであれば、最終的には無観客が一番安全となる。そこまで極端でなくても、バスケ観戦を楽しむという本質はできる限り削ぐことなく、来場者に安心を感じてもらわなければいけない。そのバランスを取った結果と思われるのが飲食で、アリーナ立川立飛では飲食は自分の席でのみ可能で、会場での飲食販売は行っているが、アルコール飲料は販売も持ち込みも禁止となっている。

「飲食は全面禁止にする話も出ていました。ただ、ダメにするのはすごく簡単ですが、お客様にストレスなくやれる方向をできる限り考えました。その結果、ブースの数を減らして、配置も距離を取って、食べる場所はお客様の座席だけになりました。ただ、アルコールはどうしても気持ちがたかぶってしまいます。バスケは試合展開も早くて感情が入りやすいのが魅力で、アルコールの良いところと合いやすいのですが、そこでアルコールが入って声が出てしまい、そのことで嫌な思いをするお客様もいらっしゃると思うので、そこは規制をかけさせてもらいました」

特にA東京はB1で最初にホームゲームを開催しており、無事に試合を終えた時にはホッとしたことだろう。ところが、手塚の答えは違った。「Bリーグのガイドラインに従ってクラブとしては運営していくのですが、注目度も高い中で私たちがやっている対策がBリーグの対策とイコールに見られる部分があって、プレッシャーも不安もありました。でも、試合が終わっても達成感というよりは、終わってからも気が抜けなかったです。来場者から体調を崩される方が出ないか、数日間ずっと気にしていました。普段のホームゲームでも同じですが、特に今はコロナの状況もあって私たちも手探りな部分もあるため、検温や入場のやり方などもっとスムーズにするにはどうしたら良いかなどを考え、日々改善をしています」  

ちなみに開幕節の2試合を終えた後、ブースに並ぶ待機列が伸びて通路にかかり『密』になりそうな状況があったため、21日の宇都宮戦からブースの位置を変えた。また入場前に敷地外で並ぶファンの列ができたため、検温エリアのオープンを開場から前倒したり、また消毒液を置く場所もファンの動線に合わせて変更したりと、状況を見ながら変化させている。

コロナ対策に絶対はないが、だからこそできる限りリスクを抑える対策を講じた上でBリーグの試合は行われている。開幕から1カ月は順調なスタートとなったが、これから気温が下がれば風邪をひく機会も増えるので油断はできない。

手塚はこう語る。「お客様に試合や雰囲気を楽しんでもらえるように、今節よりも次の節がもっとしっかりできるようにお客様と真摯に向き合い改善を重ね、また来たいと思っていただけるような会場や雰囲気を作っていくことが運営側の楽しさでもあります。バスケは映像を通して見ていただくのも良いですが、やっぱり試合を生で見て会場の雰囲気を感じてもらいたい思いが一番にあります。コロナの状況下、特に今シーズンは安心して楽しんもらえる会場作りに力を入れています。是非、安心して会場に足を運んいただきたいと思います」