内海知秀

前半は互角も、第3クォーターに突き放されシーズン初黒星

10月10日、Wリーグは開幕6連勝同士のENEOSサンフラワーズと日立ハイテククーガーズが激突した。前半は日立ハイテクが『女王』ENEOSを相手に粘りのディフェンスで一歩も譲らずに38-38の同点で終える激闘となる。

しかし、第3クォーターにENEOSが本領を発揮した。この試合、20得点21リバウンド8アシストとあと少しで20-20-10のトリプル・ダブルの偉業達成だった渡嘉敷来夢が攻守に活躍。さらに先週の試合を欠場し、前半はベンチで過ごしていた宮澤夕貴を後半早々に投入。万全のコンディションではない中でも日本代表の中心選手である宮澤がさすがの存在感を見せることで、ENEOSは守備の強度が一気に上がる。これにより持ち味の堅守速攻を取り戻し、第3クォーターを33-13と圧倒したENEOSが最終的には87-64と東地区の頂上決戦に快勝した。

日立ハイテクの内海知秀ヘッドコーチにとってENEOSは、2001年から12年にかけて指揮を執り数々の栄光をもたらした古巣となる。また、2016年のリオ五輪で日本代表の指揮官を務めた後は女子の現場から離れ、ここ数年はBリーグのレバンガ北海道の指揮官など男子を指導していた。

それが今シーズンから日立ハイテクのヘッドコーチに就任すると、昨シーズンはリーグ中断時点で3勝13敗だったチームを、開幕6連勝と一変させていた。それだけに『女王』ENEOSの礎を築いた内海率いる日立ハイテクが、どんな戦いを見せるのか注目を集めていた。

「対戦する機会が来るとはあまり考えていなかったです。そういう意味ではENEOSとこういう形で試合ができるのは非常に幸せだと思います」

こう古巣対決の思いを明かした内海は、「前半はENEOSによくついていきましたが、第3クォーターの出だしでENEOSさんの力が相当に上だったと思います」と敗因を挙げる

第3クォーターで離れた理由に「一つのポイントとして渡嘉敷を抑えることができませんでした。また、宮澤も先週は欠場とコンディションが良くない中、出てくるとすぐに3ポイントシュートを決めました」と、日本代表の中心コンビに仕事をさせてしまったことが響いたと振り返った。

岡本彩也花

岡本彩也花「ENEOSのバスケに似ている部分はある」

一方、かつての教え子である渡嘉敷は、「すごく楽しかったです。相手は移籍していた選手も多く、去年とは全然違うプレースタイルでした。ちょっと懐かしい感じもしなくはなかったです。ただ、内海さんには試合前に絶対に勝ちますと笑顔で言いました」と試合後の会見で明かす。

また、渡嘉敷の同期である岡本彩也花も「プレッシャーが他のチームより強い。スクリーンをしっかりかける。ディフェンスをしっかりやって走るところと、ENEOSのバスケに似ている部分はあると思いました」と、内海の作るチームだからこその共通点を感じていた様子だ。

まずは女王が貫禄を示した首位決戦の初戦だが、2戦目は本日の14時半から行われる。内海は「前半まではなんとかゲームができたので、明日は第3クォーターまでゲームができるように頑張りたい」と、謙遜しつつもこのままでは終われないとの意欲を示す。

ただ、ENEOSも今日の勝ちで満足することはなく、渡嘉敷は「前半はディフェンスが良い時、悪い時の差が激しかったです。明日はしっかりと出だしから点差が開くゲームにできればと思います」とさらに内容でも圧倒する勝利を目指す。

今日の第2戦、どちらが前日よりステップアップできるかは、今後のリーグの行方にも少なくない影響を与えるはずだ。