ゴラン・ドラギッチ

「ベンチに座って試合を眺めているのは簡単ではない」

ヒートとレイカーズのNBAファイナルは第3戦を終えてレイカーズが2勝1敗とリード。レイカーズの完勝となった初戦でヒートの主力にケガ人が出て、第2戦もレイカーズが勝利。レブロン・ジェームズとアンソニー・デイビスが絶好調のレイカーズに流れは完全に傾いていたが、第3戦はヒートが奮起。チーム全員でタフに戦った上で、ジミー・バトラーの40得点超えのトリプル・ダブルがありヒートが一矢を報いた。

ただ、この会心の勝利を複雑な気持ちで眺めていたのがゴラン・ドラギッチだ。バム・アデバヨとともに2試合を欠場中。アデバヨは回復しつつあるが、ドラギッチのケガは左足底筋膜断裂と診断された。基本的には動かさずに治癒を待つべきケガで、完治までには何週間も要するものだ。ヒートはシリーズ中の復帰を完全には否定していないが、「復帰の目処は立っていない」とドラギッチは明かす。

彼には低迷期にあったヒートを支えてきた歴史があり、それだけにこのNBAファイナルに懸ける思いは選手の誰よりも強い。パット・ライリー球団社長とヘッドコーチのエリック・スポールストラ、そしてドラギッチがこの長い戦いの生き証人なのだ。

「ベンチに座って試合を眺めているのは簡単ではない。仲間はよく戦ってくれているし、僕もコートに立ちたいと思っている。ただ、こればかりは分からない。なぜ今なのかと神様に聞いてみたい。本当にキツいけど、今起こっていることすべてに意味があると考えるようにしている」

ドラギッチの心情を理解しながら、ヘッドコーチのエリック・スポールストラはプレーさせてほしいという彼の訴えを退けている。「誰が出場できるとか、いつ復帰できるかにかかわらず、チームとして役割分担ができなければならない。ロッカールームやハドルの中にいる選手でも、できる範囲で変化を起こすことはできる。チームに良いエネルギーを与え、雰囲気で後押しすることはできるはずだ」

アデバヨはチームにダイナミックな動きとパワーを与えられる。一方でドラギッチはリズムの変化とクレバーな試合運びをもたらす。今のロスターにドラギッチの役割をこなせるポイントガードはおらず、スポールストラの言う「役割分担」は簡単ではない。ドラギッチとしたら短い時間の出場でも、ここ一番でチームのオフェンスが停滞した時に自分が流れを変える働きをしたいのだろう。チームが1勝を挙げてくれたことで、時間の猶予は持てた。ドラギッチは仲間たちの活躍を願いつつ、一刻も早い復帰を目指す。