ザイオン・ウィリアムソン

ジェントリーを解任、ザイオンを生かすチーム作りへ

ペリカンズはシーディングゲームでの躍進を期待されて『バブル』に迎え入れられたが、同格のチームとの対戦が多かったにもかかわらず2勝6敗と負け越し、注目のザイオン・ウイリアムソンも家族の健康問題で『バブル』を離れた影響で3試合にしか出場せず、NBA再開の盛り上がりから外れたままシーズンを終えた。オフに入りチームが最初に下した決断は、5シーズンに渡りヘッドコーチを務めたアルビン・ジェントリーの解任だ。

「若く野心的で前に進もうとしているチームとビジョンを共有できる指導者を見つけなければいけない」とデイビッド・グリフィンGMは語るとともに、後任探しを急ぐつもりはないと明言している。来シーズンの開幕は当初想定されていた12月上旬からは遅れることが明らかになり、2021年上旬となりそうだ。それであれば、ヘッドコーチ選びとチーム編成について考える時間は十分にある。

もっとも、ポイントは限られている。まずMIPを受賞したブランドン・イングラムがザイオンとともにクラブの将来を担う存在であることは間違いなく、マックスかそれに近い条件を提示して契約を延長しなければならない。その一方で、ドリュー・ホリデーとロンゾ・ボールについては検討の余地がある。

チーム3位の19.1得点を記録し、ディフェンスの名手でもあるコンボガードのホリデーは、このチームで一番の高給取りでもある。2021-22シーズンの契約はプレーヤーオプションである彼をこのタイミングで手放せば、次の一手が打ちやすくなる。ロンゾは相変わらず好不調の波が激しいものの、それでもチームがハイテンポのバスケを志向するのであれば、リーグでも有数のポイントガードであるのは間違いない。来シーズンすぐに勝ちに行くならホリデーを、今後数年かけてチームを作るならロンゾを、と考えれば後者を選ぶことになりそうだ。2人とも残す選択肢は? 30勝42敗で西カンファレンス13位、ヘッドコーチを解任したチームがロスターに手を付けないことは考えられない。

ザイオンのコンディションに不安がある以上、彼の負担を軽減させられるセンターの存在が重要になる。今シーズン51試合に出場したデリック・フェイバーズ、控えのジャリル・オカフォーは今夏に契約満了を迎える。ルーキーのジャクソン・ヘイズはこの1年で大きく成長したが、まだメインに据えるには物足りない。彼ら以上にインサイドで戦うことができ、またハイテンポなスタイルにも適応できるセンターの獲得が必要だ。マルク・ガソルにハッサン・ホワイトサイド、ポール・ミルサップ、アーロン・べインズ。経験あるセンターがフリーエージェントになるが、年俸面での折り合いをどうつけるか。あるいはトレードを持ちかけるか。ここはGMの手腕の見せどころだ。

ただ、すべてはザイオンをどう使い、どう生かすかの方針次第だ。運動量とスピードを重視したトランジションバスケットで行くのであれば、巨体ながら走れるザイオンの持ち味は生きるが、ケガのリスクは高まる。ハーフコートバスケットを基本とするならポイントガードはロンゾでなくてもいいかもしれない。これはシーズンオフのザイオンの身体作りを左右する。体重を維持して強さを前面に押し出すのか、身体を絞って走れるようにするのか。

シーディングゲームで結果を出せなかった際も、ザイオンのコンディション管理が批判の的になった。128kgの巨体でありながら俊敏な動きと高いジャンプのできる彼の身体能力はNBAでも突出したレベルにある。だがそれでケガが続くのであれば、もっと体重を軽くしてひざや足首への負担を減らすべきだ、という意見だ。これは彼自身の問題ではなく、チームが指針を示すべきものだ。

来シーズンのペリカンズがどんなバスケットを志向するのか。それはザイオンというタレントをどう使うかと切り離せない。ヘッドコーチ不在の状況でそれを決めるのはグリフィンGMとなる。ザイオンにイングラムとNBAでも屈指の若いタレントを擁するペリカンズだが、『次の一歩』をどう踏み出すかでその後の成長曲線の描き方は大きく変わってくる。

規格外のタレントであるザイオンを擁することはペリカンズの大きなストロングポイント。彼との契約は少なくともまだ3シーズン残っており、長期的なプランの下でチームを強くしていけば良いが、だからこそ『次の一歩』であるこのオフ、そして来シーズンには失敗できない。グリフィンGMはどのようなプランを描くのだろうか。