長野誠史

長野誠史はシーホース三河で2年目の開幕を迎えようとしている。大阪エヴェッサでプロデビューを飾り、昨夏に三河に加入。完成されたチームに入って、新しい環境への順応は簡単ではなかったが、若い彼にとってはすべてが貴重な経験だ。2桁得点を期待できるポテンシャルを持つ日本人ガードはそう多くはない。インサイドに切り込んで仕事のできる長野は、三河の切り込み隊長になれるか。『勝負のシーズン』の開幕を前に、その意気込みを語ってもらった。

「勝負どころで決められる選手になりたい」

──ダバンテ・ガードナー選手も合流して、チーム練習の強度も上がっていると思います。今の調子はどうですか?

オフシーズンに体力作り、身体作りをしっかりやってきたので、今は順調に上がってきています。新型コロナウイルスで自粛の時期はあまり外に出られず、身体も動かせなかったので、自重トレーニングできる器具を通販で買って、家でやっていました。練習場が使えるようになって個人練習もかなりやってきました。基本はインドア派なので、外出できない時期もストレスは別に感じませんでした。大阪時代もたまに外食に行ったり遊びに出掛けたりするだけで、あとは家でゲームなので。今回も全然ネガティブにはならず、逆に身体作りもゲームもレベルアップできるぞ、ってありがたかったですね(笑)。

──三河での1年目となった昨シーズンは、新しい環境でしたがプレータイムを勝ち取りました。14.5分の出場で4.5得点、2.2アシスト。この数字を自分ではどう評価していますか?

プレータイムをもらえて経験を積めたことは良かったと思いますが、勝負どころのミスをしていたので、自己評価は低いですね。振り返ると得点とアシストはもっと欲しかったし、アシスタントコーチから「あまり狙っていなかったよね。もっと自分の色を出していったほうが良いよ」と指摘されました。

ドライブに行けるのに行かなかったり、迷いがあった時期が長かったと今は思います。練習中からピックをもっと呼んだ方が良いとも言われていて、今は練習で意識しています。シュートセレクションをもっと増やしたいですね。ヘッドコーチから言われていたのも「空いたら打っていいよ」なんです。ガードナーとか金丸(晃輔)さんに相手のディフェンスが寄れば、僕が空くことになります。そこで躊躇して打つようでは確率は落ちてしまうので。そういう意味でも「どんどん打っていけ」と言われていました。

──言葉では簡単ですが、あの2人にボールを預ければ得点の可能性は高いわけですから、2人を生かすことを考えつつ自分の色を出していくのは相当難しいですよね。

そうですね。昨シーズンも(熊谷)航と「どうする?」って話しながら結構悩んだ部分でもあります。実際、空いている時に打てば結構良い確率で決めていたと思います。ただ、2人で話していたのは「勝負どころで決められる選手になりたい」ということで。僕たちが決めないと、相手は完全にガードナーや金丸さんに寄せることができますよね。僕たちが思い切って打ち、そして決めることで2人がもうちょっと楽にプレーできると航とは話しながらやっていました。

──スタイルは異なれどポジションは同じで、熊谷選手はプレータイムを争うライバルでもありますよね。

練習中はそうですね。バチバチやり合うライバルという感じでやっています。でも試合になればチームメートなので、お互いに気付いたところは「こうした方が良いよ」みたいな話はいつもしています。年齢は航が1個下なんですけど、いつもタメか1個上と間違えられるんですよね。バスケットって上下関係がないので別にいいんですけど、なんでかなって(笑)。

長野誠史

「バスケになると自然とスイッチが入る」

──今シーズンのポイントガードのポジションには、柏木真介選手の復帰がありました。実績十分のベテランとのチーム内競争になります。

そこもあまり年齢は意識しないですね。柏木さんが来てからずっと、卓さん(川村卓也)を筆頭にイジったりイジられたりです(笑)。柏木さんはベテランで良いプレーを持っていて、今も練習中のゲームでの良かった点とか悪かった点は言ってくれますし、僕から聞きに行くこともあります。そういうところは学びながら、それでもやっぱり柏木さんに勝って試合にも出たいです。

柏木さんは「俺はもう出なくていいよ」と冗談で言っていますが、僕は柏木さんに対抗意識を持っていて、練習中からシュートを決められたら「くそっ!」と思うし、自分が決めたら「よし!」ってなるし、航も含めて3人で今やり合っているのは楽しいです。その中で勝ち取ることができたら僕自身の自信になると思います。

──話しているとマイペースな印象ですが、試合では強気でガンガン仕掛けますよね。バスケになるとバチバチですか?

そうですね。性格的には結構マイペースなんですけど、バスケになると自然とスイッチが入るというか。スポーツだと負けず嫌いですね。小さい頃からリレーで走ったりとか、遊びとかでも負けるのは嫌いでした。今でも多分それは変わらないと思います。プライベートではマイペースなんですけど、内に秘めている。秘めすぎているのかもしれません(笑)。

ただ、自分がどうこうじゃなく、チームが勝てば良いですね。あくまでチームが第一優先。だからプレータイムを勝ち取ることも必要なんですけど、ちょっと変な話かもしれませんが先発にこだわっていないというか。スタートで出たい気持ちもありますけど、セカンドで出て流れを変えられる選手になりたいという気持ちも今は強いので。

──そこにやり甲斐を見いだせているのは、その役割をこなすことがチームにとってプラスになるからですか?

はい。今は流れを変えられる選手があまりいないと感じています。そこで僕が流れを変えることができれば、チームの勝利に繋がると思っています。僕は結構カチャカチャやるプレーヤーだと思うんですよね。カチャカチャって何なのか、どう表現すればいいのか難しいんですけど(笑)、アグレッシブにプレーして流れを変えていきたいんです。スタートの選手って落ち着いたイメージがありませんか? 落ち着いて安定したプレーをすることも必要なんですけど、今はベンチから出てアグレッシブにプレーして、良い流れを持って来る選手になりたいです。

──制限付きではあっても観客ありで開幕を迎えられることになりました。ファンの皆さんにメッセージをお願いします。

昨シーズンの最後はリモートゲームで何試合かやったんですけど、嫌な感じがありました。ファンの皆さんの前でバスケットがしたいと感じながらプレーしたことは忘れていません。制限付きではあってもお客さんが入るとなるとモチベーションになるので、今シーズンも一緒に戦っていけたらと思います。

──「俺の3ポイントシュートを見てくれ!」みたいなものはありますか?

3ポイントシュートは僕より入る人がいるので、言いづらいですもん(笑)。僕よりマイペースな人もいれば、面白い人もいますから。僕としてはドライブからのキックアウトとか、ピックでズラしてのアシストだったり、そういうプレーが増えるので注目してください。