鈴木達也

三遠ネオフェニックスはBリーグ初年度にチャンピオンシップ進出を果たしたものの、それ以降は年々成績を落とし、今シーズンは5勝36敗とリーグ最下位に低迷した。過去3シーズン、正ポイントガードとしてチームを牽引してきた鈴木達也も腰の痛みに悩まされ21試合の出場に終わり、先発も7試合のみと過去ワーストのシーズンとなった。それだけに新シーズンへ懸ける思いは強く、「勝負の年」と覚悟を決める鈴木にその思いを聞いた。

「同じポジションだったらフィジカル負けはほとんどしない」

──新型コロナウイルスの影響で長いオフとなりましたが、その間に何か新しく始めたことはありますか?

英語の勉強を始めました。今までもやろうとは思っていたんですがきっかけがなくやれずじまいだったので、家から出られないことが良いきっかけになりました。オンラインのマンツーマンで毎日2時間くらいやっています。まだ全然しゃべれないですけどね(笑)。

──それは素晴らしいですね。ヘッドコーチも外国の方となり、ちょうど良いタイミングですね。

セルビアの方なので英語がメインです。ちょっとした時にコミュニケーションが取りたくても取れない時ってもどかしいじゃないですか。通訳を通すのではニュアンスの微妙な違いもありますし、くだらないことでも、少しでも喋れるのは違うと思うので。

──なるほど。パーマあてましたよね?

髭も伸びてます(笑)。心境の変化というかブースターの方と直接会えないですし、今は腰のリハビリとウェイトをしてる段階なので、さっぱりしてなくてもいい時期かと思って。どうしたほうがいいですかね? シーズンが始まったら戻すかもしれないです。

──似合ってると思います。これはブースターの皆さんにどっちがいいか決めてもらったほうがいいのでは?

髭がないほうがいいか、パーマは直したほうがいいかって投票ですか(笑)?

──個人的にアリだと思います! ちなみにウェイトトレーニングをしているようですが、腕の筋肉はもともとすごいですよね。高校から始めたと聞きましたが、好きだからやるのか、身長的にパワーが必要だと思って始めたのかどちらでしょう?

高校に入学する前の春休みから試合に出させてもらっていたんですけど、相手の身体がめっちゃ強くて。中3と高校生では身体が全然違っていて、初めて試合をした時にぶっ飛ばされた覚えがあって、そこからウェイトをやらなきゃと思ってやるようになりました。そこから大学の時も続けました。最近はパワーよりも自分の身体をどれだけうまく使えるかのトレーニングにシフトチェンジしています。同じポジションだったらフィジカル負けはほとんどしないですね。

鈴木達也

「フルパワーでできた試合は1試合もなかった」

──早い段階で契約更新のリリースが出ました。三遠でやることを決めていたのですか?

複数年だったというのもありますが、今年は20試合くらいしか出れず、チームに迷惑かけた部分もあったので。

──先ほど、腰のリハビリをしていると言っていましたがその影響でしょうか?

そうですね、今シーズンは腰の痛みと再発の恐怖心と戦いながらプレーしていた感じで、フルパワーでできた試合は1試合もなかったに近いです。オフが長くなったことで、相当多くの時間をリハビリに使えました。新シーズンはベストな状態で出れそうなので楽しみです。

序盤に連敗していた時もベンチで見ていて非常にやるせない気持ちというか、試合に出れない悔しさを感じました。申し訳ないというか、自分がいたらもう少し何かできたのではと思っていました。

──鈴木選手の復帰戦で初勝利を挙げて、開幕からの連敗を16で止めました。結果論かもしれませんが、鈴木選手がいてこその三遠という見え方もできます。

三遠に来てこれで5シーズン目になります。過去3シーズンはチームの主軸のポイントガードとしてやらせてもらっていたので、自分が引っ張っていくんだというそういう意識はありました。自分のパフォーマンスが一切できなくて、チームも苦しいシーズンだっただけに、もう一度挑戦したいという思いがあります。

──三遠はBリーグ初年度にチャンピオンシップに進出しましたが、その後は右肩下がりに成績を落としています。それは他クラブのレベルが上がったのか、三遠に問題があるのか、どのようにとらえていますか?

両方あると思います。初年度は純粋にみんなが絶対に勝てると信じていましたし、コーチやスタッフも含めてそういうメンバーが揃っていたと思います。我慢ができないシーズンが続いていますが、全員が信じ切れていなかったと4年間戦ってきて思います。

ルールが変わるなどいろいろありますが、若い選手も台頭し、外国籍選手もビッグネームが増えて、間違いなくリーグのレベルは上がっていると思います。特にディフェンスのフィジカル面は上がってるかもしれないですね。初年度は全体的にチームディフェンスがそこまで浸透してなかったイメージがあるんですけど、今はどのチームもチームディフェンスでしっかり守っているイメージです。

──三遠は再び強いチームを作る戦いが始まります。チームメートの岡田(慎吾)選手は『良いカルチャー』を築きたいと言っていました。鈴木選手にとって、そのカルチャーはどのようなものですか?

一つの目標に向かって全員が同じ方向を向くことですね。ウチは『全心全力』をモットーに掲げているので、誰かが違う方向を向いてはダメです。例えば、昨シーズンは結果が出なかったので、チャンピオンシップに必ず出ると思えていませんでした。そう思っていないと良いカルチャーは続いていかないし、カルチャーにならないと思っています。

鈴木達也

「プロなので最低限の情熱は持っている」

──なるほど。言葉では簡単なように思えてしまいますが、それができないのは何故でしょうか?

今シーズン大きく崩れてしまった原因の一つに外国籍選手が全員代わったり、ヘッドコーチが代わったことがあると思います。人が代わるとカルチャーの継続は難しくなります。

全員がポジティブで何の弊害もなく、自分のことだけに集中できるのがベストだと思いますが、これだけ人数が集まれば考え方も人それぞれなので、決して簡単なことではないように思います。

──確かに選手間にも温度差はあるかもしれないですもんね。

でもプロなので最低限の情熱は持っているはずです。それにウチはそういった部分も見越して選手を獲得していると信じているので、近い将来、再び上昇できると信じています。

──来シーズンは鈴木選手にとっても再起のシーズンになるかと思います。

そうですね、数字よりもとにかくベストなコンディションで60試合戦いたいです。もしそれが叶うなら、自ずと結果はついてくると思っているので。

ここまで身体を治して強くすることに取り組んできました。昨シーズンは誰も僕のチームだと思っていなかったと思うので、フェニックスは鈴木がいるチームだと思い出してもらえるようなプレーをしたいです。

──では最後にファンの方へメッセージをお願いします。

昨シーズンは皆さんの期待に応えられなかったので今シーズンこそはスタートダッシュをして、僕たちの試合を見て元気になってもらいたいです。チャンピオンシップに出場して、三遠地域にフェニックスというチームがあることを誇れるように『全心全力』で頑張ります。そして、個人としても勝負の年と思っているので、ひっそりと応援をお願いします(笑)。