青木保憲

2018年1月に筑波大から川崎ブレイブサンダースへ特別指定選手として加入した青木保憲が、そのままプロ契約を結んでから2シーズンが経過した。日本代表キャプテンの篠山竜青、リーグベスト5に選ばれた藤井祐眞を擁する川崎で若いポイントガードが出番を得るのは至難の業だ。それでも今シーズンの青木は、決して出番は多くないにせよ故障者続出の緊急事態でコートに送り出されると、ディフェンスからハードにプレーしてリズムを作るスタイルで存在感を発揮。特に決勝まで進出した天皇杯での働きが光った。今オフに契約延長を勝ち取った青木だが、本人の自己採点は「30点」。成長できる環境に身を置いているが、いつまでも若手ではいられないという焦りも彼の中にはある。自身のキャリアをどう高めていくか、『ヤス』が胸中を語ってくれた。

「点数で言うと30点、足りないことだらけ」

──前回にインタビューさせてもらったのは川崎に加入する半年前、教育実習で福岡大学附属大濠に戻って来ていた時でした。その時には「何とかプロになりたい」と話していた青木選手がBリーグ屈指の強豪である川崎の一員となり、今回は契約延長のオファーも勝ち取りました。特別指定の時間も含めてBリーグで過ごした2年半、自己評価はいかがですか?

難しいですけど、点数で言うと30点ぐらいじゃないですか。「足りないことだらけ」が正直なところで、30点は自分が成長できたと思う部分です。一つにはBリーグのバスケットに慣れたことで、特に今シーズンはバスケット選手としての自分のベースが一段階上がった手応えがあって、オフェンスもディフェンスも成長できたと感じられるようになりました。正直、プロになって最初の1年間は足踏みしてしまった感じがあるので、そこも踏まえると30点ですね。

やっぱりすごく感じたのが、1シーズンが長いなって。大学のリーグ戦は約20試合で、それでも長いと思っていたくらいです。今シーズンは40試合で終わりましたけど、それでも同じような生活を続ける中で同じパフォーマンスを出していくための準備、メンタルをどう保つかも、すごく難しいと感じた部分です。

その中で、バスケットに対する学びというのは本当に毎日感じるので、自分にとって良かったとも感じます。一日一日の積み重ね、本当にそれに尽きるという感じで、何か特別な出来事があるわけじゃなく、チーム練習に取り組み、その後に足りない部分をアシスタントコーチに助けてもらいながらワークアウトで積み上げていく繰り返しです。プロになって、結果を求める中で日々のプロセスを意識するようになりました。

──当時は「将来は高校の指導者になりたい」と話していました。プロを経験したことで、プロのコーチとかGMは考えませんか?

それはないですね。プロというより学生の世代に何か還元できる立場になりたくて、そこはブレていないです。ただ、今はまずプロとしてどれだけ結果を残せるかです。バスケットボールの知識を得ることも含めてそんなに簡単じゃないですけど、ここで結果を出していずれ指導の現場に立つことができればと思います。

青木保憲

「毎日の練習であの2人に噛みついて、チャレンジしていく」

──来シーズンはプロ3年目で、青木選手はこのオフに25歳になります。いつまでも若手とは言っていられませんが、同じポイントガードには篠山選手と藤井選手がいて、今シーズンは彼ら2人にアクシデントがあれば辻直人選手もハンドラーができることを証明しました。若いポイントガードが台頭するのは非常に難しいチームでのポジション争いをどう意識していますか?

2人は間違いなく良きライバルです。大変ですけど、僕自身はプレータイムも含めて満足していません。こんなんで満足しちゃいけない、というのはすごく思っています。

──あの2人からポジションを奪ってやる気持ちなのか、チームの勝利のために脇役に徹するのか、どう考えていますか?

両方あります。試合に出るためには3番手ではなく2番手、1番手というモチベーションでやっているんですけど、シーズンが始まると直接的にそういう感情でいるよりは、チームのために自分に何ができるかを意識しつつ、練習ではどうやったら2人に勝てるかを考えます。このチームの一つのテーマが『競争』だったので、毎日の練習であの2人に噛みついて、正直まだまだ歯が立たないんですけど、その中でもチャレンジし続けていくのが大事だし、それをやり続けることが自分が評価していく部分だと思います。

──一言にポイントガードと言ってもそのスタイルは様々です。青木選手はどんなプレーで違いを見せたいですか?

ディフェンスは譲れないポイントです。もちろん2人はすごいんですけど、ヘッドコーチから見た時に「青木を出したらディフェンスが締まる」と思われたいです。どちらかと言えば僕は自分から点を取りに行くタイプではないので、その中でどう試合をコントロールして、自分たちの強みを生かし、相手の弱みを突いていけるか。コントロール型のガードだというビジョンは持っています。

そういった意味ではBリーグだと自分の目指すガード像は(橋本)竜馬さんなのかなと思います。ディフェンスで常にチームにエナジーを与えて、コントロールしつつ3ポイントシュートをポンと決める。攻撃型のガードが増えている中でもそういった方向に行くべきかなと思います。リーダーシップの面でも、鼓舞する側で行きたいです。高校、大学とキャプテンをさせてもらって、自分から声を出して仲間を発奮させるタイプのリーダーシップを取ってきたつもりです。でも、川崎に入ってそういう自分を出し切れていないのがこの2シーズン半なので、殻を破らなきゃいけないですね。

──橋本選手みたいにヒゲを生やして覇気を出すというのは?(笑)

僕、ヒゲが生えないから見た目は真似できないんですよ(笑)。

──真面目な話、自分の持ち味を出し切れずに自己評価が30点でも来シーズンの契約が決まりました。優勝候補のチームが契約延長のオファーを出したということは、評価は決して低くないはずです。どの部分が評価されたのだと思いますか?

『競争』がテーマの中で、3番手の僕はスクリメージの際に若手でチームを組むことが多いのですが、そのチーム内で「相手を倒してやろう」というリーダーシップは取れていたと思います。僕自身、竜青さんや祐眞さんに対する闘争心を出すことはもちろんですけど、そのチーム全体を持ち上げて競争させる流れを作ることはできました。それは評価していただきましたし、その部分で自分自身の成長を感じてもいます。いろいろ難しいことも多いですけど、その取り組みが良かったという自負はあります。

青木保憲

「来シーズンは今まで以上に、とにかくガツガツ行きます」

──北卓也GMや佐藤賢次ヘッドコーチから、来シーズンに向けた課題とかアドバイスといった話はありましたか?

はい、やっぱりメンタル的な課題が僕にはすごくあって、ミスを恐れてしまう、消極的になってしまうことがあります。一度ミスをした後の切り替えが遅く、そこで隙を見せてしまったり。その部分を改善できればもっと成長できると、北さんからも賢次さんからも指摘されました。

やっぱり振り返っても、ビビったところはあります。試合によって置きに行くようなメンタルで入ってしまい、終わってから「俺はこの試合で何を残したんだろう?」と思ってしまうこともありました。今シーズン、自信を持ってコートに入った時は良いプレーができたんですけど、一回落ちてしまうとズルズルとパフォーマンスを戻せない、そういったメンタルの浮き沈みが激しかったです。結局は練習の積み重ねが自信になるので、自分でやっていくしかないです。

──篠山選手や藤井選手を相手に切磋琢磨するのがすごく成長できる環境なのは分かりますが、プレータイムをもらえるチームに移籍して自分の力を試したい、という気持ちもゼロではないと思います。そのあたりで悩むことはありませんでしたか?

正直、そこは今シーズンに悩んだ部分です。もしかしたら必要ないと言われる可能性もありますし、僕としては自分が求められる環境でプレーしたいという気持ちもあります。またプロ選手だから試合に出てナンボだとも思います。それと同時に、竜青さんと祐眞さんがいる中で学べて、さらに優勝しなければいけないチームにいることが良い経験になるのは間違いありません。正直、その正解はやってみないと分からないですよね。

もちろん、他のチームに移籍して挑戦したいという気持ちも僕の中にはありました。でも今回はこのチームが僕のことを必要としてくださったので、それだったら川崎で挑戦したいという気持ちです。天皇杯もあと一歩のところで優勝できず、リーグ戦も勝ち進んで優勝するビジョンがあったのにこんな終わり方になってしまったので、もう一回挑戦します。

──来シーズンの開幕はまだ相当先ですが、すでに挑戦する気持ちはかなり強く持っているようですね。

そうですね、虎視眈々と狙っていきます。自粛生活が続いてバスケができない状況ですけど、身体作りは日々やっているし、いろんな映像を見て勉強したりだとか、今だからこそできることを見付けて、今から差が出るようにやっています。

──それでは最後に、応援してくれるファンの皆さんへメッセージをお願いします。

新型コロナウイルスの影響でシーズンが途中で終わってしまい、中地区優勝のタイトルは取れましたけど、本来の目標だったリーグ優勝や天皇杯優勝という目標は達成できませんでした。ファンの皆さんも悔しいと思いますけど、僕らも本当にやり切れない思いがあったので、来シーズンはその分まで皆さんに優勝を届けたいと思います。僕もブレイブサンダースの一員として、この状況を乗り越えて頑張っていきます。

個人としてはチーム状況とかは言い訳でしかないので、練習で積み上げた自分の形を試合でどれだけ出せるかがテーマになります。来シーズンは今まで以上に、とにかくガツガツ行きます。そこはファンの皆さんも期待していてください!