フィル・ジャクソン

「選手によって成長の速度は違う」

2004年のドラフト全体1位選手からジャーニーマンへと格が下がったドワイト・ハワードだが、2019年のオフにレイカーズと契約後、彼に対する評価は一変した。

エゴを捨ててセカンドユニットでのプレーを受け入れたハワードは、今シーズン62試合(先発出場は2試合のみ)に出場して平均7.5得点、7.4リバウンド、1.2ブロックを記録。また、陽気な性格を生かしてムードメーカーとしての役割も担っている。

昨年ハワードとの契約が発表された後には、レイカーズが賭けに出たという意見も少なくなかった。前回所属した2012-13シーズンと同様に、彼が不協和音になるリスクが高いと見られたからだ。

ハワードとの契約を決めたレイカーズオーナーのジニー・バスは、以前交際していた元レイカーズのヘッドコーチ、フィル・ジャクソンから学んだことが大きかったと、ポッドキャスト番組『Daddy Issues with Joe Buck and Oliver Hudson』で語った。

「誰のことも見限ってはいけない。これは、フィル・ジャクソンから教わったこと。フィルはブルズのヘッドコーチに就任する以前、CBA(2009年に活動を停止した独立リーグ)、それからプエルトリコのチームでもヘッドコーチを経験していた。彼は、『選手によって成長の速度は違う。選手の成長を無理に早めることなどできない』と言っていた。18歳でNBAでプレーする準備を整えている選手もいれば、26歳または27歳になるまでNBAでプレーできる準備が整わない選手もいる。その時の状態だけを見て判断して、選手を見限ることなどできない、とね」

バスは、ジャクソンがこのアプローチを実践した選手の具体例として、2009年と10年の連覇に貢献したシャノン・ブラウンとトレバー・アリーザを挙げた。

「フィルはいつだって、どんな選手であっても長所を見つけて、チームの勝利に貢献できると考えていた。例えば、シャノン・ブラウンとトレバー・アリーザを獲得したトレードは上手くいって、彼らを獲得したフィルは、『チームで力を最大限に生かせる役割がある』と言っていたの。フィルには、その点でとても感謝しているわ」

ハワードは見事にレイカーズで再起を果たし、今ではチームになくてはならない存在になった。『たられば』だが、もしジャクソンの言葉をバスが思い出さなかったら、ハワードのレイカーズ復帰は実現していなかったかもしれない。