ビンス・カーター

当時は批判されるも20年が経った今も後悔なし

卒業式のシーズンを迎えているアメリカでは、新型コロナウイルスの感染拡大によりオンラインで卒業式を行う学校が増えている。

かつて黒人を対象に開設された大学群『歴史的黒人大学』(HBCU)のオンライン卒業式に、2019-20シーズン終了後に現役を引退するビンス・カーターが登場し、祝福メッセージを送った。

カーターは「卒業生の皆さん、君たちはこの世界、コミュニティーの未来のリーダーだ」と激励。NBA選手になってからも学業を積みノースカロライナ大学を卒業した彼は、NBA選手ならではの『究極の選択』に迫られたエピソードを語った。

カーターが卒業式を迎えた2001年、当時所属していたラプターズは球団史上初となるプレーオフ・ファーストラウンドを突破。そして迎えたカンファレンス・セミファイナルで、アレン・アイバーソンを擁するセブンティシクサーズと激突した。

シリーズは一進一退の攻防が続き、運命の『GAME7』にもつれた。プレーオフシリーズの『GAME7』は、NBA選手であれば一度は経験してみたいものだ。カーターはその機会に恵まれたが、偶然にも大学の卒業式と第7戦の日程が重なってしまった。

「僕も昔は皆さんと同じ卒業生の立場だった。卒業できること、学位をもらえることをとても喜ばしく思った。でも、卒業式の時期に僕はプロキャリアで最大の試合を控えていたんだ。そして、それが同じ日に重なってしまった」

考え抜いた末にカーターは日中に卒業式に出席し、夜は敵地での試合に出場することを決断した。移動の疲れもあっただろうが、カーターは48分フル出場して20得点を記録。しかし、決まっていたら決勝点になっていたジャンプシュートを外し、ラプターズは87-88で敗れた。

当時は大一番を前に卒業式に出席したことを批判されたが、約20年が経った今もカーターは後悔していない。むしろ「再び同じ選択をしなければいけない状況になっても、同じことをする」と語った。そして卒業生に向けて次のエールを送った。

「その瞬間を大事にしてほしい。これからもハードワークを続けてもらいたい。小さな目標を設定してもらいたい。それが最終的には大きなゴールに繋がる」