テーブス海

テーブス海はアメリカ大学バスケを切り上げて帰国し、今シーズン途中に特別指定選手として宇都宮ブレックスに入団した。新型コロナウイルスの影響によりシーズンは中止となり、テーブスのプロ1年目は中途半端な終わり方になったが、それでも彼はすっきりした表情で「自信に繋がった」と語る。シーズンが終了し、思いがけず長いオフに入った今を「バスケがやりたくて仕方がない」と過ごすテーブスが、このシーズンを振り返る。

「ハングリーな気持ちになっている」

──自粛期間が続いていますが、現在はどのような生活を送っていますか?

チームで練習ができないので自宅でトレーニングをしたり、外でランニングをしています。トレーニングと言っても上半身をあまり鍛えないようにしているので体幹がメインですね。僕は太りやすくて、筋肉がすごくつきやすいんです。アメリカでかなり筋トレをさせられてパワーはついたんですけど、長いシーズンを戦う時に重すぎると負担がかかってしまうので。自分のプレースタイル的に85kgくらいが一番動けると思っていて、今は86、7kgくらいまで下がりました。

あとは食事に気を付けていて、自炊は苦手なので栄養を考えて定食屋によく行きます。あまり動けていないので炭水化物は減らしています。

──ここまでバスケができない状況は初めてなのでは?

そうですね、アメリカでハリケーンが直撃して避難命令が出た時があったんですけど、その時はチームで移動してノースカロライナ大で練習させてもらえました。バスケットができないのは本当に苦痛ですね。住宅街に住んでいるので迷惑がかかってしまうと思い、ドリブル練習もしていません。体育館が使えるようになったらキャッチアップ(遅れを取り戻す)するしかないですね。

──大好きなバスケができない日々が続いてますが、ストレス解消法は何でしょう?

プレステを買って『NBA2K』とか『Call of Duty』をやっています。でも下手すぎて、負けず嫌いなので逆にストレス溜まっちゃいます(笑)。Netflixもよく見ていますね。

──物心がついてから過去最長のオフとなっていると思いますが、その中で意識していることはありますか?

大学を辞めたので、バスケ以外に勉強が必要だと思い、日本に帰ってきてからは投資とかお金の勉強をしています。プロになってお金をもらったので、アメリカの大学にまた行くことはできても、プレーすることはもうできません。特別指定だからアメリカの大学に戻るんじゃないかって思われることが多いんですけど、その選択肢はもうないです。

考える時間が多くなったことは、逆に良いリセットボタンです。バスケがやりたくて仕方がないというハングリーな気持ちになっているので、言い訳せずやれることをやっていきます。

テーブス海

「俺が来たから勝てたんだ」って言ってやりました(笑)

──Bリーグアワードも終わり、2019-20シーズンが完全に終了しました。『新人ベスト5』とはなりませんでしたが、テーブス選手を推す声も多かったのが事実です。

基準というか、試合数が足りないだろうなとは思っていました。でも、入ってもおかしくないとは自分でも思っていました。

──そういう意味では手応えを得たシーズンになったかと思いますが、一番成長したのはどの部分でしょうか?

アジャストする力です。シーズンの途中にチームに入るって、ユニークな経験じゃないですか。その中で自分の良いところを出しながらチームにフィットできるかというのは難しいです。しかも優勝を狙えて、いろんなパーツが組み合わさるブレックスは特に難しい。完璧にできたとは思わないですけど、短い間でできたと思います。

──アメリカ時代はターンオーバーが課題でした。今シーズンは平均10.2分のプレータイムで1.8アシスト、0.6ターンオーバーでしたがその課題は克服できたと思いますか?

プレータイムがそこまで長くなかったので、0.6は多いかもしれないですけど、僕としては少なかったと思います。でも、短い間しか出場できないのが分かっていたので、ターンオーバーは一切考えていなかったです。その短い間で気にしてしまうと、アグレッシブにできないので。

──なるほど、その中で印象に残っている試合はありますか?

自分は全然出てないですけど、川崎ブレイブサンダースに勝った試合ですね。僕が来てからいきなり3連敗してしまい、ロッカールームで冗談ですけど「海が来てから勝てなくなっちゃった」って言われて(笑)。全体的にチームの流れが悪かったので僕のせいで負けたとは思ってなかったんですけど、めっちゃ悔しいと思って。その後、川崎に勝てたので「俺が来たから勝てたんだ」って言いました。特にライアン(ロシター)がめちゃくちゃ言ってきたのでやり返しました(笑)。

テーブス海

ブレックスファンの皆さんがいれば「モチベーションを保つ必要がない」

──Bリーグを経由して最終的にはNBAに行きたいと公言しています。今シーズンは結果的に充実していたと思いますが、NBAへのステップとしてはどう評価していますか?

この1年目は何が起きるか分からず、不安もありました。新しいチームに入ったことで何かを壊したくはないし、自分のプレーよりも周りの状況を考え、チームが勝ち続けるのが大事だと思っていました。何も分からないままプレーしましたが、間違いなく自信に繋がる12試合でした。

──無観客での試合を経験し、あらためてファンの大切を感じたりしましたか?

ファンの皆さんは最高です。一流の選手というのはレギュラーシーズンもチャンピオンシップも常に高いモチベーションを持っています。一番高い熱さでプレーできるからこそいつも結果を出せると思うんです。ブレックスファンの前でプレーするとモチベーションを保つ必要がないというか、どんな時でも熱くなれるし、やっていて楽しいですし、気持ちが力になりますね。

──では無観客試合になるとパフォーマンスが落ちてしまったのでは?(笑)

多少変わっていたと思います、ブレックスファンの熱さに慣れてしまっていたので(笑)。ブレックスファンの熱い応援のおかげでいつもモチベーションや気持ちの部分で支えてもらっています。なので、無観客で行われた試合はすごく寂しかったです。今シーズンはありがとうございました、今後もあの熱い応援をお願いします!