文=丸山素行 写真=Getty Images

十分なプレータイムが得られない状況も「一つの経験」

WNBAでの3シーズン目を終えた渡嘉敷来夢が昨日、アメリカから帰国した。シアトルストームはプレーオフに進出するも、1回戦でフェニックス・マーキュリーに敗れてシーズン終了。「結果としては去年と一緒なんですけど、内容としては監督が途中で変わったことが一番大きかったです」と渡嘉敷は振り返る。

レギュラーシーズン34試合中33試合に出場するも先発はわずか1試合、プレータイムも過去3シーズンで最も短い12.4分。得点は8.2、5.3、3.2と年々下がっている。ただ、数字は伸び悩んだが、それは求められる役割が変わった結果だ。「最初は外から打つよりも中にダイブして、スピードと高さを囮にしたいと監督から言われていました」と渡嘉敷。これまでのキャリアを通じ、常にエースとしてプレーしていた渡嘉敷が、周囲を生かす役回りに徹した。

「試合に出ていないし、数字的に下がっていると思う方もたくさんいると思いますけど、自分はこれも一つの経験だと思って、これからもやっていきたい」

日本にいればJX-ENEOSでも代表でもエースの座は安泰だが、そもそもアメリカに渡ったのは、最高峰のレベルでまた別の経験がしたかったからだ。それが自身の成長を引き出す最善の方法だと渡嘉敷は信じている。

その中で見いだしたのが周囲を生かすプレーであり、結果的にスタッツとして伸びたのはアシストだ。「日本では自分がスコアラーですけど、シアトルには自分よりもスコアできる選手がいます。シュートに行ける時には行きますが、中に切り込んで寄ってきたらパスというのは、特に後半戦は意識してやっていました。良い選手がたくさんいるので、そういう選手を生かしながら自分も生きればと思っています」

WNBA初挑戦から3年、英語でのコミュニケーションにも慣れ、海外の環境にはすっかり順応した。「海外のほうが過ごしやすかったです」との言葉には、ちょっとした余裕さえ感じられた。

中堅クラスの年齢も「まだ26歳、伸びしろしかない」

シアトルストームとJX-ENEOSサンフラワーズという『二足の草鞋』を履く渡嘉敷。代表活動も含めると、まとまったオフの期間はほとんどなく、オーバーワークの懸念が付きまとう。それでも「身体を作りたいという考えはありますが、『お前が必要だから』とチームに言われたら従いたい」と、自分よりもチームを優先する。「まだ26歳、伸びしろしかない思っているので、これからも頑張っていきたいと思います」と、その向上心はとどまることを知らない。

渡嘉敷が所属するJX-ENEOSサンフラワーズは、昨シーズンに無敗優勝で9連覇を成し遂げ、絶対女王としてリーグに君臨している。だがライバルのトヨタ自動車アンテロープスは『超』が付くほどの大型補強を行い、JX-ENEOSの10連覇を阻止する準備を整えている。

だが、そんなスター軍団となったライバルに対しても、「そんなに気にしないですね」と渡嘉敷は揺るぎない自信をのぞかせる。「ウチも良いメンバーがいるので大丈夫。自分たちのバスケットをやれば勝てると思っています」

「8年目でしたっけ? すごい長いなあ(笑)」とJX-ENEOSでの所属年数がピンと来なくなっていた渡嘉敷。JX-ENEOSで積み上げた実績とWNBAでの経験を融合し、節目となる10連覇を目指す戦いが間もなく始まる。Wリーグの開幕は10月7日だ。

WNBAで活躍した渡嘉敷来夢選手( @TOKASHIKI_10 )のWリーグ選手登録が完了致しました。これにより、渡嘉敷選手はJX-ENEOSサンフラワーズの一員として10/7の開幕戦より出場可能となりました!https://t.co/FFsF7lcAxo #Wリーグ #wjbl pic.twitter.com/SBxHKImk5P

— W LEAGUE(Wリーグ) (@wjbl_official) 2017年9月20日