文=鈴木栄一 写真=鈴木栄一、Getty Images

「いずれは通訳さんなしで取材に応じたい」

7月26日、アルバルク東京が新体制の発表会見を実施した。馬場雄大、安藤誓哉、小島元基の日本人選手と一緒に、新加入選手として登場した唯一の外国籍選手が、4月までアメリカの名門カンザス大でプレーしていたランデン・ルーカスだった。

アメリカ人のルーカスではあるが、日本とのつながりは非常に深い。父リチャードが1990年代にジャパンエナジーでプレーしていたことから日本で幼少期を過ごすと、アメリカに帰国した後も日本人学校に通って日本語を学んだ。小学校6年の時には福井で地元の公立小学校に通い、石崎巧(琉球ゴールデンキングス)も在籍した啓蒙ミニバスケットボールでもプレーしている。ちなみにカンザス大バスケットボール部の公式HPでの彼の紹介ページには、「日本語を流暢に話す」と記載されていたほど。

このようなバックボーンの持ち主であることから、今回の会見において彼の日本語力には注目が集まった。しかし、さすがにここ10年ほど日本語から離れた生活を送っていたことから、いきなり日本語でインタビューの受け答えをするのは無理だった模様。だが、「日本語を思い出すのを少し待ってください。いずれは通訳さんなしで取材に応じたい」と、日本語での受け答えに意欲を見せた。

実際、会見時には「日本語、少し覚えています。小さな時、上手でした。でもたくさん忘れました」と日本語で話しており、数カ月後には通訳なしでの受け答えが実現する可能性は十分に期待できる。

また、前回の日本滞在時に好きだった食べ物については、そば、ラーメンと麺類を挙げ、カンザス大学時代も日本食をたまには食べていて、これからの生活で新しい食べ物にトライすることを楽しみにしていると続けている。そして、エンターテイメントについては『となりのトトロ』がお気に入りだったと教えてくれた。

泥臭いプレーで這い上がってきた叩き上げのキャリア

いちプレーヤーとしてのルーカスの特徴を挙げるなら、本人が「リバウンド、ディフェンスが自分の持ち味。スタッツに出ないダーティーワーク、地道な仕事をカンザスでもずっとこなしてきた。こういうところでもアルバルク東京の勝利に貢献していきたい」と語るように、ゴール下を主戦場とし地味な泥臭い仕事をしっかりこなしていくチームプレーヤーでありハードワーカーであることだ。

カンザス大学時代の彼は、毎年のようにNBA選手を輩出しているタレント集団にあって、下級生の頃はなかなか出場機会に恵まれなかった。しかし、学年が上がるごとに存在感を高め、大学最終学年となった4年生の昨シーズンは不動の先発を務めた。文字通り、泥臭いプレーで這い上がってきた叩き上げのキャリアだ。

この彼の成長ぶりは、大学1年の時の1試合平均の出場時間が約5分、そこから2年次は約15分、3年次は約18分。それが昨シーズンは約26分と伸び、1試合平均8得点、チームトップの8.3リバウントと数字が端的に示している。

昨シーズンのカンザス大は、全米大学選手権ではベスト8で敗退したものの、レギュラーシーズン終盤には全米ランキング1位に輝いており、大学選手権の開幕時には優勝候補の最右翼に挙げる声も少なくなかった。そして、今年のNBAドラフト全体4位指名のジョシュ・ジャクソン、全体34位指名のフランク・メイソンIIIを輩出している。彼ら主役たちのプレーを縁の下の力持ちとした支えたルーカスの貢献は、スタッツ以上のプラス効果をチームにもたらしていたと言っていい。

A東京のタレントを最大限に引き出す働きに期待

Bリーグについてルーカスは「YouTubeでハイライト映像などを見ていました。会場の雰囲気やファンの盛り上がりが素晴らしく、プレーできるのを楽しみにしています」と語る。2020年東京五輪への意欲を示している彼だが、日本国籍取得は非常にデリケートな事柄であり、まずは『助っ人大卒ルーキー』としてどのようなインパクトをリーグにもたらしてくれるのかを楽しみにしたい。

彼が持ち味であるクイックネスとパワーを生かし、ゴール下で昨季のカンザス大時代と同じ働きを披露できた時こそ、アルバルク東京の誇るタレントが最大限にその力を発揮できるはず。ゴール下での攻守にわたる豪快なプレー。そして愛嬌たっぷりの笑顔と日本語でのヒーローインタビュー……。コート内外で注目すべき選手がまた一人、Bリーグにやって来た。