リオ五輪の主力に支えられた『次世代』が未来を切り開いて急成長する日本代表、アジア3連覇まであと1勝と迫った『今』

2017/07/29
日本代表
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文=小永吉陽子 写真=FIBA.com、小永吉陽子

試行錯誤しながらも底上げの大会、ここまでは大成功

大一番となった準決勝の中国戦を74-71で制し、トム・ホーバスヘッドコーチは開口一番こう語った。「もう最高! 我慢、我慢のゲームだった。しつこいバスケをやりました。日本らしくバンバン走るゲームができた」

中国は今大会最も警戒していた相手だった。2年前より選手層が厚くなり、点差がついてもディフェンスで最後まで手を抜かない姿勢に「2年前のアジア選手権決勝で日本が35点差(85-50)を付けたことが、中国の強化に火をつけさせてしまった」とホーバスHCが言っていたほど。選手層の厚さと高さでは、オーストラリアと中国が大会を凌駕していた。

日本が両国より誇れるものは、しつこいバスケをするための『脚』だ。序盤から日本と中国の両者がメンバーチェンジを繰り返す消耗戦の末に迎えた第4クォーター、9点ビハインドを負ってからのラスト5分間の追い上げは圧巻だった。第3クォーターまでは11本負けていたリバウンドに果敢に飛び込み、ルーズボールを奪う『脚』で勝負。

中国が徐々に体力を奪われて攻めが雑になっていく中で、日本は藤岡麻菜美のスピードある組み立てから長岡萌映子の走りと宮澤夕貴の3ポイント、髙田真希のゴール下での合わせ、町田瑠唯のルーズボールで最後まで粘り、逆転勝利を飾ったのだ。

『キャリア組』には「頑張ってほしい、信じている」

準々決勝までの日本は個々の活躍はあるものの、チーム全員が機能した動きは見せられなかった。そもそも『これで攻める』といったチームの『軸』が見えてこなかったのは、渡嘉敷来夢の不在に加え、リオ五輪から5名が変わった布陣では仕方ないことだった。そんな中で気がかりだったのは、現チームを支えてきた吉田亜沙美、大﨑佑圭、髙田真希らキャリア組にやや元気が見られないことだった。

彼女たち3人のパフォーマンスは特別悪くはなかった。ただ、これまでのオリンピック予選やオリンピックを戦った2年間を思えば明らかに輝きが違う。吉田と髙田はなかなか沸いてこないモチベーションへの葛藤が見え、大崎は渡嘉敷不在の中でインサイドを背負う気負いが感じられた。だからなのか、日本の出足はいつも重たかった。

もっとも、吉田と髙田は負傷の影響もあった。吉田は日本にいた時から左膝に痛みを抱え、試合中もベンチでマッサージが必要なほどだった。髙田は足に肉離れを起こして復帰したのは大会直前。もちろん3選手は強い責任感ゆえ、コートに立てば仕事をする。この3カ月間の合宿でも手を抜いたことなど一度もない。だからホーバスHCも心身のコンディションが上がってくるのを待つしかなく「頑張ってほしい、信じている」と言うしかなかった。

藤岡、長岡、宮澤世代の躍動とスタメンを変える決断

大会が進む中で日本は、チームが完成しなくとも、地力があることだけはしっかりと見せつけていた。韓国戦では2ガード仕様で速い展開に持ち込んで力の差を見せつけ、オーストラリア戦では若手中心の布陣で終盤に競ることはできた。チャイニーズ・タイペイ戦では苦戦しながらも第4クォーターに突き放す底力を見せた。

そんな中で台頭したのが次世代を背負う長岡萌映子、宮澤夕貴、藤岡麻菜美という今年24歳になる同期3人組だ。藤岡が韓国戦で大会のキーマンへと浮上する躍動感を見せると、オーストラリア戦では宮澤がゴールアタックの姿勢を見せて猛追する流れを作り、中国戦では長岡が後半にエンジン全開で走り続けた。

彼女たちの台頭がチーム力の底上げになったのは間違いない。しかし予選ラウンドは乗り切れても、中国やオーストラリアを相手にするには経験を含めた総戦力が必要だった。「今までのような出足の悪さでは中国には勝てない」と試合前に語っていたホーバスHCの頭の中では『変化が必要』との答えは出ていたのかもしれない。

日本は中国戦でスタメンを変更した。膝に痛みを抱えていた吉田に代えて今大会絶好調の藤岡を司令塔に据え、マークされていたシューターの近藤に代わっては速さを出すために水島を抜擢。長岡や宮澤の攻め気はそのままに、髙田や大﨑がインサイドで身体を張り、藤岡の縦に切る動きに合わせる指示をした。終盤は宮澤が2番仕様となるビッグラインナップ、町田がルーズボールを追うスモールラインナップなど、状況に応じた選手起用を見せ、我慢としつこさで勝機を見いだしていった。

「オリンピックの勝利とはまた違ったうれしさ。純粋に本当にうれしい」と語ったのは髙田だ。それほど今大会はキャリア組にとっては、目標設定が難しい中で苦しんだ大会だったのだ。そして髙田は、第4クォーターの苦しい場面をともに乗り切った後輩たちにこう言った。「若手が試合で見せる成長は練習とは比べ物にならないですね。アジアの公式戦で得た経験は彼女たちの自信になったと思います」

藤岡という新たな『軸』、日本はどこまで成長するか

このチームはキャプテンで司令塔の吉田を中心に作ってきたチームだ。長岡と宮澤の180cmを超えるフォワード起用など準備してきたこともあったが、予選ラウンドで見せた2ガードや、中国戦で藤岡を司令塔に抜擢したことは、吉田が万全で臨めなかったことにより、ぶっつけ本番で強いられたスタイルである。それでも乗り切ることができたのは、大会のキーマンどころか、救世主となった藤岡が想像を超えるスピードで独り立ちしたからだ。

藤岡自身のゲームの組み立てで言えば、時にボールを持ちすぎて最後は1対1になる場面やイージーミスも多々ある。だがゲームを通して見れば、得意のクロスオーバーからのドライブインは効果的に決まり、縦へ縦へと切っていくスタイルはスピードを求めた日本の流れを作った。大会中盤までなかった日本の『軸』は、もはや藤岡のスピードによって作られていると言っていい。

すでに現段階で、中国、韓国、チャイニーズ・タイペイを下し、実質アジア1位になった日本だが、オーストラリアには中国にはないゲームの駆け引きの巧さがある。一段階上のステージにいるオーストラリアを下してこそ3連覇が実現するとともに、新しく生まれ変わったアジアカップのチャンピオンになれるのだ。

思えば予選ラウンドのオーストラリア戦の終盤、髙田を除いてコートに立っていたのは藤岡、町田、宮澤、長岡ら今後の日本を背負う世代であり、彼女たちの攻め気で猛追したことに、次世代につながる光が見えた試合だった。東京五輪へとつながる『ターニングポイント』になったと言える今大会の成長の結末を、しかと見届けたい。