文=鈴木健一郎 写真=鈴木栄一

独特のリズムでベンチスタートでも観客を魅了

7月23日に開幕するアジアカップに挑む女子日本代表のメンバー12人に、藤岡麻菜美の名前が入った。筑波大在学中から代表候補には常に選ばれていたが、リオ五輪は最後の最後で落選。悔しい思いをしながらも、「目標は2020年」と気持ちを切り替え、『女王』JX-ENEOSサンフラワーズの一員としてWリーグを戦い新人王を受賞。満を持して日本代表として初の公式戦に挑む。

吉田亜沙美が絶対的な地位を築く代表において、町田瑠唯に続く3番手のポイントガードというのが藤岡の立ち位置。それでもコートに立てば物怖じすることなく、持ち前のスキルを駆使して攻めのバスケットを展開する。先週末に行われたオランダ代表との国際強化試合でも、重心が低くスピードがあり、独特のリズムを持つ藤岡は短いプレータイムでも観客に印象を残した。

「代表で観客を前にプレーするのは初めてで、初日はちょっと緊張した部分がありました。こういう経験を少しづつ積んでいくことが大事なので、プラスに考えてやっていきたいと思います」と言う藤岡に話を聞いた。

「ポイントガードとして迷わずプレーできるように」

──今回のアジアカップが代表で初の公式大会となります。チームはアジア3連覇を目指しますが、藤岡選手個人はどういう心境で開幕を迎えますか?

トムさん(トム・ホーバス)もリュウ(吉田)さんも3連覇を「絶対に成し遂げなければならないもの」としてやっています。ただ自分はやっぱりアジアの舞台に立ったこともなく、優勝することの経験も少ないので、3連覇にあまり実感がないと言うか。今回のチームはすごく若くなったので、優勝を知らないメンバーが多いことが一つ課題です。それをこれまで勝ち取ってきたメンバーと同じ気持ち、同じ意気込みでやることがまず大事。試合だけでなく日々の練習で、どれだけその意識を持ってやっれるかが大事だと実感しています。アジアカップまでの短い期間でさらに高めていって、自分より下の選手もいるので引っ張りながら、自分もやっていければと思います。

──リオ五輪を前にした強化合宿の頃は、チームにいること自体に緊張があったと思います。初招集とは言っても、代表でプレーすること自体には随分慣れたのでは?

その頃に比べたら全然違いますね。JXで1年間やった経験もあります。その点で去年よりは思い切り良くできていますが、やっぱり自分らしいプレーが出せていない部分もまだあって、そこは経験なのかなと思います。ポイントガードとして迷わずプレーできるように、そこを詰めていかないといけないので頑張ります。

──ポイントガードの3人、序列を抜きにしてもプレースタイルの違いもありますよね。吉田選手、町田選手と比べて自分の持ち味はどこですか?

ペイントにドライブ、アタックできることです。隙あらば狙っていく、そこでリュウさんや瑠唯さんより積極的に行くべきだと思っています。迷いがあってはできないプレーですが、そこが自分の持ち味なので、どんどん出していきたいです。

「セカンドユニット全体をもっと生かすことを考えて」

──オランダとの2試合、初戦は2得点で第2戦は8得点でした。特に第2戦では4本のフィールドゴールすべて、思い切りの良いリングへのアタックからの得点で手応えがあったと思います。

プレータイムをもらえればできる、という自信はあります。ただ、出るとなかなかうまく行かなくて、そこは経験なのかな。リュウさんや瑠唯さんはオリンピックも含めて場数を踏んでいるので、肝が据わっているというか。私も余裕をもってプレーしたいとは思います。周囲を見て、セカンドユニット全体をもっと生かすことを考えなきゃいけないのですが、そこが足りないと思います。

まだヘッドコーチの信頼も得られていなくて、強い相手になるとプレータイムがなかなかもらえません。今は求められることも少ないです。それでもアジアカップも予選リーグでは格下の相手もいるので、そこでたくさんプレータイムをもらった時に、ペイントドライブからのアシストや得点、ディフェンスで頑張ることを一生懸命全うしたいです。

それでも、リオ五輪の最終メンバーで外れて悔しい思いをしましたが、今こうして12人のメンバーに残ったのは事実なので、自信を持って自分のプレーをしていこうと思います。

──リオ五輪の最終メンバー落選から1年1カ月が過ぎましたが、あの時の自分と今の自分を比べるとどの部分が成長したと思いますか?

えーっと何だろう、いろいろあるので(笑)。それはJXという歴史的なチームにいたこともそうだし、トムさんに1年間みっちり指導してもらったこともそうです。ツーハンドからワンハンドに変えるという新しい挑戦もしました。結果はまだそれほど出ていないかもしれませんが、チャレンジはしてきたつもりです。東京オリンピックまでにWリーグも含めて結果を残していきたいです。「吉田だけじゃない」と思ってもらえるように自分をアピールしたいと思います。

──それでは、最後にアジアカップの抱負をお願いします。

チームの目標である3連覇は絶対です。個人としては、やることが限られている分、そこをしっかり全うしてチームに貢献して、チームの雰囲気を盛り上げるところでも若い分、声を出してやっていきます。