文・写真=小永吉陽子

今大会アジア1位とFIBA世界大会での過去最高位は確定

イタリアに2点差で敗れてベスト8が断たれた時、ヘッドコーチのトーステン・ロイブルはこう言って目標を新たに戦う決意をした。

「下位決定戦に回ってしまったので、ここからはアジアの1位を目指す。次戦の韓国に勝つこと。そしてアジアの1位になることが、若い世代たちの将来につながる。この世代は、これからもずっとここにいる韓国やイランと戦うのです」

その後、韓国に逆転勝利を飾った日本は、続くエジプト戦では延長となる死闘を制した。この結果により、U-19ワールドカップで初となる10位以上を確定させたばかりか、フル代表を含めてもFIBAの国際大会で過去最高順位を上回り、日本の男子バスケットボールの歴史を作った。過去の世界大会では、1967年の世界選手権での11位が最高順位だ。

ホスト国エジプトとの対戦では、サブアリーナが会場となったが、満員の2100人収容の会場は立ち見が出るほどで、ブブゼラや太鼓が鳴り響く『完全アウェー』の中で、オーバータイムの死闘を制した。「世界を驚かそう」をモットーに大会に臨んでいるU-19代表は、目標のベスト8入りこそ逃したが、予選ラウンドでマリに1勝を挙げ、順位決定戦では韓国とエジプトに連勝。世界の舞台ですでに3勝を挙げ、ホスト国に勝利したという意味でも大健闘していると言っていい。

『絶対的な柱』八村塁を擁し、全員が日替わりヒーローに

U-19代表の大健闘は、連日『ただでは負けない』という粘りから生まれている。チームディフェンスではマンツーマンと1-2-2から3-2などのゾーンプレスを併用。カバーリングの範囲が広く、ダブルチームやトリプルチームで相手にフラストレーションを溜めさせるしつこいマークを徹底している。オフェンスではボールをシェアして良いシュートセレクションを作ることにこだわり、速攻を常に狙う。リバウンドではチップアウトをルーズボールにすること、シェーファー・アヴィ幸樹が短い時間でリバウンド職人になっている姿も見逃せない。

U-18のアジアで準優勝を遂げた昨年は、三上侑希、西田優大、増田啓介、杉本天昇といったシューターが軸となるチームだった。それが、今年5月に八村塁が合流した後は『八村のチーム』に変身した。絶対的なシュート力とオールラウンドにこなせる能力があることから、八村主体のチームになることに誰も異論はない。ただ、八村主体と言っても、周囲を生かすのも得意なのは高校時代から立証済み。速攻の場面においても、八村は自らリバウンドを取ってボールをプッシュしてフィニッシュまで持ち込めるのも利点であり、八村一人の加入によって様々なバリエーションが展開されるようになった。

その八村が合流した直後は「みんなが塁を見てしまって、動きが止まることがあった」(三上)と言うが、ここに来て3勝を挙げている理由は、その八村とシューター陣の動きがかみ合っていることが一因でもある。

エジプト戦での八村は、前半は2点のみでジャンパーが全く入らなかった。シュート自体も4本しか打っていない。それを救ったのはキャプテンの三上と増田の外角シュートだ。三上は前半に3ポイント1本とフリースロー3本を全部沈め、増田はジャンプシュートとフリースローを落とさず4本、それぞれ6点決めているが、流れが悪い時に1本もフリースローを落とさない集中力を見せたのは、フリースローを落としまくった予選ラウンドの教訓が生きている。シュートコンディションが悪いながらも、エジプトに5点差で前半を折り返せたことは後半につながる大きな要因となった。

八村自身も「自分のマークがキツくて点が取れなくても、その分、周りが得点できればチームプレーとしてはいいと思う」と口にしている。だが、後半は一転してアグレッシブに展開し、特にディフェンスではエジプトの高さに対して4本のブロックが効いた。

フリースロー、ファウル、ゲームコントロールの修正

こうして日本は連日、八村という絶対的な柱を擁しながらも、日替わりでヒーローを生み出しながら大健闘している。そして、健闘のもう一つの要因は、大会中に出た課題を克服していく修正力にある。予選ラウンドを終えた後、イタリア、韓国、エジプト戦と接戦が続く中で、日本の修正力が生きているのだ。

9位-16位決定戦の韓国戦、逆転を許して11点のビハインドを追った中盤は決して褒められた内容ではない。しかし試合の進め方を見ると、攻めあぐねた時間帯に八村はファウルを誘ってフリースローでつなぎ、12本のフリースローをパーフェクトで決めている。

予選ラウンドではチーム全体でフリースローの確率の悪さに泣かされた。特に打つ機会の多い八村のことでいえば、終盤にスタミナが切れたことが初戦のスペイン戦での8本中3本(チーム全体18本中8本、44%)という確率の悪さに表れていた。また、マリ戦ではファウルトラブルにも陥っている。八村はリバウンドやブロックの打点の高さが持ち味ではあるが、無駄に手を出すジャンプで体力を削られる欠点があった。これらを修正し、終盤までスタミナがキープできるようになったことが、集中力の持続にもつながった。

また先にも述べたように、流れが悪かったエジプト戦の前半は三上と増田の他に榎本の3人計8本のフリースローをパーフェクトに決め、第3クォーターまで12本中11本と確率の高いフリースローをコツコツとつないで得点を稼いだのは大きかった。

ただ終盤、アウェーの大ブーイングの中でフリースローが落ち始めた。フリースローをあと1本決めていれば、延長戦に行くこともなかったという見方もある。しかし、エジプトには開催国の意地があった。そんな敵地で延長戦を制するタフさがついたことを逆に称賛したい。

2つ目の修正は終盤のゲームマネージメント&タイムマネージメントだ。これも勝利を飾ったマリ戦の終盤で慌てて差を縮められた反省をもとに、全員でビデオミーティングを何度も繰り返している。マリ戦の残り3分を何度も検証して、選手が意見を出し合う。これが韓国戦やエジプト戦の終盤に大崩れせずに、きっちりと勝ち切ったことにつながった。

こうした映像分析は、チーム全体でミーティングをすることもあれば、分析スタッフの末広朋也が作成した各個人のプレー集をそれぞれが見て利用してもいる。各個人のプレー集は良い場面と悪い場面のどちらも編集され、八村の無駄なジャンプがなくなったのも、こうした映像分析の成果だ。エジプト戦で繰り出した豪快な4本のブロックショットは、まさにディフェンスを改善し、無駄なジャンプを省いた『研究』の賜物である。

選手たちは試合後、「明日の準備」、「約束事の確認」、「試合後の過ごし方と身体のケア」と口々に言うようになった。世界の強敵を相手に、コート上では全力を尽くしてチームの約束事を遂行し、コート外でも徹底した準備の下に臨む。こうした経験を10代のうちから身につけることは、今後ビッグゲームを戦う上で大きく生きることだろう。

ラストゲームとなる9位決定戦のプエルトリコは13時45分開始(日本時間20時45分)。前日の夜は18時15分にゲームが開始し、21時過ぎに体育館を後にしているだけに、体力的にはかなり厳しい。そんな中でも連日粘りを見せているU-19代表はプエルトリコ戦で大会4勝目を狙い、さらなる歴史作りにチャレンジする。