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アービング不在の隙にウォリアーズが均衡を打ち破る

NBAファイナルはウォリアーズの3勝0敗からキャバリアーズが1つ取り返し、オラクル・アリーナに戻っての第5戦を迎えた。

この試合も互いを知り尽くした両チームの拮抗した展開に。ドレイモンド・グリーンとクレイ・トンプソンの連続3ポイントシュートでウォリアーズが抜け出したかと思えば、レブロン・ジェームズとカイリー・アービングがドライブで堅守を突っ切り得点を挙げて逆転する。

立ち上がり、点差こそ広がらないものの、ウォリアーズにとっては思い通りに行かない展開だった。ハイテンポのバスケットで得点は伸びていたが、得点源であるケビン・デュラントとステフィン・カリーが徹底マークされ、特に3ポイントシュートはほとんど打たせてもらえず。試合のたびにアジャストを重ねてきたキャブズの堅守に苦しみ、本来の形に持ち込むことができなかった。

試合が動いたのは第2クォーターの残り7分あまり。ウォリアーズはアービングが一息入れるためにベンチに下がった隙を突いた。まずは守備で踏ん張って司令塔不在のキャブズの得点を止め、42-43の1点ビハインドから7-0のランで一気に逆転する。

ビッグランではないが、均衡を打ち破るには十分だった。アービング不在の1分半にデュラントとカリーがそれぞれ最初の3ポイントシュートを決めてウォリアーズが波に乗ると、アービングが戻っても勢いは止まらない。そのまま45-61まで突き放し、以後は2桁の点差のまま試合が進む。

フィジカルな当たりが頻出する展開、リバウンド争いで接触のあったトリスタン・トンプソンとデイビッド・ウェストが揉み合いになり、間に入ったJR・スミスを含め3人にテクニカルファウルがコールされる場面もあった。

ウォリアーズの『Strength in numbers』(数の力)が発動

71-60で迎えた後半、JR・スミスの3ポイントシュート、トリスタン・トンプソンのリバウンド、そしてレブロンとアービングのゴールショーでキャブズに追い上げられるも、ウォリアーズは平静さを失わない。また、キャブズのセカンドユニットが全くインパクトを残せなかった一方で、ウォリアーズはアンドレ・イグダーラが攻守を支え、ショーン・リビングストンやパトリック・マコーも短い時間ながら自分の役割を果たした。

セカンドユニットがきっちりつなぐことで、カリーやデュラントは時間は短いが必要なタイミングで休息を取ることができた。ところがキャブズは最初にアービングが休んだ際に試合を一気に持っていかれたため、レブロンとアービングの2人を引っ張らざるを得ない。

第4クォーターの立ち上がり、キャブズは95-98と3点差まで迫るが、ここからアービングとレブロンの得点が止まってしまう。特にカイリーは背中の痛みの影響もあってか、主にマークに付くトンプソンを振り切れなくなり、ドライブからのレイアップがリングに嫌われるようになった。アービングは第4クォーター、まさかの無得点に。そして得点源の2人が沈黙すると、キャブズにはそれをカバーできる他のメンバーがいなかった。

終盤はキャブズの力攻めに対し、ウォリアーズが効率の良いトランジション、特定の得点源に頼らない多彩なオフェンスでリードを保つ。こうして129-120でウォリアーズが勝利。本拠地でNBA優勝を決めた。

健康状態が改善し、ファイナルの途中からチームに復帰したウォリアーズのヘッドコーチ、スティーブ・カーは、「素晴らしい選手たちをうまくチームとしてまとめた」というリポーターの質問に「大した才能のない選手ばかりで、ヘッドコーチがすごい仕事をした」と上機嫌のジョークで答えた。

一方、敗れたキャブズの指揮官タロン・ルーは、悔しさを露わにしてこう語っている。「我々は良いチームだったと思う。すべての努力をして、持てる力をすべて注いで戦った。それでも勝てるわけじゃないのがスポーツの厳しさだが、私は選手たちを称えたい」

レブロン・ジェームズは「最終的に目標を達成することができなかったが、プレーオフ史上でも最高のチームが相手だったのは明らかなわけで、失敗のシーズンというわけじゃないと思っている」と静かに敗戦の弁を語った。

こうして長いポストシーズンも終わり、NBAは閉幕。すぐにNBAドラフトがあり、2016-17シーズンのアワードも控えているが、試合の熱狂とはしばらくお別れとなる。