写真=Getty Images

コービーがキャバリアーズのバスケットを解説

絶対絶命の状況に追い詰められながらも、ウォリアーズに一矢報いたキャバリアーズ。6月9日にクイックン・ローンズ・アリーナで行なわれたNBAファイナル第4戦では、ウォリアーズのトランジションをペースでも効率性でも上回り、137-116で快勝。今シリーズ初勝利を挙げた。

まだまだ予断を許さない状況ではあるものの、全く歯が立たなかった第3戦までとは異なり、自分たちのやり方が通用したことこそ、キャブズには一番の収穫だろう。前年王者キャブズのスタイルについて、昨年現役を引退したコービー・ブライアントが、自身が製作に携わったショートフィルム『Cavalier Kingdome』で解説している。

コービーは、キャブズのスタイルを構築している2人のCrowns(王)に着目。一人は『The King』ことレブロン・ジェームズ。そしてもう一人の王は、昨年のファイナル第7戦で決勝3ポイントシュートを決めたカイリー・アービングだ。

コービーによれば、レブロンは『力の王』で、アービングは『狡猾で知的な王』。キャブズが実行するすべてのオフェンスは2人の王から始まる。2人とも個人でフィニッシュする能力を持ちつつ、チームメートをプレーに関与させ、その力を最大限に引き出すことにも秀でている。パスを渡したチームメートがシュートまで行けなければ、ボールは再び2人の王の手に。決定打が出るまでオフェンスが繰り返し実行される、というわけだ。

2人の王は相手のディフェンスを引きつけながらも、針の穴を通すように正確なパスを出せる。そのためチームメートも格段にプレーしやすくなる。これこそ、昨年のファイナルでキャブズがウォリアーズを撃破できた要因だった。

2人の王が適切なプレーを選択し、周囲の選手が試合の流れを引き寄せるシュートを成功させ続けた結果、ファイナル史上初、1勝3敗からの大逆転優勝を果たした。

だが、2017年のファイナルは第1戦から苦戦を強いられ続けた。2人の王が選択するプレーが必ずしも適切でなかったからだ。手詰まりになると無理のあるアイソレーションが増え、レブロンとアービングは自滅。コービーは言う。「キャブズは、2人がプレーの選択を誤れば、ボールが出されるのを待っている残りの選手はリズムに乗れない。優れたシューターだとしても、その状況でリズムをつかむのは簡単ではない」

その結果、2人をサポートするシューター陣も実力を発揮できずに終わった。

レブロンとアービング、『2人の王』が猛威を振った第4戦

しかし、負ければスウィープが決まる第4戦では違った。レブロンとアービングが常に先手を取り、その局面に合うプレーを選択。これに能力の高いシューターたちが呼応し、シリーズを通じて初めてウォリアーズから2桁のリードを奪うことに成功したばかりか、ファイナル史上最多となる1試合24本もの3ポイントシュートを成功させた。

だが、まだ1勝を挙げただけに過ぎない。コービーもフィルム内で語っているが、2人の王によるミスが増えれば、あらゆる方法で点が取れるケビン・デュラントに致命傷を負わせられてしまう。つまり、残り3試合ファイナルを継続させるためには、レブロン&アービングが完璧なプレーを続けることが求められる、というのがコービーの見方だ。

円滑なコミュニケーションによって互いの力を引き出すウォリアーズ、そして良くも悪くも2人の絶対的な存在次第のキャブズ。第5戦でも、対照的な2チームによる『スタイル・ウォーズ』が繰り広げられる。