取材・写真=鈴木栄一

U-19日本代表で異彩を放つ、奔放で技巧的なプレー

先日、沖縄で行われたU-19日本代表とU-19チェコ代表の公開練習試合。NCAAトーナメント帰りの八村塁が注目された一方で、一際異彩を放ったのが榎本新作だ。榎本はピマ・コミュニティ・カレッジに所属する19歳。沖縄で生まれたが、過ごしたのは2歳まで。その後はアメリカで育ち、今回U-19代表に招集されて初めて日本に戻って来た。

この4月にチームに合流、ワールドカップに向けた最終メンバーに残った。

昨年のU-18アジア選手権から続く流れで、西田優大、三上侑希、増田啓介といった選手は長く一緒にプレーしている。その点、榎本はチームに合流したばかりで、ゴンザガ大から合流した八村と同様、ワールドカップ本番までにチームのシステムにどう馴染ませるかが重要なポイントとなる。

1年半前まではずっと日本でプレーしていた八村以上に、榎本をどうフィットさせるかは重要であり、なおかつ難しい。言葉の問題もあるし、日本のバスケットを知らない。そして日本のバスケットの視点で見た場合、ガードとしてはプレースタイルが非常に独特だからだ。

生まれ故郷である沖縄で行われたU-19チェコ戦、榎本は16得点と結果を出した。もっとも、スタッツ以上にそのプレースタイルにはインパクトがあった。

194cm84kgの体格は、日本のガードとしては突出している。さらにはプレースタイルも一目瞭然、「アメリカ育ち」を感じさせる。ウイングスパンを生かしたクロスオーバー、独特のリズムと緩急、「パスでゲームを作る」という日本のガード像とは違う、ドライブ主体の『攻めの魅力』がある。これまでだと、榎本のプレースタイルを説明するのは難しかっただろうが、今は簡単だ。「ディアンテ・ギャレットみたいな選手」の一言で、多くのバスケットボールファンには理解できる。

ワールドカップでのアピールでキャリアアップを目指す

榎本は「ディフェンスで運動能力を生かして、ファストブレイクでできるだけ点を取って、ファウルをもらってフリースローを打ちたい」と抱負を語る。プレースタイルについては「ちょっと違うだけで、ちょっとワイルドに見えるだけでしょう。それ以外は普通にやってるつもりです」と、自分が独特であることにピンと来ていない様子。それでいて「できる限りチームになじんでうまく機能すればなと思ってます」と、課題はしっかり認識している。

チームに加わったばかりだが、そのドライブが大きな武器になるのは明らか。あとはコントロールの部分、特にピック&ロールの起点になるには周囲との連携が欠かせず、ビッグマンとの呼吸を合わせることが求められる(もっとも、彼自身が身長でも体重でもチームで3番目に『ビッグ』なのだが)。

「国を代表してプレーするのはなかなかない機会なので光栄に思っています。ワールドカップで良いプレーをして、可能な限りメダルに近付きたい」と抱負を語る榎本。より高いステージへとキャリアを進めるためにも、ワールドカップでの活躍で周囲にアピールしたいところだ。

彼自身、日本国籍を得たメリットもあり、Bリーグでのプレーへの興味も否定しない。沖縄のメディアからの「沖縄にはキングスがありますが」という問いに、「もちろん、可能性はありますよ」と答えている。

ワールドカップに向けた『秘密兵器』としてのパフォーマンスはもちろん、『ワールドカップ後』の活躍も今から楽しみ。榎本の活躍に注目だ。