文・写真=鈴木栄一

テリーとギブソン、両エースが大一番で真価を発揮

5月7日、琉球ゴールデンキングスがホームで大阪エヴェッサと対戦。勝者が西地区2位となりチャンピオンシップ最後の切符をつかむ大一番を80-72で制した。

前日、最大20点差を追い付いての劇的勝利を挙げ勢いに乗る琉球は、6日の試合で活躍したレイショーン・テリー、渡辺竜之佑を前日のベンチスタートからこの日は先発で起用する。そして第1クォーター、好調をキープするテリーと岸本隆一の2人だけで計19得点を挙げ、26-14と先行した。

だが、第2クォーターに入ると大阪も反撃を開始。特にエクゼビア・ギブソンはゴール下へのアタックでファウルを獲得し、着実に加点していく。満員の観客によるブーイングを受ける中でフリースローを確実に決めた後、もっとブーイングを求めるような太々しい態度を見せるなど勝ち気なプレーで、前半だけで19得点をマーク。ギブソンに牽引された大阪が追い上げ、前半は琉球の41-39と互角の展開となる。

第3クォーターに入ると、両チームともに相手のディフェンスを崩せない膠着状態が続く。だが、琉球はここでアンソニー・マクヘンリー、金城茂之の両ベテランが要所で得点を挙げると、大阪をこのクォーターでわずか10得点に抑え込み、リードを8点と再び広げる。

そして勝負の第4クォーター、大阪は徐々に追い上げ残り約3分、ギブソンの得点で3点差に迫る。だが、琉球は前日に続きテリーが、再びここ一番で躍動する。ここから連続5得点を挙げると、7点リードで迎えた残り約1分半にはゴール下へのアタックでギブソンからファウルを奪い、ファウルアウトに追い込んだ。この試合、30得点を挙げた得点源を失った大阪にここから追い上げる力はなく、琉球がチャンピオンシップ最後の出場チームとなった。

勝負どころで役者が活躍、勝因は「ボールへの執着心」

琉球はテリーが約22分の出場で27得点、そして岸本が18得点5リバウンド5アシストを挙げている。またアンソニー・マクヘンリーが16得点4リバウンド5アシスト4スティール1ブロックと攻守に渡る活躍で勝利に貢献した。

琉球の伊佐勉ヘッドコーチは、「レギュラーシーズン、決して自分たちが望む成績ではなかったですが、一つの目標であるチャンピオンシップ出場を決めてホッとしています」とまずはコメント。

勝因については、「試合が始まる前にボールへの執着心が強い方が勝利に近づくと選手には言いました。そして我々の方が、この部分で上だったのかなと思います」と語る。「第2クォーターで詰められましたが、選手たちは落ち着いていました。そして第3クォーター、点数こそ入りませんでしたが、10点に抑えることができた。我慢した結果、少しずつ引き離せて、最後は一つひとつしっかりやることで自分たちのバスケットにつながりました」

また、シーズン最後の試合で渡辺を今季初めて先発に起用して理由については、岸本の負担軽減とリバウンドにあったと明かす。「岸本のボール運びを軽減させることと、ディフェンスでは(前日に21得点を挙げた)橋本(拓哉)対策に、彼の得意としているリバウンドに期待しました。ファウルトラブルはありましたが、とてもチームに貢献してくれました。ボールをしっかりミスなく運んでくれるだけでも、岸本がシュートを打つことにより集中できる効果がありました」

失意の終戦となった大阪「恩返しできず申し訳ない」

大阪の桶谷大ヘッドコーチは、シーズンを通しての課題が出てしまったゲームと語る。「今日のゲームは僕たちのシーズンの縮図でした。常日頃からこのチームに足りないものは早い段階で仕事をすることで『Do your work early』という言葉をずっと話していました。それがシーズンを通してできず、あと1勝のところでチャンピオンシップを逃してしまった。もっと早い段階で仕事をする。最後ギリギリになって慌てて仕事をするのでは、チャンピオンシップにも行けなかった。それが今日も第1クォーターに出てしまい、一度は追い付きましたが、最終的に序盤で出遅れた不利を埋めきれなかったです」

また、「ブースターさんの声援があり、ドラマのような展開で敗者になってしまった」と前日の20点差を追い付かれての敗戦を踏まえて語り、チャンスがありながら今回の琉球とのアウェーゲーム2連戦の前にチャンピオンシップ出場を確定できなかったことも痛かったと述べるとともに、今シーズンを次のように総括した。

「Bリーグになって自分自身がすごく成長できました。bjにいた時とまた違うバスケットボールがあり、能力、IQが高い旧NBLの選手がいる相手に対していかに戦うかというところはすごく勉強させてもらいました。また、コーチとして、いかにそういう選手たちをうまく率いることができるかが大切です。bjの選手もBリーグになったことで日本代表になれるチャンスが広がり、選手としても良い機会になりました」

「そしてエヴェッサのファンの方々には、期待してもらった分の恩返しができなかったので本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです。ただ、皆さんがチームをずっとサポートしてくれたおかげで最後まで2位争いができ、チームとしてやりきることができました。心から感謝したいです」

「プレーオフを戦っている」緊張感を三河に持ち込む

まだシーズンが続く琉球は、チャンピオンシップでシーホース三河と激突する。レギュラーシーズンの成績が示すように、地力で言えば三河が大きく上回っていることは間違いない。ただ、琉球には「ここ数試合、僕らはプレーオフを戦っているのと同じ状況。実際、プレーオフモードといった感じで試合に臨んできました」と指揮官が語るように、負けたら終わりのプレーオフと同様の緊張感をすでに経験し、乗り越えている。

一方の三河は、この2試合はコンディション調整として主力のプレータイムを大きく制限し、その結果として滋賀レイクスターズに連敗してレギュラーシーズンを終えている。あまりに対照的なこの週末を過ごしたことが、果たしてどんな影響を及ぼすのか。琉球としては、この2連戦で得た勢いを持ち込むことが番狂わせには欠かせない。