文=丸山素行 写真=B.LEAGUE

一進一退の攻防で同点で最終クォーターに突入

レバンガ北海道と千葉ジェッツによる最終戦は最後までもつれる展開となり、レギュラーシーズンの締めくくりにふさわしい試合となった。

序盤は多嶋朝飛がボールをプッシュし、北海道が千葉を上回るトランジションを繰り出した。互いにフィニッシュが決まらずロースコアゲームになるが、終盤に折茂武彦のバスケット・カウント、野口大介の3ポイントシュートが決まり、北海道が第1クォーターを15-10で取った。

その後も集中したディフェンスで千葉の得意な形を作らせず、第2クォーターのオフィシャルタイムアウトまで北海道は26-18とリードを守る。ここまではリーグ2位を誇る千葉の攻撃力を抑える北海道のペースだった。

ところが、転機は意外な形で訪れる。ヒルトン・アームストロングが足を負傷しベンチに下がったことでスピード重視の展開へと切り替えた千葉の攻めに対応できず、ドライブからパスをさばいてオフェンス優位の状況を作られる。石井講祐とタイラー・ストーンの3ポイントシュート、富樫勇樹のバスケット・カウントと反撃を浴び、35-33とリードをほとんど失って前半を終えた。

第3クォーターは守り合いの展開に。石井の3ポイントシュートで千葉が逆転するも、折茂がすぐさま3ポイントシュートをお返しするなど一進一退、49-49と同点で最終クォーターを迎えた。

残り13秒まで同点、試合を決めたのはまたしても富樫

第4クォーターも点差が離れず時間が経過していく。オフィシャルタイムアウトを迎えた時点で60-59と千葉が1点のリード。残り3分22秒、多嶋の3ポイントシュートが決まり64-64と同点に追い付くも、すぐさま富樫に3ポイントシュートを返される。

1ポゼッション差で推移していた展開が崩れたのは、桜井良太のパスがスティールされ、そこからストーンが走って66-71とされた残り1分41秒。それでも残り34秒、リバウンドから走った北海道は4対2の場面を作り出し、折茂が3ポイントシュートのファウルを誘発。このフリースローを3本とも決めて、71-71と再び同点に。ここから富樫が3ポイントシュートで突き放すも、ジャマール・ソープがすぐさま3ポイントシュートを決め返し、北海道が三度追い付いた。

残り13秒、74-74。この大接戦に終止符を打ったのは富樫だった。パーカーを経由して小野龍猛のスクリーンを受けてボールを受けた富樫は、クロスオーバードリブルで多嶋を抜き去りリングへアタック。ダニエル・ミラーとソープを前にして、ボールを高く上げたフローターシュートがリングに吸い込まれた。

残り4秒では北海道に打つ手なし、76-74で千葉がこの接戦を制した。

敗れた北海道だが、有終の美を飾るパフォーマンス

すでにB1残留を決めている北海道だったが、その状況は関係なく、ホームの観客の前で最高の試合を見せるという目的を果たした。北海きたえーるに集まった5659人の観客に、バスケットボールの楽しさをあらためて伝えた。

どれだけ勝ちたかったかは、試合終了とともに座り込んでしばらく立ち上がれなかった多嶋朝飛の素振りからも分かる。多嶋は「今シーズン一度も千葉に勝てていない状況の中、なんとしても勝ちたいと思って最後臨んだ試合でした。出だしもよく粘りながら自分たちらしいゲームができたと思っていたのですが、最終局面で相手にリードを奪われる展開になってしまい、もっともっとコート上で成長しなければいけないなと思いました」と試合を振り返る。

北海道はこれでシーズン終了。球団社長にしてリーグ最年長選手の折茂武彦は、激闘のBリーグ初年度をこう振り返る。「今シーズンBリーグがスタートし、初年度をB1で戦うことができ、当初どういう風になっていくのかと思っていましたが、やはり戦ってみて一部残留は簡単なことではなかったですし、序盤、苦しい時期があった中、チームで乗り越えてここまで来れたことがチームの成長につながったのではないかと思います」

「今日は、これだけ多くのブースターの皆さんが入ってくださったおかげで、自分たちも本当にそれが力となって頑張れたと思います。また来季このステージで戦えることを、自分自身の去就はわかりませんが、チームとしては楽しみにしていますし、ファンの方も楽しみにしてくださっているのではないかと思います」

「来季、また新しいレバンガ北海道を見せることが出来ればと思いますし、残留はしましたが、勝負事なので上を目指していくのが当たり前だと思いますので、さらなる高みを目指していきたいと思っています」

北海道はシーズンを23勝37敗で終えた。緊縮財政の影響で選手層が薄く、シーズン前半はケガ人が続出する中、試合よりも選手のやりくりに苦労する有様だったが、この最終戦で敗れたとはいえ地元ファンの前で誇らしい戦いを見せることができた。残留を果たしたこと以上に、来シーズンにつながるパフォーマンスだったと言えるだろう。

そして千葉は9連勝でシーズンを終えた。チーム一丸、ディフェンスから走るバスケットが完成の域に達しており、富樫はクラッチシューターとして覚醒した感がある。オールジャパンを制した自信もあり、チャンピオンシップでも波乱を起こす存在になりそうだ。