文・写真=鈴木栄一

得意の守備に加えてシューティングも上り調子

5月3日、栃木ブレックスは敵地でのアルバルク東京戦に79-76で競り勝ち、Bリーグの激戦区であった東地区チャンピオンに輝いた。地区王者という勲章に加え、チャンピオンシップ・クォーターファイナルでのホーム開催を確定させたことは、今週末に仙台89ERSと行うレギュラーシーズンのラスト2試合を『調整の場』にしやすくなった側面もある。

そんな栃木に、様々な面で大きく貢献したのが須田侑太郎だ。A東京との試合、須田は第2クォーターでの9得点を含む計14得点に2スティールと、ベンチスタートから攻守でチームに勢いを与えた。

レギュラーシーズンの最後は9日間で5試合という過密日程。また、田臥勇太、ジェフ・ギブスがこの試合を欠場するなどケガ人の影響もあって、栃木は30日の千葉戦ではタイムシェアを導入。ベンチメンバーを勝負の第4クォーターでいつも以上に起用していた。30日の試合は6点差で敗れたが、この時に活躍した一人が12得点を挙げた須田で、特に第4クォーターでは8分以上の出場で7得点と、あと一歩まで追い上げる立役者となった。

これで2試合連続の2桁得点と、ここに来て存在感を高めている須田は、「チャンピオンに向けての通過点ですが、地区優勝できたことはうれしいです。そしてこれから頑張るぞという気持ちです」と心境を語る。

須田は「プレータイムをもらえるようになったきっかけはディフェンス」と本人が言うように、もともと粘り強い守備に定評のある選手。しかし、ここに来てオフェンス面での貢献も目立ってきている。その理由を本人はこう考えている。

「味方が良いスクリーンをかけてくれています。そして練習でのコーチ陣のアドバイスなど良い準備があって試合に臨めている。その成果が出てきていると思います」

ただ、「オフェンスは良い時もあれば悪い時もあるもの。ディフェンスは常に継続してできます。そこはチャンピオンシップでもブレずに、チームとしても徹底していきたい」と語るように、あくまで堅いディフェンスこそが自分に求められている役割という考えだ。

「良い流れの時は、さらに流れを良くしていきたい」

ジェフ・ギブス、渡邉裕規とともに今や栃木のセカンドユニットの中心的存在になってきている須田だが、自身の役割を「やはり途中から出ることが多いので、まずはディフェンスでアグレッシブにプレーして流れを持ってくる。良い流れの時は、さらに流れを良くしていきたい。まずはディフェンス第一で、オフェンスでは今日みたいに調子が良かったらアグレッシブにアタックしていきたい」と語る。

また、30日の千葉戦、そして今回のA東京戦など、勝負どころでの起用が増えていることは、須田にとってさらなるレベルアップの機会となっている。勝負どころでプレーすることは「自信が得られる」という彼は、「自信が付くことで余裕ができて、周りをもっと見られるようになる。そういう経験ができたことは自分にとって大きい」と語る。

栃木といえば、「プライドを持っている」とヘッドコーチのトーマス・ウィスマンが語るように、リーグ屈指の堅守が強さの源となっている。そんなチームの先発シューティングガードを務めるのは、リーグ屈指のエースストッパーとして日本代表にも名を連ねる遠藤祐亮。そして同じポジションに、同じく守備に優れた須田がいることで、遠藤にベンチに下がっている間もバックコートでの高い守備力が維持されていることは見逃せないポイントだ。

「粘りが自分の持ち味です。そして、スカウティングで相手の特徴をとらえて駆け引きをしながらディフェンスをしていきたいと思います」と須田は言う。定評のある堅実なディフェンスに加え、今のオフェンスの調子を維持していくことは栃木にとって、チャンピオンシップに向けての大きな武器になる。

須田の存在こそが、栃木がチャンピオンシップで勝ち抜くための鍵を握る伏兵、Xファクターとなるかもしれない。