文=丸山素行 写真=B.LEAGUE

39分出場、18得点19リバウンドで勝利をもぎ取る

昨日、富山グラウジーズはサンロッカーズ渋谷との第2戦に勝利し、残留プレーオフ回避に望みを繋いだ。シーズンハイの27得点を挙げたドリュー・ヴァイニーの活躍に目が向くのは当然だが、両チーム通じてそれに次ぐ18得点を挙げたサム・ウィラードのパフォーマンスはヴァイニーと同等、もしくはそれ以上に勝利に直結していた。

追い上げムードを作った第2クォーターで、ウィラードは5つのオフェンスリバウンドを奪っている。オフェンスリバウンドの価値はプラスマイナス2点、すなわち4点分の価値がある。前半のうちに富山が挽回できた大きな理由はそこにある。

「昨日のゲーム(第1戦)で4本しかリバウンドが取れず、オフェンスリバウンドが0だった。相手にリバウンドを支配されたことが勝敗を分けた一つの理由になったと思う。今日のゲームはリバウンドにポイントを置かなければいけないと思っていた」と前日の反省からリバウンドに注力したとウィラードは言う。

結果、7つのオフェンスリバウンドを含むシーズンハイの19リバウンドで制空権を支配した。

終盤に逆転負けを喫した第1戦と違い、リードを保って勝ち切ることができた理由をウィラードはこう分析する。「残り5分のところで好きにやらせてしまった第1戦と違い、今日は大事な場面でリバウンド、ディフェンスストップ、そしてオフェンスでスローダウンできたのが大きかった」

それでも、「昨日と比べれば良かったと思うが、ベストとは言えない」と満足はしていない。

セルフコントロールを意識し黙々とプレーする『仕事人』

ダブル・ダブルはもちろん素晴らしいが、もう一つ称賛されるべき数字が出場時間だ。タイムシェアが通例となっている現状で、ウィラードはほぼフル出場となる39分もの間プレーし続けた。特にゴール下を主戦場とするウィラードの消耗度合いは想像に難くない。

それでも「チームの中ではコンディションは良好なほうで、チームを助けられるのであれば長く出場することが自分の仕事だと認識している」と、故障者が続出しているチームの中で、身体を張り続けた。

長時間のプレータイムはスタミナだけでなく、メンタルも激しく疲弊させる。どんなに集中を保とうと心掛けても、冷静な判断ができにくくなる。それでもウィラードは表情を変えず、終始安定したプレーを見せていた。

感情をあまり表に出さず黙々とプレーする彼に対し、「笑顔が少ないのはプレーを楽しめていないからか?」と質問してみた。するとこの取材に立ち会ってくれていた通訳兼任プレーヤーの比留木謙司から「富山の人はみんな知ってるんですけど、サムはそういう人なんです」という言葉が返ってきた。

基本的に『はっちゃけるタイプ』ではないということだが、理由はそれだけではない。

「富山に来た最初の年に『ゲームの中で感情の起伏が多いのではないか』とナッシュ(ヘッドコーチ)に言われ、選手として昂ぶりすぎず、落ちすぎず、コンスタントに感情をコントロールすることを意識している。ゲームの中で表情を変えないというのは、あえてそうして、自分のために取り組んでいることの一つなんだ」と、ウィラードはやや表情を緩めた。

9月にスタートしたBリーグもあと3試合でレギュラーシーズンを終える。富山は残留プレーオフ回避に向け、最後まで厳しい戦いの中にいる。チームのため表情を変えずに仕事を全うするウィラードも、B1残留が決定した際には『心からの笑顔』をコート上で見せてくれるだろう。