文・写真=鈴木栄一

西村と阿部、相手の長所を消す采配がズバリ的中

4月22日、千葉ジェッツがホームで仙台89ERSと対戦。試合開始直後から攻守で圧倒すると最大で51点差を付けるなど96-53と余裕の勝利を収めている。

試合序盤、千葉は富樫勇樹の連続得点などによって開始5分で9-5と主導権を握る。さらにマイケル・パーカーの活躍で突き放し、23-8と2桁のリードで第1クォーターを終える。

第2クォーターに入っても千葉の猛攻は止まらない。西村文男がこのクォーターだけで3ポイントシュートを4本決めると、他の選手たちも次々と得点を重ねていく。逆に仙台は、第1クォーターに続いて千葉の守備を攻略できずにシュートが入らず。その結果、前半終了時点で、57-17と実に40点もの大差が開き、早くも千葉の勝利が決まってしまう一方的な展開となった。

この試合、千葉はベンチ登録メンバー12名のうち11名が得点。また11名がアシストを記録し、チーム全体で計26アシストと、インサイドとアウトサイドの両方でバランスよく得点をマークするオフェンスが光った。

だが、千葉の大野篤史ヘッドコーチは、「ディフェンスをゲームの序盤からタフにできました。相手が遅い展開をここ数試合やっていたので、その展開に惑わされないように、オフェンスのテンポを上げていくことを実践できたのが良かったです」と、まずはディフェンスをしっかりできたことが勝利につながったと語る。

また、クォーターのスコアで34-9と圧倒したことで、実質的に試合を決めた第2クォーターだが、千葉は西村文男、阿部友和と司令塔タイプの選手を同時に起用する布陣を採った。この意図について指揮官は「仙台が、シュートの佐藤選手も170cmくらいと小さい選手を揃って起用してきた時、彼らにガチャガチャされると、自分たちの高さの優位が逆にマイナスになると思いました。そこで阿部を2番に起用して、ディフェンスから流れをつかみにいきました。石井(講祐)が早々に2ファウルになりましたが、2番ポジションで原(修太)と阿部が良い働きをしてくれたと思います」と振り返っている。

「自分たちの完成度をどこまで上げられるかにフォーカス」

千葉は先週、アルバルク東京との上位対決で敵地に乗り込んで価値ある2連勝を上げた。こういう大きな勝利の後、リーグ下位を相手にする時、気をつけていても精神面でどこか緩みが出てしまうことはありがちだ。

しかし、そういったメンタル面の隙が今の千葉にないことを、今日はこれ以上ない形で証明した。これも大野ヘッドコーチが、以下のように語る普段からの高い意識づけがチームに浸透しているからだろう。

「天皇杯で優勝できましたが、チャンピオンシップで優勝できる保証はないです。まだまだ、オフェンスもディフェンスも発展途上であることを信じてやり続けようと言い続けています。相手がどうこうより、自分たちの完成度をどこまで上げられるかにフォーカスしています」

一方、衝撃的な点差で敗れてしまった仙台。間橋健生ヘッドコーチは「今日の試合は気持ち、技術、強さとすべてにおいて千葉さんのプレッシャーに負けてしまったゲームでした。試合前、やはり千葉さんはトランディションが非常に速い。そして3ポイントシュートに関しては打っている本数、決めている本数ともにリーグ1なので、そこをしっかりディフェンスから消していこうと話していました。しかし、いろいろな準備に関する意識のレベル、準備の度合いがすべて足りなかったです」と語る。

そして「これだけやっつけられたので、今まで準備してきたことをある程度は取り除き、頭をクリアにして、もう一度、自分たちがやるべきバスケットを確認して、全力でぶつかりたいと思います」と続けている。

仙台はこのまま明日も大敗を喫してしまっては、出場が濃厚となっている残留プレーオフへも悪影響を及ぼすことになる。その意味でも、明日どこまでカムバックできるかは、シーズンのクライマックスに向けて大きな意味合いを持ってくる踏ん張りどころとなってくるはずだ。