大河正明チェアマンが語るクラブライセンス制度とBリーグの未来(後編)「300万人の300億、これで中国やイランと戦う」

2017/04/26
Bリーグ&国内
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文=鈴木健一郎 写真=野口岳彦

Bリーグの大河正明チェアマンにクラブライセンス制度の話を聞く。各クラブの財務調査のやり方やその目的について聞いた前編に続き、リーグが掲げる『夢のアリーナ』実現に燃える大河チェアマンに、その意欲を語ってもらった。

【前編】
大河正明チェアマンが語るクラブライセンス制度とBリーグの未来
「これはバスケ界全体の信用問題なんです」

「悔しさを糧にB2の要件を揃えたクラブがある」

──続いてはアリーナの状況についてお聞かせください。クラブライセンス制度では、B1で5000人収容、B2で3000人収容のホームアリーナを持つことが基準となります。

今の時点でB1ライセンスを持っているクラブの3分の2ぐらいは現存のアリーナで基準を満たしています。残るクラブについても計画はあって、3年から5年の間に出揃う感じですね。代々木第二体育館が5000人を満たしていないアルバルク東京については、3段構えぐらいで計画があります。今回も、階層分けの時点での約束した計画がしっかり進んでいることを確認した上で、ライセンスを交付しました。これはリーグの判断だけではなく、弁護士や会計士、施設のプロを含む諮問会があって、そこの意見も参考にしています。

──今回、東京エクセレンスがアリーナの不備によりB2ライセンス不交付となりました。

もともとは板橋区が3000人のアリーナ建設を検討するということでB2ライセンスを交付していました。それが去年の秋に「無理になった」と区からクラブに通告があって、その後、クラブは何カ所かの3000人以上のアリーナを持つ自治体をホームタウンにできないかと努力されてきました。我々も気にかけてはいたんですが、自治体の支援文書をもらうレベルには至らなかった。板橋で何年もやっているチームをいきなり違う場所で受け入れろと言われても、相手も困る部分があったのでしょう。

──厳しい決定にはなりましたが、そこは「頑張っているのにかわいそう」というわけにはいかないですね。

それまでと比べて今シーズンはかなり盛り上がっているし、「板橋で何とか打開できないか」という心境だったのでしょう。しかし、我々は全体を見てジャッジメントします。今回はB3の3チーム、福岡、金沢、埼玉がB2ライセンスを取ったわけです。ライジングゼファーフクオカはもともとbjの決勝まで進んだ有力チームですが、涙をのんでB3に行きました。金沢武士団も埼玉ブロンコスも同じで、B3になった悔しさを糧にして、ものすごく頑張ってB2の要件を揃えてきたわけです。

それを考えた場合、エクセレンスに温情でライセンスを交付するわけにはいかない。本当のことを言えば、あれだけ根付いているエクセレンスを何とか残す方法はないものかと、諮問会ともいろんな議論をしました。でも、アリーナに関して何の確証もないものをB2としたら、制度そのものの根幹にかかわりますから。

──アリーナはクラブが独力で作るわけにもいかないので、どのクラブも自治体と良い関係性を築いてほしい、という話ですよね。

そうですね。3月24日に『未来投資会議』があって、豊橋市長が出席されました。豊橋の計画は単なる公設公営ではなくて、民間の活力を最大限に利用したアリーナの絵を描いています。滋賀でも、滋賀銀行の会長が商工会議所の会頭なんですが、その方を中心に経済界が一枚岩になって収益性のあるアリーナを作ろうと動いています。単に滋賀県や大津市がお金を出すという話ではないんです。スタジアムに比べたらアリーナは民間でやりやすい部分もあって、そういう傾向が出てきています。

「見る側の視点に立てば、集客は爆発的に伸びる」

──「Bリーグ」という名称がまだなかった頃、川淵三郎さんが「5000人のアリーナ」とブチ上げた時には、ほとんどのクラブは腰が引けていました。それでも、あの時点で高い目標を掲げたからこそ、あちこちで5000人規模のアリーナ建設計画が進んでいる今の状況になっているんでしょうね。

ものすごく大きいと思います。そういう意味では川淵さんのリーダーシップですね。収容人数だけじゃなく設備の細かいところまで基準を定めて、明確に示しました。行政に理解してもらうにはそれが必要なんです。今の状況から見ると「1万人」と言っておいたほうが良かったのかもしれない(笑)。

でも、大事なのは収容人数ではありません。単に5000人収容の体育館なのか、アリーナとしての機能が備わった5000人の施設なのかでは全然違う。例えば、国体仕様の陸上競技場でサッカーをやるのと、屋根付きのサッカー専用スタジアムでやるのとでは間違いなく違いますよね。その端的な例が広島カープですよ。市民球場も良いところはあったけど、MAZDA Zoom-Zoomスタジアムに変わって、観る方の視線に立った良いスタジアムになった。楽天も同じで、観る側の視点に立ったことで爆発的に集客が伸びています。

──とはいえ、それがリーグ参加の条件となり、ライセンス交付の条件を満たさないのであればカテゴリーから締め出されるというのでは厳しすぎるという声もあります。それぞれのクラブの事情、『身の丈』に合った運営をさせてくれ、という意見についてはどう考えますか。

もともとはBリーグという新しいトップリーグを作るのに、参入条件として最初に打ち出した数字が「1部で5000人、2部で3000人」で、それがライセンス制度のベースになっています。逆に言うと、それを前提にどのクラブも入会したいとおっしゃっているわけですから、とは思いますね。

あの時の『精神』が基準であって、ライセンスよりも理念の話なんです。器の大きさ以上にクラブは大きくなりません。

──単に大きなハコを持つ持たないの話ではなく、アリーナスポーツの文化を日本に根付かせるという理念ですね。

今後5年から10年で、5000人から1万人収容のアリーナが全国に新しく20カ所ぐらいできることを期待しています。それも体育館ではなくて、観る側に立ったアリーナです。照明はすべてLEDで、Wi-Fiは全アリーナに標準装備。吊りビジョンもすべてのアリーナに採用してもらいたいですね。今シーズン、何カ所かで吊りビジョンが新しく入りましたが、アメリカに比べたらまだ小さい。こういうことも言っていかなきゃいけないんです。

設備だけじゃなく、そこに物販や食事も含めて半日ぐらい楽しめるようなコンコースが当たり前にあって、それで初めて『バスケットボールで日本を元気にします』という我々のキャッチフレーズが達成できるのだと思います。アリーナスポーツを盛んにする、そのリーダーとしてBリーグや日本バスケットボール協会があるものだと考えています。

「簡単にできる話ではありませんが、チャレンジしたい」

──Bリーグ1年目で、集客から売り上げから何を取っても「どこまで行ったら成功なのか」というのはすごく見づらいと思います。リーグとしてはどのような目標を立てているのですか?

1年目はどこまで行くのかの予想が立てづらいです。とりあえず集客では、B1は前年比で5割は増やしたい。今の平均入場者数だとだいたい3割。ただ試合数が増えているので、全体では5割増ぐらいまで来ています。

将来的にはB1すべてのクラブが5000人収容のホームアリーナを持っていて、その時には平均で4000~4500の集客は欲しいです。Jリーグも同じなんですが、2部リーグになると1部の3分の1ぐらい。それでB2は平均1500人ですね。年間の試合数が今と一緒であれば、全部合わせると300万人。そこを目標にしたいです。プロ野球には年間2500万人、Jリーグが1000万人ほどの観客数ですので、観戦文化が定着すれば、まだまだ伸びる素地はあると期待しています。

観客数だけではなく、事業規模も大きくする必要があります。最初に審査した時はB1クラブの年間売上の平均が3億円でしたが、これを3倍にしたい。そしてB2を3億円にする。そうするとリーグとしての収入も合わせて300億円規模になります。300万人の300億、これで中国やイランと戦えるような力をつけていく。それが5年ぐらい先の未来図ですね。もちろん、簡単にできる話ではありませんが、チャレンジしたい。

──なるほど。こちらも壮大な数字に見えますが、伸びる余地はあるわけで、目標を高く掲げて突き進むというわけですね。

あとは日本代表です。地上波の生中継となると、Bリーグは開幕戦と今度のファイナルぐらいですが、サッカーの日本代表とか野球のWBCになるとあれだけ盛り上がるわけです。今年の秋からホーム&アウェーのW杯予選が始まるので、ここぞという試合には地上波を入れたいです。代表戦が盛り上がれば、そこで活躍した選手、頑張っていた選手をリーグで見ようとなりますから。代表が盛り上がればBリーグの人気、バスケット全体を大きく後押しするはずです。