スカウティング・レポート『渡邊雄太』(前編)GMやスカウトを歴任した『NBAの目』で渡邊の『現在地』をチェック

2017/04/19
NBA&海外
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構成=鈴木健一郎 写真=安田健示、Getty Images

『NBAの目』が見た渡邊雄太の現在地

現在、大学レベルでは世界トップレベルにある『NCAA1部』でプレーする日本人選手は2人いる。NCAAトーナメント決勝に日本人として初めて出場したゴンザガ大の1年生八村塁と、ジョージ・ワシントン大の大黒柱として結果を残してきた3年生の渡邊雄太だ。

ジョージ・ワシントン大は、渡邊の入学から3シーズン、NCAAトーナメント出場を逃しているものの、A10という東海岸でも有数のタフ・カンファレンスに属する。3年間で十分なプレーイングタイムと実績を残し、来シーズンに大学を卒業する渡邊に対し、「NBAドラフトに指名されるのでは?」という期待が日本のバスケットボール関係者の中にはあるだろう。

では、実際のところアメリカで渡邊はどのような評価を受けているのか。特にNBAスカウト陣の目にどう映っているのかは気になるところ。NBAのスカウティング事情に精通する人物に、ジョージ・ワシントン大の今シーズン最後の5試合をフルゲームで見てもらった。『NBAの目』で見た渡邊のストロングポイントやウィークポイント、そして1年後のNBAドラフトにかかる可能性について話を聞いた。

ドライブから左手で放つジャンプショットは大きな武器

Yutaは206cmの長身にしてはとてもスキルの高いプレイヤーです。左利きであるのが有利なところでしょう。 スピードやクイックネスもあるし、手足も長い。身体能力も高いのは素晴らしい点です。 

Yutaはドライブの上手い選手で、ファーストステップがクイックなのが好印象です。ほとんどの場合、ドライブでは左にドリブルをつくようです。左を抜く時はバスケットまでフィニッシュをしようとすることが多く、逆に右にドリブルをつく場合は、ジャンプショットを放つという傾向が出ています。 

ジャンプショットは彼の有効な武器だと思います。ジャンプが速く、高さも十分にあり、左利きというのはアドバンテージです。 左手でドリブルからのジャンプフックも放つようですね。 

左右どちらの向きに対してもターンアラウンドジャンパーを打てますが、ドリブルをついてからのシュートとなることが多いようです。運動能力の高さによりアクロバティックなフィニッシュができる一方で、フィジカルの欠如により密集地帯でのフィニッシュを苦手としています。現時点でフィジカルなオフェンスを求めるのは難しいようです。

シュート力に関して言えば、3ポイントシュートを楽々打てるレンジを持っており、モーションも素速い。しっかりとしたシュート力を備えていると見ます。シュートフォームも良く、フリースローの成功率も81%と良い数字を残しています。

しかし、調子には若干波があるようで、足の力というより腕の力に頼ったフォームのように見えます。それでもこれは修正できる部分であるかと思います。3ポイントシュートは今シーズン31%でしたが、今よりもずっと素晴らしいシューター、つまり優れたシューターの基準である40%のシューターになれるポテンシャルを秘めていると言えます。

『ゲーム感』も悪くないですね。特筆すべきは、素晴らしいパスのスキルを持った選手だということ。インサイドへのパスが上手く、ビジョンが広いため、カッターもしっかりと見ながらプレーしているのが印象的です。アンセルフィッシュで、チームコンセプトをよく理解してプレーできる賢い選手かと思います。

大学ではカバーできてもNBAではフィジカルが課題に

ウィークポイントを見てみると、最も顕著なのは、89kgという体重の軽さです。身体の強さに欠けているように見受けられるところでしょうか。フィジカルが弱いということは、オフェンスでもディフェンスでもバランスを崩されやすく、身体で押し込まれた時にポジションを保つのに苦労します。

ディフェンスでも問題が出てきます。守備でハードワークができますがインテンシティ(激しさ)やフィジカルのレベルでは平均以下です。大学の試合ではポイントガードについていましたが、ドリブルのコンテインとピックへの対処で苦労しているように見えます。もっとも、これはカレッジの選手に総じて見られる課題です。

手足が長いというアドバンテージをうまく生かし、抜かれたとしても身体の大きさで、大学の試合はカバーしてきました。相手のエースを抑えることも多く、A10カンファレンスでディフェンシブプレイヤーとして賞を受けたのも理解できます。

しかし、NBAになるとガードのクイックネスと身体能力のレベルは格段に上がります。得点力やスキルも相当なものがあります。かといって強烈な身体の強さを持つインサイドの選手についてはミスマッチとなるため、現時点では必然的にガードやスイングマンの選手とマッチアップすることが多くなるでしょう。ただし、クイックネスも非凡でスキルの高いNBAのガードやスイングマンに付いていくのは容易ではありません。

したがって、どのポジションでもミスマッチとなってしまう可能性があり、Yutaをどのポジションの選手にマッチアップさせたらいいのか、コーチが悩むことになるかと思います。

後編では総論として評価をまとめ、2018年のNBAドラフトにかかるかどうかを考察します。