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試合前には涙を流すも、大歓声の後押しを受けコートに立つ

キャリアで初めて東カンファレンスを首位で終えたセルティックスのアイザイア・トーマスは、過去最高のモチベーションでポストシーズンを迎えられるはずだった。しかし、試合前日、思いがけない悲報せが届いた。

4月15日の早朝、トーマスの妹チャイナさんが交通事故を起こし亡くなったのだ。妹の突然の死を突き付けられたトーマスが苦しんでいるのは明らか。試合前、取材に応じたヘッドコーチのブラッド・スティーブンスは、トーマスの心痛を察し、次のように語っている。

「アイザイアには出場する意思がある。だが、痛ましい現実に苦しんでいる。昨夜も、そして今日もチームで話をしたが、もし彼が出場を望まないのであれば、それで構わない」

しかし、周囲の心配をよそにトーマスは出場を決意する。それでも試合前の練習から涙を流し続け、選手紹介の際も『放心状態』そのものだった。

トーマスのシューズには妹の名前『CHYNA』、『R.I.P. Lill SIS.』(愛する妹よ、安らかに)、『I love you』(愛しているよ)の手書きの文字が。本当にプレーできるのか不安ばかりが募る中、トーマスは試合開始後に獲得したフリースロー1本目を外したものの、そこから試合に集中して果敢なアタックを続け、第1クォーターだけで13得点を記録。ホームのTDガーデンに集まったファンも、トーマスがシュートを決めるたびにスタンディング・オベーションでエースの背中を支えた。

試合には惜しくも102-106で敗れたものの、トーマスはゲームハイの33得点を記録。試合後スティーブンスは「彼は信じられない選手。信じられないほど強い人間だ」と語り、トーマスに賛辞を送った。

試合前に涙を流すトーマスの隣で励まし続けたエイブリー・ブラッドリーは「アイザイアの強さが感じられる試合だった。彼は根っからの競技者で、今夜は妹のため、家族のためにプレーしたんだ」と試合後の会見でコメントしている。

NBA全体からもトーマスを称賛する声が多数出ている。今後も対戦が続くブルズのエース、ジミー・バトラーも「乗り越えるのは本当に大変だろう。それでも彼は、今日の試合でどういう選手なのかを示した。コートに出て、チームのために戦う選手だということをね」と語った。

本来なら、選手冥利に尽きる最高の舞台、心躍る瞬間であるはずが、トーマスはあまりにも辛い現実と向き合うことになってしまった。しかし、今日だけでなくこれからも、彼は戦い続けなければならない。

ヘッドコーチのスティーブンスは、トーマスのサポートを約束。もし本人がシアトルに戻ることを決めれば、それをチームとして支持するとも語った。だがバトラーが言うように、トーマスはエースとしての責務を全うしようとしている。鎮魂のためだけではなく、セルティックスを勝利に導くため、彼は第2戦以降もコートに立ち続けるはずだ。