文=鈴木健一郎

3年目のWNBA挑戦は、プレータイムを得るための戦い

日本代表のエース、渡嘉敷来夢がアメリカに向けて出発した。アメリカのトップリーグ、WNBA挑戦はこれで3シーズン目。シアトルストームに合流し、5月13日の開幕に備えることになる。

今日、フライトを前に成田空港で会見に応じた渡嘉敷は「すごく楽しみです。何度行っても楽しみな気持ちは変わらないです」と溌剌とした表情を見せた。

WNBA初挑戦の2015年は全30試合中16試合に先発し、1試合平均20分の出場で、8.2得点、2.6リバウンドのスタッツを残した。ところが昨年はスタメン出場は1試合のみ。1試合平均のプレータイムが13分に短縮されたことで、得点は5.3、リバウンドは2.5へと減少した。

ドラフト1位の大物ルーキー、ブリアーナ・スチュワートが加入したことで割を食った形となったが、それでも「日本ではできない経験ができた。難しさを経験できたことはこれからのバスケット人生にプラスになる」と昨シーズン終了時に語っていた渡嘉敷。その気持ちはWリーグを1シーズン経た今も変わらない。

「試合に出てチームの勝利に貢献することが自分にとっての自信になります。試合に出ることによって、相手とのプレーが何が通用して何が課題なのかが分かるので、まずは試合に出ることです」と、渡嘉敷は3年目の抱負を語った。

5分間で120%、150%の自分のバスケットをやらないと

試合に出るためのポイントは何かと質問すると、「チームメートに遠慮せず、自分を出すことじゃないですか」という答え。過去2シーズンの経験が渡嘉敷にコートネーム通りの『たくましさ』を与えている。

「自分がどれだけできるかはチームメートもスタッフも分かってくれているので、それを40分間じゃなく、ポイントの5分間とかでどれだけ出せるかが重要になります」と渡嘉敷は言う。「日本だと40分間の中で結果を出せばいいんですけど、アメリカでは5分間のプレータイムの中で120%、150%の自分のバスケットをやらないと、出している意味がないという感じで、そこは日本と大きく違うところです。昨シーズンはそれが少しずつアジャストできたので、今シーズンは出だしから使われ方に対してのアジャストはできると思います」

新シーズンにどう起用されるかは分からないが、ベンチスタートが濃厚。それでもまずはポイントとなる短いプレータイムで結果を出すことだ。そうすることで使われ方は変わってくる。「プレータイムは多ければ多いほうがいいので、そうなるようにアピールしていきます」と言う渡嘉敷には、確かな自信がうかがえた。

アメリカでプレーする上で言葉の壁は乗り越えなければいけない課題の一つだが、「1年目と変わっていないかなあ、という感じなんですけど」と笑い飛ばす。「語学よりもプレーで証明することが大事だと思うので」と、ここでも『3年目の余裕』が感じられた。

ホーム開催のWNBAオールスター出場へ後押しを『お願い』

出発前日にもトム・ホーバスと会ったという渡嘉敷。JX-ENEOSのヘッドコーチで、この春から日本代表監督となった指揮官からは、「特に何も……『頑張って来てね、いつも通りね』ぐらいの軽い感じでした」と言う。これも、わざわざ何か念を押す必要がないほどの信頼関係が出来上がっているということだろう。

日本代表については、今は考えないと渡嘉敷は言う。「まずはアメリカでやらないといけない。アメリカで全力でやれば、必然的に日本代表のプラスになると思っています。とりあえずまずはシアトルストームでの3シーズン目を頑張ります」

目標はたくさんあるが、その一つがWNBAオールスター出場だ。7月22日のWNBAオールスターゲームは、シアトルストームの本拠地であるキーアリーナでの開催。出場を狙う渡嘉敷は「他の選手よりもかなり優位な立場なので、皆さんよろしくお願いします」とおどけた。NBAでも同じだが、外国人選手は母国から多くの投票が集まる傾向にある。メディアを通じて「自分をオールスターに出させて」というお願いだ。

渡嘉敷は言う。「WNBAは(日本人選手で)3人目ですけど、オールスターに選ばれれば初めてなので。何かしら初めてを狙いたいというのは3年間ずっと思っています」

日本のエースは、バスケ界の頂点であるアメリカのリーグで一人レベルアップに励む。まとまったオフがほとんど取れない状態が続いているが、今の渡嘉敷には刺激が上回っているようだ。