文=丸山素行 写真=B.LEAGUE

格上が相手でも「チームで戦えばチャンスがある」

Bリーグ第27節、仙台89ERSはアルバルク東京と対戦した。初戦は得意のロースコアゲームに持ち込み、あと一歩のところまで追い詰めながらも敗れ、続く2戦目では相手のプレッシャーに我慢しきれず、A東京の得意なトランジションを許し連敗を喫した。

連敗を喫した後、仙台のキャプテン、志村雄彦は敗戦後に「力負け」という言葉を口にし、冷静に自分たちの置かれている状況と向き合った。「正直なところ、東京さんと僕たちでタレントレベルが全然違うと思うので、それは受け止めなければいけない」

「やるべきことができなかった」と間橋健生ヘッドコーチが言うように、仙台は相手の土俵で戦ってしまった。得点源であるウェンデル・ホワイト、正ポイントガードの石川海斗を欠く状況で我慢ができなかった。

「タレントがいるチームに対し真っ向からぶつかっては勝てない。そういった意味ではコーチが目指している戦術を理解して、しっかり遂行していかないと太刀打ちできない」と志村は言う。

それでも自分たちの『型』を最後まで表現することができれば勝利に近付く。ロースコアゲームに持ち込んで勝利したレバンガ北海道戦や、最後まで追い詰めたA東京との第1戦がそれを証明している。

「チームで戦えばチャンスがある。ブザーが鳴るまで戦えるかどうかが必要になってくる」

志村の覚悟「チームの助けになるのなら何でもする」

チーム最年長そしてリーグ最小の160cmのキャプテンは、誰よりも声を出し、チームに活力を与えている。それはキャプテンとしての責任としての行動ではなく、勝利への飢えからくるものと志村は話す。

「ただ勝ちたいってことです。このチームでずっとやってきたことを証明したい。チームの助けになるのなら何でもしますし、声を出すとかエナジーを与えることがきっかけになるのならそれをやっていきたい」

石川の欠場はチームにとって痛手だが、それが志村の出場時間を伸ばし、パフォーマンスを上げる効果を生み出している。昨日の試合ではシーズンハイの11得点を挙げ、苦しい状況を繋いだ。志村自身も「プレータイムが確約されているわけじゃないので、そういう意味ではやりがいも感じている。こういう時に結果を残すのが自分の仕事だと思っている」と意気込む。

滋賀レイクスターズが琉球ゴールデンキングスに勝利したことによって、仙台はリーグ最下位に転落。この状況でも志村は悲観せず前だけを向く。「残念なことではありますが、すべてが終わるわけではない。このレギュレーションだったら18位でも残留は可能なので、大事なのは今にとらわれないで生き残ることです」

志村が言うように、もし残留プレーオフに回ったとしても、そこで勝ち抜けばB2に落ちることはない。

次節は残留プレーオフを争う秋田ノーザンハピネッツとの対戦が待ち受ける。厳しい状況は続くが、本当の意味で『チーム一丸』になった時、B1残留の扉は自ずと開かれることだろう。大きなハートでチームを鼓舞する、リーグ最小のキャプテンがそのカギを握っている。