文・写真=鈴木栄一

最終クォーター開始早々のギブスのダンクで栃木が走る

4月9日、栃木ブレックスが敵地で千葉ジェッツと対戦。前日の第1戦では自慢の守備が崩れ80-92の完敗を喫した栃木だが、今日は試合スタートから千葉の強力オフェンスを食い止めると、リーグ随一のリバウンド力で優位に立ち、72-64で勝利。雪辱を果たした。

第1クォーターからともに相手ディフェンスを崩すことができず前半はロースコアで推移する。その中でも、前半だけで3ポイントシュートを7本成功と長距離砲を高確率で沈めた千葉が、33-31と僅差ながらリードして試合を折り返した。

後半に入っても両チームとも堅いディフェンスを継続し、50-49の栃木1点リードと全く先が読めないまま第3クォーターが終了。それでも、勝負の第4クォーターに突入すると、栃木は開始早々にジェフ・ギブスがダンク、さらにオフェンスリバウンドからのバスケット・カウントと得意のパワープレーで5連続得点。これで流れを引き寄せた栃木がリードした状態で、時計は進んで行く。

その後、千葉もタイラー・ストーンの3ポイントシュートなどで食い下がるが、栃木は4点リードで迎えた残り1分52秒にギブス、さらに残り1分半にディフェンスリバウンドを取ったギブスが自陣ゴール下から敵陣へと走り込んだノーマークの遠藤祐亮にパス。遠藤がダメ押しのレイアップを沈め、栃木が激闘を制した。

「ただ勝つだけでなく、どう勝っていくかを大事に」

試合後の記者会見、栃木のトーマス・ウィスマンヘッドコーチは、「とてもタフで勝つことが難しい試合でした。千葉はとても能力の高いチーム。昨日は悔しい形での敗戦でしたので、それに対してリベンジをしようと強い気持ちをもって試合に臨み、今日はそれをやりきることができました」と第一声。

そして、勝因として一番にリバウンドの数で上回ったことを挙げている。「ギブスが23得点12リバウンドと素晴らしい活躍を見せ、トータルのリバウンドでも48-30と勝てました。シュートの確率は相手が42%に対し、こちらは36%と低い確率でも勝てたのは、リバウンドのおかげであり、ポゼッションの数でも14上回ることができました。特に千葉のようなサイズがあってオフェンス能力の高いチームには、リバウンドで勝っていくことが大事です」

また、90失点と崩壊した前日から見事に修正したディフェンスについては、戦術面で変えた部分が何点かあると明かすが、それ以上にメンタル面の変化が大きかったと指揮官は振り返る。

「自分たちはディフェンスにプライドをかけています。それを昨日は辱められたと思っています。それに対して、今日はプライドをかけ自分たちのルールに従って、やるべきことをしっかり遂行する。それをしっかりできたのが一番だと思います」

「千葉はインサイドでダンク、外から3ポイントシュートを決めてくるチーム。そういう相手を守るのは難しく、今週末は自分たちのディフェンスが試されました。そして今日の自分たちは、そのチャレンジに応えることができました」

ギブスに次ぐチーム2位の13得点を挙げた古川孝敏は、「うまく自分たちの流れで戦い、失点を抑えた中で勝てました」と総括。ただ、これで安堵ではなく、シーズン終盤でのさらなるレベルアップへ気を引き締めている。「チームには、しっかり戦える力が間違いなくあります。ただ、常にそれを出し続けてないといけない。波のないプレーをしていくことが強さだと思います。(チャンピオンシップに向け)ただ勝つだけでなく、どう勝っていくかを大事にしていきたい」

「リバウンドを制するものがゲームを制す」試合に

一方、惜しくも難敵相手の連勝を逃した千葉の大野篤史ヘッドコーチも、明暗を分けたカギはリバウンドだったと振り返る。「リバウンドでもう少し取らなければいけない。そこは(リーグ随一のリバウンド力である栃木が相手でも)仕方ないとは言えないです。自分たちはリバウンドを取って、攻撃へのテンポをつかむのが持ち味です。今日はリバウンドが取れずそれが消されてしまいました」

また、今日のような得点が伸びないタフな試合こそ、よりディフェンスへの意識を強くしていく必要があると続ける。「(ロースコアの展開になった時)オフェンスで何かを打開しようとするのではない。ディフェンスからリバウンドを取ってテンポをつかめれば、自ずと得点が取れることについて選手全員が共通認識を持たないといけないです」

今日の試合は両チームともタフに戦い、プレーオフを彷彿とさせるような激しい試合となった。そして両者のパフォーマンスに大きな違いがなかったからこそ、最終的には「リバウンドを制するものがゲームを制す」、このバスケの基本を改めて実証する結果となった。