文=鈴木健一郎 写真=野口岳彦

「1点差でも勝てばいいと思っているので、勝ちは勝ち」

先週末の千葉ジェッツは、交流戦で自信と勢いを付けて東地区に戻って来たレバンガ北海道に手こずりながらも連勝し、2位のアルバルク東京とのゲーム差を縮めた。

日曜の第2戦は終始2桁のリードを奪いながらもディフェンスが安定せずに突き放すことができず、すっきりしない勝ち方となった。大野篤史ヘッドコーチは「自分たちのバスケができていない」と連勝にも納得いかない様子。試合後のミーティングで厳しく指摘されたであろう選手からもディフェンス面の課題、特にリバウンドやルーズボールに行く気持ちの強さを出せなかったことを反省する言葉が続いた。

しかし、小野龍猛の発言は少々ニュアンスが違った。「90失点はちょっと取られすぎですが、1点差でも勝てばいいと僕は思っているので、勝ちは勝ちです」。ヘッドコーチの指摘する課題を受け止めながらも、勝者としてのプライドがはっきりと感じられる言葉だった。

課題は「リバウンドです。特にオフェンスリバウンドを2試合を通じてすごくやられた印象です」と小野。「センター陣に頼りすぎてるのが原因。ディフェンスリバウンドに関しては5人全員でいかないとダメなので、そういう部分です。ガードとかフォワードの僕たちが行く意識をもっと持たないとリバウンドは取れません」

攻守に渡り幅広いプレーでチームを支える万能性

ただ、結果として失点はかさんだが、ディフェンスのすべてが悪かったわけではない。当たり出したら止まらない北海道の脅威、西川貴之や折茂武彦はチームディフェンスできっちりと抑えた。小野は同ポジションの西川とマッチアップする機会が多かったが、攻守どちらの場面でもサイズのミスマッチを生かして西川を圧倒した。

西川とのマッチアップを小野はこう振り返る。「身長も高いし、すごく爆発力のある選手なので、僕の仕事は身体で止めること。良い選手に対して自分もしっかり対抗しようとマークしました」

1on1はもちろん、チームディフェンスで抑えられたことも収穫だ。「僕とマイク(マイケル・パーカー)はあまり身長が変わらないので、スイッチだったりの部分で2人でうまく抑えられた印象です」

4番を務めるパーカー(200cm)とタイラー・ストーン(203cm)、そして3番の小野(197cm)。特別大きいわけではないが技術と走力、そしてバスケットIQを備えた3人が攻守に幅をもたらし、どんな展開にも対応できることが、今の千葉にとっては大きな強みとなっている。

「どのチームも、一発勝負になったらウチを怖がる」

2位アルバルク東京との差は3ゲーム、その2ゲーム先には首位の栃木ブレックスがいる。決して小さな差ではないが、小野は「まだ直接対決が残っているので1位を目指しています」と言う。

残りの直接対決は、A東京と2試合、栃木とは4試合。「しっかり1試合ずつ、負けずに戦うことです。チャンピオンシップのマジックは3になったので、まずは進出を決めることを意識しますが、僕たちが目指しているのはそこではなく優勝なので、そこに向けてまたチーム一丸になっていければと思います」

どのチームもそれぞれの思惑を持って臨むシーズン終盤戦、千葉の立ち位置は他のクラブとは少々異なる。ワイルドカード上位の地位を確保し、下を心配することなくチーム力の向上に集中できる立場にある。さらにオールジャパン優勝により、一発勝負のトーナメントに自信を持っている。

その自信について小野に問うと「もちろん自信はあります」との答えが返って来た。「自信がないとダメなので、勝つ気でやっています。他のどのチームも、一発勝負になったらウチを怖がると思います。そこをアドバンテージにできるよう、良い準備をしてチャンピオンシップに臨みたいです」

自分たちのスタイルは確立「完成度を高くすればいい」

東地区3位ではあるが、中地区2位の三遠ネオフェニックス、西地区2位の名古屋ダイヤモンドドルフィンズと比べるとはるかに上回る成績を残している(千葉33勝14敗、三遠26勝21敗、名古屋D23勝24敗)。さらに各地区首位のチームは、すべてオールジャパンで屠った相手だ。

冒頭で紹介したように、大野ヘッドコーチは気を緩めることなく手綱を握っているし、小野キャプテンはその指摘を受け止めつつ、勝利を重ねるごとに自信を確固たるものとしている。

チャンピオンシップへの準備とはどんなものだろうか? 小野は「挙げたらきりがないですけど、完成度を高くすればいいと思っています」と、彼自身が自信を持つ今のチームの方向性を変えることなく、ただ高めればいいとの考えを語った。

「個人としては他の選手も使いながら、うまくさばきながら、というところ。自分で点を取れるところは取って、自分ばかりにならずに他の選手もしっかりと見れればなと思っています」

自信過剰は禁物だが、自分たちの実力に自信を持つことができないのは不幸だ。チームも小野も、チャンピオンシップに向けて視界良好、道ははっきりと見えており、ただ進むだけだ。しかし、攻守ともに絶好調だったオールジャパンの姿を取り戻さなければ、Bリーグ優勝には手が届かない。タイトルを見据えつつ、千葉の戦いは続いていく。