文=大島和人 写真=B.LEAGUE

大阪が誇る『ディフェンスマン』は金丸晃輔と対決

B1のレギュラーシーズンは残り13試合。8チームが出場できるチャンピオンシップの出場枠を巡って、西地区では激しい争いが繰り広げられている。シーホース三河は26日に西地区制覇を決めたが、2位争いは熾烈だ。名古屋ダイヤモンドドルフィンズが23勝24敗で2位。1ゲーム差の22勝25敗で大阪エヴェッサ、京都ハンナリーズ、琉球ゴールデンキングスの3チームが並んでいる。

25日の三河戦は、大阪にとって悔しい展開だった。前半を3点リードで折り返したにもかかわらず、第3クォーターを10-32落とす脆さを露呈。最終的には66-89と大敗してしまった。

そんな展開の中でも存在感を見せていたのは今野翔太だ。今野は守備の凄味で知られる選手だが、この試合でマッチアップしたのは日本人No.1スコアラーの金丸晃輔。金丸は今野とのマッチアップをこう振り返る。

「1回目やった時はミスマッチだったので僕がポストアップして、そこからの得点を結構取りました。それ以来ポストアップに対しては警戒してきて、方向付けしてきたんです。今日はそれにハマってしまってミスが多かった」。今野は182cm、金丸は192cmと身長差があり、ゴールに近づくと対応が難しくなる。そういう中でも今野は、嫌らしく、そして賢く対応していた。

しかし今野はまず第3クォーターの展開を悔いる。「3ポイントシュートを6本決められたんですかね? そういう悪い流れの時こそチームのフォーメーションをしっかり遂行しないといけないのに、決められたからスリーで返そうとか、そういう感じになっていた」。大阪は外から雑に打って、リバウンドをたやすく奪われ、相手の速攻を許すという悪循環に陥り、43-41とリードしていた状況から、三河に18得点のランを許してしまった。

「あと1歩とずっと言い続けている」もどかしい現状

今野はキャプテンとして悪い流れに抗っていた。第3クォーターの残り5分17秒。43-48と点差が開き、さらに大阪のファウルでプレーが止まった瞬間に、彼は味方を集めてハドルを組んだ。「しっかり食らいついて我慢していこうと話したんですけれど、我慢しきれなかったですね」と彼は悔いる。そして「こういうことが起きているからこうしようと、明確に伝えられる人間にならないといけない」と反省を口にする。

とはいえ、大阪は決して見どころのないチームではない。選手のネームバリューや過去の実績を考えれば、よくやっていると言っていい。また彼らの目指すものを40分間やり切れば、三河を相手にしても勝機はあるだろう。

ただ、よくやっているのに結果が出ない、届きそうで届かないというもどかしさを今野は感じている。彼はこう述べる。「40分間やり通せない。そこが弱さですよね。あと1歩とずっと言い続けているんですけれど、早くあと1歩を踏み込んでいかないといけない」

大阪は26日の試合にも敗れ、今季の三河戦は6戦全敗となった。今野は「男として恥ずかしい」と悔しさを言葉にする。しかしそんな不甲斐なさを語る今野の顔に、暗さはなかった。嫌らしい、激しいプレーからは癖のあるキャラクターを想像しがちだが、実際の彼は爽やかで朗らかな『陽性』のリーダーである。

「大都市の大阪がプレーオフに行かへんって寂しい」

三河のような旧NBL、実業団系の強豪との戦いについても、彼は前向きに受け止めている。今野は言う。「これから大阪エヴェッサがやっていく中で、すごく良い経験ができている。しっかり対応もできている。最初は『NBLのチームはうまい』と思って見ていました。でも相手がうまい中でも戦える部分をどんどん見つけて、適応してきたからこうやって戦えている。あとは勝ちがほしいです。川崎には勝ちましたが、三河にも何とか一矢報いたい」

今野は大阪府摂津市出身で高校、大学も府内。プロに入って10年目となるが、2013-14シーズンを除くと大阪エヴェッサでプレーしている。そんな『大阪代表』として彼はこう強調する。「僕はチームのキャプテンとしてやっているし、プレーオフに出たいという意思は誰よりも持っていると思います。Bリーグ1年目に大阪エヴェッサが歴史を残すためにも、プレーオフに出るのは絶対条件。大都市の大阪がプレーオフに行かへんってやっぱり寂しい。僕も大阪でずっと育った人間なので、何とか行きたいですね。そしてその気持ちをチームにもっと植え付けられるようなプレイヤーになっていきたい」

25日の試合後、桶谷大ヘッドコーチは「もっと危機感持ってやらなあかんと思います。仲が良いと言ったら仲はいいんですけれど、本当にここで2位になるんだとか、プレーオフに出るんだという覚悟がまだまだ」と苦言を呈していた。

今野に『危機感』の話を振ると、食い気味にこう返してきた。「足りないです。全然足りないです。まだちょっとというか足りないです。目の前の戦いにもっともっとフォーカスしないと駄目ですね。あと何試合あって、プレーオフがどうというのとは違う危機感を持たないといけない。目の前の敵を倒すというところですね」

ただ、表情はあくまでも明るい。「危機感が出て、結果が出る。それで絶対いいチームになります」と続く言葉にも力強さがあった。

課題と向き合い、危機感を持つことは確かに大切だ。一方で、だからといって暗くなったり落ち込んだり、後ろ向きになる必要はない。キャプテン今野の言葉と態度から、危機感と前向きな姿勢の両立が伝わってきた。