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3ポイント試投時に今シーズン108回ものファウルを獲得

ロケッツの躍進を支え、今シーズンのMVP最有力候補の一人に挙げられているジェームズ・ハーデンのプレーを見ていると、いとも簡単に得点を決めているように見える。多彩なテクニックに加えて、一つひとつの動作が精巧だからこそなのだが、なによりも対戦相手にとって厄介なのは『ファウルを誘う技術』だ。

ハーデンは特にこの技術に秀でている選手で、今シーズンの3ポイントシュート試投時に獲得しているファウル数を見てみると、その『異常さ』が分かる。

『fivethirtyeight.com』によれば、3月21日の時点で、ハーデンは今レギュラーシーズンの試合で3ポイントシュート試投時に108回のファウルを相手チームから引き出している。これはNBA最多の数字だが、特筆すべきは選手間で最多なのではなく、チーム記録と比較してもハーデンが抜きん出ているのだ。

ハーデンの次に3ポイントシュート試投時に多くファウルを獲得しているのはレイカーズで、合計73回。繰り返しになるが、レイカーズの選手全員の合計である。以下ホーネッツ(68回)、ラプターズ(52回)、ペイサーズ(51回)、トレイルブレイザーズ(41回)の順だ。

このデータを見るだけでハーデンがいかに『曲者』かが分かる。そもそもの前提としてペネトレイトの技術が一級品であり、守る側からすれば身体をぶつけるフィジカルなディフェンスで強引に止めるしかない。だが、それはハーデンの思うつぼ。ファウルせずに対応するには最大限の注意が必要で、こうして守備の意識がハーデンに集中すると、フロア上にオープンスペースを見いだして点在する凄腕シューターたちにパスを展開。こうして3ポイントシュートのつるべ撃ちに持ち込まれる、という具合だ。

同じく3月21日までの試合を対象とした『fivethirtyeight.com』のデータによれば、先月のトレードデッドラインにレイカーズから獲得したルー・ウィリアムズは、選手間での3ポイントシュート試投時の獲得ファウル数でハーデンに次いで2位の50本を記録している。ハーデンばかりに気を取られていると、ウィリアムズの術中にも陥るわけだ。

来月からはプレーオフが始まる。昨年ウォリアーズと西カンファレンス1回戦で対戦した際、ハーデンは全5試合で42本しか3ポイントシュートを打っておらず、ファウルをコールされたのはわずか5回だった。しかし、今年は幾重にも張った罠に引っかかる選手が続出する可能性が高い。ウォリアーズ、スパーズと対戦するチームも苦戦は避けられないだろうが、ロケッツと対戦することになるチームは、ハーデンのトラップによって知らず知らずの内にペースを乱すようになるだろう。