写真=Getty Images

ファン無視の決定に怒るマローン「とっととプレーしろ!」

3月18日にステイプルズ・センターで行なわれたキャバリアーズvsクリッパーズは、クリッパーズが108-78で完勝した。これでクリッパーズは連敗を3で止め、西カンファレンス上位争いに何とか踏み留まったわけだが、問題として浮上したのはキャブズの選手起用法だ。

キャブズ指揮官のティロン・ルーは、連戦という日程を考慮し、レブロン・ジェームズ、カイリー・アービング、ケビン・ラブの『ビッグ3』に休養を与えた。

NBAも各チームも、スター選手を可能な限り出場させたい。しかし、ただでさえ過酷な日程のレギュラーシーズン中に無理をさせすぎるのは禁物。長期離脱するようなケガをしてしまったら、チームの強さは半減するし、経営的にも大きな痛手となる。このため、連戦が続く場合は、特に強豪チームは主力を温存するのが今のトレンドだ。誰も表向きには口にしないが、アウェーゲームの1つを『捨てる』ことで、主力のコンディションを守るという選択肢をキャブスは採った。

だが、この選択はファンを無視している。クリッパーズのファンはもちろん、国外からもレブロンのプレー見たさにチケットを購入し、会場に足を運んだファンもいたはずだ。それが会場に来てみれば『ビッグ3』が揃って不在。この3人を除くメンバーもNBAプレーヤーでありトップアスリートだが、ファン感情からすると、お目当ての選手が出ていない試合など興ざめ以外の何ものでもない。たとえクリッパーズの熱心なファンであっても、『ビッグ3』抜きのキャブズ相手の勝利は複雑だろう。実際、クリッパーズを率いるドック・リバースは「ファンのことを考えねばならない。ただ、我々は自分たちの『商品』を守る必要もある。私も同じことをしたことがあるから批判はできない」とコメントしている。

ファンの不満を代弁するように、メディアはこの傾向を批判する。そして元NBAプレーヤーたちも、異論を唱えている。

殿堂入り選手のカール・マローンは、今回のクリッパーズ戦の後、こう声を荒げた。「10年以内のキャリアなら、とっととプレーしろ。これは仕事ではなく『プレー』なんだ。休みたいなら、まず低賃金で働いてくれているアリーナのスタッフ、警察関係者、メディカルチームに休むと伝えるのが筋だ」

レジェンドのマローンは、ジャズに所属した1985年から2003年までの間、出場停止以外の理由で欠場したことがなかった『鉄人』として知られる。マローンの現役時代と今のリーグを単純に比較することはできないが、マローンには自分を応援してくれるファンのためにコートに立ち続けた自負があり、そのレジェンドの言葉は軽くない。

翌日のレイカーズ戦で復帰した『ビッグ3』が猛威を振るう

そして翌3月19日、同じロサンゼルスのレイカーズ戦に『ビッグ3』は揃って登場。わずか1日の休養ではあれ心身ともにリフレッシュし、アービングはシーズンハイの46得点、レブロンは34得点、ラブは21得点と、3人で101点を奪う大暴れでレイカーズを破った。

キャブズにとって主力の温存は『必要悪』だ。いくらNBAのレジェンドであっても『外野』から批判されたところで馬耳東風、『ビッグ3』のコンディションを優先させることに変わりはないだろう。

リーグ最強の選手層を誇るキャブズではあるが、プレーオフに『ビッグ3』が欠けるようなことがあってはならない。連覇に最も必要なのは、主力選手が万全の状態で勝負どころを迎えることなのだ。

手を打たなければならないのはリーグだろう。NBAのマーケットはもはやアメリカ国内だけにとどまらず、グローバル化の一途を辿っている。将来的なファン離れも懸念される重要事項だけに、何の手も打たないわけにはいかない。

5日間で4試合、7日間で5試合という超過密スケジュールを改善するのがベストの対策だろう。プレシーズン期間を短縮し、レギュラーシーズン開幕時期を早め、過密日程を緩和することをNBAは検討している。

選手を過度の酷使から守り、クラブとリーグは収益を維持し、なおかつファンの楽しみを損なわない。すべてのバランスを取るのは難しいが、NBAにとっては喫緊の課題である。