ハピネッツと田口成浩、その終わりなき挑戦

2016/05/17
Bリーグ&国内
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写真=アフロスポーツ/bj-league

カリー級の活躍を見せた田口、ブースターに涙の挨拶

5月15日に行われたbjリーグファイナルズ。3位決定戦に回ることになった秋田ノーザンハピネッツは、シーズン最後のゲームで過去6シーズン最多となる122点を奪い、122-74と大差で京都ハンナリーズに勝利。有終の美を飾った。

秋田のオフェンスに火を付けたのは地元出身のエース、田口成浩だ。前半だけで13点を奪っていた田口は、第3ピリオドに「ゾーン」に入り、5本中5本の3ポイントシュートを含む19得点を荒稼ぎ。最終的に35まで得点数を伸ばした。

もっとも、目指していたのはbjリーグ最後のシーズンでの優勝だった。前日、富山グラウジーズ戦が終わった後、ロッカールームに戻った田口は意気消沈していたが、「ここで終わるわけにはいかない」と気持ちを切り替えた。そしてチームメートに、「あれだけのブースターさんがいるんだから、感謝の気持ちを込めて、勝って恩返しして帰ろう」と伝えた。

仲間たちの「よし!」という返事が、田口をまた奮い立たせた。こうして迎えた京都戦、田口だけでなくチーム一丸となって、異常なまでの集中力を見せた。竹野明倫は4本中3本の3ポイントシュートを含む15得点、レイ・ターナーは体を張ったダイナミックなプレーで18得点11リバウンドを記録。スタッツに表れないディフェンスや試合運びも素晴らしかった。リチャード・ロビー、スコット・モリソン、大塚裕土、水町亮介……コートに立ったすべての選手が持ち味を発揮。こうして強豪である京都に圧勝したのである。

田口はと言えば、3ポイントシュートは11本中9本。相手に寄せられていた中で打ったタフショットさえ沈めて見せた。ウォリアーズのステファン・カリーさながらのスプラッシュ・ショーの最中、田口はゴールを決めるたびに、桃色に染まったスタンドに手を振り上げ、こぶしを突き出してブースターを煽りに煽った。

「全員で楽しもうぜ、という自分なりのパフォーマンスでした。僕も楽しんでいるし、みんなも楽しもうぜ、という感じのものです」と試合後に田口は振り返る。彼の願いは功を奏し、ブースターが熱狂する中で、田口もチームメートもさらに勢いに乗り、攻守両面で最高のパフォーマンスを見せた。

「3ポイントは自分の最大の武器です。あれだけ何本も入るのはなかなかなかった。気持ちをコートで表現することは最後まで絶対やろうと思っていたので。あれだけ入ればブースターさんも喜んでくれたでしょう」

もっとも、試合中は存分に楽しんだとしても、試合後にスタンドに挨拶する時には、こぼれる涙をこらえきれなかった。最後の試合をブースターとともに楽しみ、勝って終わることができたのはいいが、やはり優勝を逃した悔しさを忘れることはできなかったのだ。

「辛かった時期に支えてくれたのはブースターさん。あの人たちが『頑張れ、ゴー・ハピネッツ』と言ってくれるおかげで、心が折れずにつながったんです。試合が終わった瞬間は、感謝の気持ちだけです。ブースターさんに対する今までのいろんな思いがこみ上げました。優勝して、最高の紙吹雪の中でみんなで喜びたかった。喜ばせたかった。それができなかったことが申し訳ない。その悔しさから涙が出たのかなと思います」

最後の試合で着用したのは、東日本大震災からの復興を願って「桜」をあしらったユニフォーム。bjリーグ優勝という「大輪の花」を咲かせる意味が込められたデザインでもあった。「決勝で着たかったです」と田口は言う。「僕はあのユニフォームが好きですから。でも、3位決定戦であれだけみんなが楽しめたので、少しは桜が咲いたんじゃないですかね」

田口が試合後に流した涙。「ブースターさんに対する今までのいろんな思いがこみ上げました」

間違いなく消えない、2つのモチベーション

終わり良ければすべて良し。長いシーズンには良い時期も悪い時期もあるにせよ、秋田にとっては決して順風満帆な一年ではなかった。最後の試合を終えた会見で、長谷川誠ヘッドコーチは開口一番こう語った。「今シーズン最後のゲームで、一番良いオフェンスとディフェンスができました。これだけのプレッシャーの中で勝つことができて、ホッとしています」

この一年で大きく成長した田口について、指揮官はこうコメントしている。「昨年と比べたらディフェンス力が付いた。そしてリーダーシップが取れるようになった。スタッツに出ない部分で成長したと思います。ただ、ここで満足しないでほしい。日本代表候補ではなく日本代表選手に、日本代表選手になったら次はそのレギュラーに。そして世界に通用する選手になってほしい」

3位決定戦の終了後、スタンドは入れ替え制のため秋田のブースターは去り、有明コロシアムの半分を埋め尽くしていたピンク色が消えた。同様に秋田の選手たちも、決勝を見届けることなく有明コロシアムを去った。

田口は言った。「Bリーグには今まで以上に強敵がいるので、このオフに自分の足りないところを克服しなければいけない。僕は日本代表候補に選んでいただいていますが、あのメンバーの中では一番下です。同じBリーグになったら、同じポジションのメンバーを一人ひとり倒さないと、チームとしても勝てないし、個人的にも代表候補で止まってしまう。そういう相手を倒すのがモチベーションになります。あとは応援してくださる方々の期待を感じるので、それに応えるというモチベーションもあります。バスケットをしているかぎり、この2つは間違いなく消えないモチベーションになります。自分はもっとできると期待しています。力の限り、目標を高く掲げてやりたいです」