文・写真=鈴木栄一

「ゲームの流れをしっかり読めなかった9点差」

2月26日、琉球ゴールデンキングスは千葉ジェッツに71-80と、前日に続いて敗れた。22日の名古屋ダイヤモンドドルフィンズ戦、試合終了と同時に決まる逆転3ポイントシュートで77-75と劇的勝利を収めた勢いを結果につなげることはできなかった。

しかし、現在リーグでも屈指の強さを誇る千葉相手に、25日は序盤から大差をつけられ71-89の大敗だったのが、この試合では終盤まで食らい付き、今後への明るい兆しを感じさせられる一戦でもあった。

琉球のキャプテンであり司令塔の岸本隆一は、このように試合を振り返る。「割と良いバスケットボールを展開できたと思いますが、勝負どころで向こうが一枚上手でした。自分たちの目指すスタイルをやり続けていく中、こういうゲームを経験することで、どこが勝負どころで、どういった形で攻めるか守るかを学んでいくしかないです」

試合の勝敗を分けた大きなポイントとして、ここぞという場面で流れを引き寄せるビッグショットを決めたタイラー・ストーンの働きが光った。この点について岸本は「あと9点差を縮めるため、ここを止めなければいけない場面。ストーン選手の1対1で相手がシュートを外すのを待つよりも、何かこちらから仕掛けがあってもよかったと感じました。ゲームの流れをしっかり読めなかった9点差でした」と反省する。

また、シーズンを通しての課題とはいえ、帰化選手や日本代表のビッグマンが不在の琉球は、外国籍がオン・ザ・コート「1」の時間に劣勢となるケースが少なくない。この試合もオン・ザ・コート「2」である第2、第4クォーターでは合計で34-35と互角だったが、「1」の第1、第3クォーターでは37-45と離されてしまっている。

この部分について岸本は、守備でよりアグレッシブになることが大切と強調する。「ここ最近、アグレッシブなディフェンスは機能していると思います。ただ、特にオン1の場面ではもっと足を動かして積極的に行き、引いたディフェンスをしないように心掛けていきたいです」

さらに「出だしが重要で自分たちのオフェンスをするだけでなく、相手のストロングポイントをしっかり抑えないといけないです」と、試合の序盤にもっと強固な守備をすることで流れを引き寄せたいと語る。

「開き直ってどういう場面でもシュートを狙っていく」

オン・ザ・コート「1」での劣勢とともに、今、琉球にとって最も大きな難点となっているのが、一度流れが悪くなると連続10失点以上を喫するなど、一気に崩れてしまう点だ。25日の試合でその弱点は顕著に表れたが、イージーシュートを外した結果、逆に速攻を食らって失点。それで焦ってしまい、守備を崩していないまま単発のタフショットを放つと、リバウンドを取られて素早い展開からイージーシュートを許し、失点が重なる……と悪循環に陥ってしまう傾向が出てくる。

こういう状況になった時、いかに得点をし、悪い流れを早く切ることができるか。ここが、これから琉球がどれだけ勝ち星を伸ばせていけるかの生命線となってくる。そして、岸本がキーマンの一人となってくるだろう。

もともと、得点力を備える司令塔であることが持ち味の岸本だが、特にシーズン序盤は、bjリーグ時代と比べてサイズがあり、フィジカルが強くなった相手に、前と同じような得点を重ねることができない場面も見られた。また、苦しい展開が続くことで、何とかチームで攻める形を作り出そうとゲームメークへの意識が強くなり、自ら仕掛けるシーンが少ない時も見受けられた印象がある。

だが、最近の岸本はこのように自ら得点を取りにいくことを強く意識している。「得点とゲームメークのバランスは難しい部分ですし、まだ結果が伴ってきていないです。ただ、今は開き直ってどういう場面でもシュートを狙っていくことで周りを生かせられるようになる。このスタイルで行くことが自信になってきています。自分がどんどん点を狙いにいくのも、チームのスタイルに合っているのかと思います」

劣勢になった時にこそ得点を挙げる『エース』の働き

実際、2月に入ってからは7試合連続で2桁得点中と数字も出ている。後は26日の千葉戦でも見せたように、チームが劣勢になった時にこそ得点を挙げることを本人も強く意識している。「良い流れの時、みんなシュートは入るものです。逆に苦しい時に、ミドルジャンパーなどを決め得点面でつなげたのは素直に自信になりました」

今の琉球において岸本は、司令塔の経験が一番豊富な選手である。しかし、bjリーグ時代、2013-14シーズンのファイナルでは34得点をあげてMVPを受賞。そして昨シーズンも日本人選手最多タイとなる41得点をマークするなど、点を取れることが大きな強みだ。

シーズン終盤、琉球がプレーオフ戦線に絡んでいけるかどうかは、司令塔としてだけでなくスコアラーとして岸本がどれだけ存在感を発揮できるかが大きな鍵となる。