文=丸山素行 写真=B.LEAGUE

ゲームハイの29得点を挙げるも「今日は疲れてましたね」

「田中選手は特に素晴らしかった」

そう語ったのは栃木の指揮官トーマス・ウィスマンだ。22日に行われたアルバルク東京と栃木ブレックスの『東地区頂上決戦』は、ライアン・ロシターの劇的な3ポイントシュートで栃木が勝利したが、試合の中で最も目立っていたのはウィスマンが称賛した田中大貴だ。

田中は12月24日に記録した30得点に次ぐ、29得点を記録。ディフェンスでも3スティール、外国籍選手がいない中で竹内譲次に次ぐ6リバウンドと攻守に存在感を見せた。特に終盤での活躍は目覚しく、A東京が第4クォーターに奪った20点のうち実に15得点が田中の得点だった。

終盤のオフェンスを田中はこう振り返る。「ディアンテがパスをくれた部分もありますけど、最後は自分でも『責任は自分が持つ』くらいの感じで自分で攻めようという気持ちがありました」

田中は代表の合宿に参加し、2週間前に行われたイランとの国際強化試合にも出場している。代表とA東京でのプレーにおいて、「特別何かを変えているつもりはない」と話すも、二足のわらじを履いている今の状況が良い影響をもたらしているともコメントした。

「こっちのチームに関しては長い時間をプレーさせてもらっているので責任があるし、代表に限ってはもう一回自分をアピールしなければいけないので、気持ちの面で積極的になれてると思います。それが良いというか、今の自分に繋がってるのかなと思います」

疲れはあるが「ブレることなくやれている」

それでもこのタフなスケジュールは、確実に田中のコンディションに影響を与えていているようだ。伊藤拓摩ヘッドコーチは田中の状態をほぼ完璧に理解していた。

ゲームハイの29得点を挙げた田中に対し「キレキレではなかったと思います」と発言。「普段決めるレイアップも何本も落としていました。代表に行って疲れてます。やっぱり慣れないことをしてますし、そのタイミングで外国籍選手がいない中、今日も35分プレーしてますから」

そんな田中が活躍できた理由について指揮官は「気持ちがすごい入ってたのでしょう」とメンタルを理由に挙げた。

田中自身も「代表の試合が終わってコンディションの部分でもあまり良いとは言えない状態でした」と語り、「もったいないミスもありましたし、ターンオーバーもいつもよりかは多かった」と、万全ではなかったことを認めた。

そして、「精神的なところでブレることなくやれているかなと思います」と伊藤コーチが言った通りの回答が返ってきた。このような選手とヘッドコーチの共通理解がA東京の強さの秘密なのかもしれない。

「最後に勝負を分ける泥臭いところ、そこが足りない」

田中は昨日のような素晴らしいパフォーマンスを見せても、決して現状に満足をしていない。田中は「昨年と同様で、すごくいい試合もありますし、あまり良くない試合もあります。そういう波をなるべく減らしていきたいです」と課題を語る。

直近の15試合で2桁得点に乗らなかったのはわずかに2試合と、コンスタントに活躍できているが、安定感についてもう少しフォーカスすると、課題となるのは得点以外の部分だ。

「今日の試合に関して言えば、、栃木に最後何本もオフェンスリバウンドを取られましたし、得点とかではなくてリバウンドなどの部分が必要だと思います。最後に勝負を分ける泥臭いところ、そこが自分に足りないと思ってます。しっかりビデオを見て改善していきたい」

活躍はしたが、試合には敗れた。この結果を彼はどう受け止めているのだろうか。「試合には負けましたが、すべてが悪いわけではなく、チームとしてステップアップしています」と、田中は手応えを語る。

「これで終わりじゃないですし、もっともっと成長して、今日のこれがあってまた良くなったって言えればいいかなって思います」

得点以外の部分でステップアップを続けていけば、田中は『完全無欠のオールラウンダー』へと進化を遂げるだろう。今日の試合も成長の糧になるはずだ。