取材・写真=古後登志夫 構成=鈴木健一郎

新人戦で福岡を勝ち上がれなかったチームが2冠に輝く

2月18日、博多にて福岡第一高校のインターハイとウインターカップの優勝を記念した祝賀会が行われた。バスケ部員はもちろん、コーチや裏方のスタッフ、生徒の父兄、OBなど、『2冠』達成を支えた人たちが集まった。

インターハイの優勝は7年ぶり2回目、ウインターカップ優勝は11年ぶり2回目。全国的な強豪として知られ、多くのトップ選手を輩出している福岡第一でも、全国大会ではそう簡単には勝てない。『2冠』はまさに快挙なのだ。

祝賀会で壇上に立った井手口孝監督は、『2冠』を達成したチームを「新人戦では福岡でも優勝できないチームでした」と振り返り始めた。

「それが特に3年生が最上級生になって、すごく自覚を持って取り組んでくれた。単純に走る練習でもコートの端から端まで、ラインからラインまで手を抜かずに走る。誰でもできることが、なかなかできないものですけど、そういうところを一生懸命やってくれた」

「6月には中村和雄先生にオフェンスを修正していただいた。その結果として、インターハイの優勝がありました。インターハイは比較的楽な戦いで優勝できましたが、ウインターカップは大変でした」

「僕らはいつも、練習が終わると大きな声で校歌を斉唱します。何のためにと聞かれると『全国大会で優勝して歌ったら気持ちいいぞ』と言っていて。ところがインターハイの時は興奮しすぎて歌うのを忘れていたんです。それでウインターカップで絶対やろうと決めていて、みんなで大きな声で歌うことができました。バスケットボールのコーチとして、学校の先生としてやってきて、本当にうれしかったです」

井手口監督「もっともっと良いバスケットを探したい」

高校バスケを『勝って卒業』できるのは一校だけ。彼らはその栄光を手に入れた。ただ、『2冠』のチームで中核となった3年生は卒業しても、チームは代替わりして続いていく。

『新生』福岡第一は、新人大会で県内のライバルである福岡大付属大濠を破って優勝し、好スタートを切った。井手口監督は言う。「県大会、地区大会と無難に乗り切って優勝しているので、今のところは去年の先輩たちよりうまくいっています。ただ、ここまでは去年のままのバスケットをやっていて、今は今年のスタイルに変えているところです」

「50歳を超えたので、50を超えた彼らとの付き合い方があると思っています。意地悪だし厳しいんだけど(笑)、とにかく一言でもいいから毎日話しかけてあげようと。55人も部員がいると、その日に一言も声をかけられない子がいます。それをできるだけなくしたいんです」

とは言え、それも簡単ではない。Bリーグが始まりバスケットボール熱が高まる中、『2冠』の強豪校でバスケをやりたいという入部希望者が殺到しているのだ。「11人卒業して30人入ってくるので、来年度は70人になります。僕だけじゃなくてコーチもいるんだけど、声をかけるとか見てあげるとか、そういう当たり前のことを大事にしたい」

「目標はもちろん全国優勝なんだけど、もっともっと良いバスケットを探して、みんなに褒めてもらえるチームにしたいです」。そう言った井手口監督は、2度目の『2冠』を目指して日々の指導に取り組んでいる。