[CLOSE UP]富樫勇樹(千葉ジェッツ)スタープレーヤーの苦悩、知名度アップとともに訪れた「正直、一番タフな場所」

2017/02/06
Bリーグ&国内
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文=大島和人 写真=B.LEAGUE

立ち上がりの課題はポイントガードである彼の課題

富樫勇樹のコメントに、いつもの歯切れがなかった。相手の目をしっかり見て、丁寧に応えようという彼らしい態度はあっても、「うーん」と答えを探す時間が長い。5日の試合は千葉ジェッツが78-65で勝利を収めたが、富樫は少し沈んだ表情で「この2試合は本当に反省点が多い。自分たちのバスケットができなかった」と語り始めた。

千葉は1月9日にオールジャパンを制し、富樫は1月15日のオールスターゲームでMVPに輝いている。彼はBリーグのスターとして認知され、2月10日と11日のイラン戦に向けた日本代表にも招集された。ただ、今の彼は壁に直面している。

チームと彼の課題は明快で、それは第1クォーターの試合運び。調べてみると12月30日の川崎ブレイブサンダース戦から9試合連続で、千葉は第1クォーターをビハインドで終えている。富樫はそんな思うに任せない状況をこう説明する。

「オフェンスが良い時ってディフェンスも良くなるんですけれど、シュートが入らないのにディフェンスもソフトにやってしまって、相手をリズムに乗らせてしまう試合が続いている。ポイントガードとしてしっかりチームを動かして、もうちょっと戦う感じを見せないといけない」

横浜ビー・コルセアーズとの連戦を終えた彼からは、問題意識が痛いほど伝わってきた。他の時間帯について聞いても、話が第1クォーターに戻ってしまうほどだった。

「本当に出だしがもう……。昨日も悪かったので、今日は注意して入っていたんですけれど、同じことを繰り返してしまった。個人としても第1クォーターの入り、動きが良くないと感じることは多い。アップなりで、ちょっとずつ変えていくしかないかなと思っています」

万全ではないコンディションで結果を出すという『挑戦』

記者は無責任に「どうすれば良くなるのか?」と聞いてしまうが、富樫はまだ答えをクリアに出し切れていない様子だった。

昨日の富樫は22分12秒のプレータイムで4得点4アシスト。チームを勝利に導くという役割は果たしたが、決して良いパフォーマンスではなかった。第4クォーターの出場は5秒に留まっているが、それは大野篤史ヘッドコーチが「ふくらはぎにちょっと違和感があって、プレータイムを制限しなければなと思っていた」と明かす、コンディションへの配慮だ。

富樫自身もこう説明する。「オールジャパンの時もそうだったんですけど、ここ最近はコンディション的に万全でない。無理せずには行きたいんですけど、もちろん試合に出られる状態なら出ようかなと思っている。でも代表戦も今週ある。悪化させないことはもちろんですけど、やらなければいけない。身体を見ながらですけれど、しっかり頑張りたい」

Bリーグはリーグ戦だけでも60試合という長丁場。プロのアスリートがすべての試合に最高のコンディションで臨むことはあり得ない。プレーや戦術といった部分でも、プロは解決の難しい課題に見舞われることがある。一方でそれは23歳の彼にとって成長の糧ともなり得る試練だ。

富樫からは苦悩と同時に、そんなチャレンジに向けた覚悟が伝わってきた。彼は言う。「シーズンの中で、正直一番タフな場所だと思うんですけど、個人としてもチームとしても乗り越えなければいけない」

富樫は横浜戦を終えて日本代表に合流する。今までは候補止まりが多かった富樫も、今回は暫定ヘッドコーチのルカ・パヴィチェヴィッチから「バスケIQの高さ」を評価され、3人いるポイントガードの一人としてイラン戦のロースター15人に加わっている。

富樫はこう分析する。「日本のポイントガードは2つに分かれている。コントロール中心で、空いたら打つくらいの選手が他の国と比べて多い。アメリカはむしろポイントガードが一番シュートを打つくらいのチームが多いと思うんですけれど、日本のガードはそうでない」

彼が「コントロール中心」とは正反対な、自らアグレッシブに打つタイプであることはファンならご存知の通り。「点を取れる」「点に絡む」という部分に限れば、富樫は日本最高のポイントガードだ。加えてバスケの楽しさを伝える『華』もある。

確かに富樫は難しい課題に直面している。ただ、彼がチャレンジに怯むようなタイプなら、167cmの身長で一流のバスケ選手にはなっていない。第1クォーターの試合運びも、コンディションの問題も、それを乗り越えた先にはもっと成長した彼がいるはずだ。