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「おい、ちゃんと靴紐を結べよ」から、こだわりが爆発

『平均トリプル・ダブル』を維持しているサンダーのラッセル・ウェストブルックの集中力は尋常ではない。それだけの能力の持ち主だからこそ、試合でも寸分違わぬパスの出し手となり、受け手ともなれるのだろうが、それはコートを降りた日常生活でも変わらないようだ。

『New York Times Magazine』最新号に掲載されたロングインタビュー内で、細かい部分にまで人一倍強いこだわりを見せるウェストブルックの『癖』を象徴するエピソードが掲載されている。

昨年12月のあるオフのこと。ウェストブルックはサンダーのチームメートとともに、オクラホマシティの小学生を対象としたイベントに参加した。そのイベントには、スクールバスを改造し、本がたくさん積み込まれた移動式の図書館もあり、ウェストブルックは参加した小学3年生との交流を楽しんだ。

そんな時、靴紐が緩んでいた男子児童を見つけたウェストブルックは、「おい、ちゃんと靴紐を結べよ」と声をかけた。その男子は自分の足元を確認しただけでそのままバスに乗り込み、本を取って立ち去ろうとした。その姿を見たウェストブルックは、「靴紐を結ぶのを忘れるなよ」と、再び声をかけた。

それからというもの、ウェストブルックはバスに乗り込んだ児童たちの足元が気になってしまいチェックを開始。もちろん終始柔和な表情だったものの、靴紐が乱れている児童を見つけると、「ちゃんと結びなさい」と声をかけ続けた。この瞬間からバスに入るにはウェストブルックの検査を通らなければならなくなり、些細な乱れも許されなかったという。

そんな時、両足とも靴紐が特に乱れていた男子児童を発見したウェストブルックは、「君はそういう履き方するのか? 俺も昔はそうだったから分かるよ。でもね、きちんと結ばないとダメだ」と話しかけた。すると、その児童がバスの本を取りに行く前、ついにはウェストブルック本人が車内でヒザをつき、その生徒の靴紐を結んであげたという。

イベントの最後に記念撮影をした際には、児童全員の靴紐が綺麗に結ばれた状態に。これに気分を良くしたウェストブルックは、セダン型の白のキャデラックを颯爽と運転して帰って行った、というのだ。

バスケットボールに関しては特に強いこだわりを持つ

一般人とは次元が違う集中力とこだわりを紹介するエピソードは他にも同誌に掲載されている。サンダーの用具係の話では、ウェストブルックは試合で着用するシューズも練習用、ホームゲーム用、アウェーゲーム用ときっちり分けてあるという。

また、シューズ契約を結ぶNikeに対しても、求めるクオリティは他の選手と比べて段違いに高い。先日、最新モデルの『Jordan31』が届き、履き心地を確認したウェストブルックは、ソール部分の柔軟性が足りないと注文をつけ、ソール部分だけ前モデルのものに変更するよう要求。自分用にカスタムされたシューズであっても、インソールの堅さが十分でないとなれば、チームの用具係が一足ずつ手作業で交換するそうだ。

コート上では時に狂気すら漂わせるウェストブルックだが、試合映像の分析にも妥協を許さない。チーム内の全ポジションの選手の特性を把握しているというウェストブルックは、遠征の移動中は必ず映像をチェックしており、それは真夜中の移動であっても変わらないとチームメートのスティーブン・アダムズが証言している。アダムズによれば、機内で寝ている時に起こされ、映像について意見を求められることもあるという。

どの競技であっても、トップ中のトップアスリートはこだわりが強いものだが、ウェストブルックはその中でも群を抜いている。稀に見る集中力の高さも、きっと『平均トリプル・ダブル』を可能にしている要因の一つなのだろう。