[CLOSE UP]辻直人(川崎ブレイブサンダース)コンディショニングの重要性を学び考える1年、今回は腰の完治を優先

2017/02/02
Bリーグ&国内
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文=小永吉陽子 写真=小永吉陽子、鈴木栄一、野口岳彦

腰の関節炎を抱えながらも、代表合宿での『学び』を選択

イラン代表との国際強化試合に出場する日本代表選手15名の中に辻直人の名前はなかった。2013年に日本代表入りした辻は、膝のケガのために出場できなかった2015年のアジア選手権を除き、常に日本代表の主戦力として名を連ねてきた。

今回の選考から漏れたのは、1月のオールジャパンの際に発症した腰の関節炎の影響が理由だ。辻が腰痛を公表したのは千葉ジェッツとのオールジャパン決勝が終わった直後だが、痛みはオールジャパンの初日から起きており、決勝では思うようなパフォーマンスができず3得点に終わっている。

オールジャパン後、試合に復帰したのは1月28日。「やっと走れるようになったばかりで、コンククトプレーをしたり、体をひねるとまだ痛みがある。6割くらいの回復」と本人は語る。それゆえに今回の代表合宿では「全然動けなかったので、イラン戦には選ばれないと思いますし、そうなっても納得しています」と練習後の取材で語っていた。

それでも、回復具合が6割の状態でも、強化合宿を欠場せずに参加したのは、「日本代表は新しい発見がある場所だから」という理由からだ。

辻は昨年7月のオリンピック世界最終予選(OQT)にて、2試合合計で29得点をあげ、チームトップの得点源となっている。とくに、40点差で完敗した後のチェコ戦では18得点をマークしているが、これは個人で打開して得点を取ることにトライした結果だった。

国際大会ではただパスを待っていても来ないし、ノーマークを作り出すことすら難しい。辻自身、乗せたら怖い『起爆剤』になり得るシューターであるため、これまでも幾度となくアジアでは厳しいマークに遭っている。だからこそ、自分でディフェンスを振り切ってスペースを作り、スクリーンのスイッチに対応しながら打つことを試せたOQTは、たった2試合でも収穫は多かった。今も引き続き「1対1で打開して打つ」ことをテーマにリーグ戦に臨んでいる。

ルカ・パヴィチェヴィッチコーチは2回の強化合宿で、「日本人選手にもっと使いこなしてほしい」とピック&ロールからの攻めを主体に練習を組み立てている。今回のイラン戦には選出されなかった辻だが、「スクリーンをかける角度や、ヘルプを多用しない守り方など、新しい学びがたくさんあったので合宿に参加できてよかったし、学んだことをチームのルールの中で生かせるようにやってみたい」と、その意欲的な姿勢は代表選出の有無にかかわらず変わらないところだ。

日本で最も活動した選手がぶつかるコンディショニングの課題

今回のイラン戦に限らずだが、国際大会で実績を残している選手であっても、コンディションが整わないのであれば代表に選出されないのは当然のことである。ただ今回の辻の負傷のケースは、日本代表とリーグを掛け持ちする選手の体調管理ついて、改めて考えさせられる機会になったのではないだろうか。辻はこの1年、フル稼働してきた選手だからだ。

腰の関節炎に陥った原因について辻は「決してオーバーワークではない」としながらも、「下半身の疲れが腰にきたのも原因の一つとしてある」と話している。振り返れば、この1年間は非常にハードなスケジュールをこなしている。

昨年6月に5戦までもつれたNBLファイナルが終わると、休む暇なく中国でのアトラスチャレンジ、7月のオリンピック世界最終予選、8月のジョージ・ワシントン大との親善試合、9月のアジアチャレンジと国際大会が続き、すぐにBリーグ開幕に突入している。そして11月には再び日本代表として台湾遠征に出向き、年明けのオールジャパンでは決勝に進出している。この1年、リーグのプレーオフと主要国際大会に出続けているのは辻と比江島慎(シーホース三河)だけであり、ここに来ての負傷は、決して疲労とは無関係ではないはずだ。

辻は2014年、アジア競技大会の直後に休む暇なくリーグを戦った時も万全なコンディションでは戦えず、「シュートの打ち方を忘れるほど体調面で苦しい時期があった」ことを明かしている。2年前と比べれば、今はリーグ中に台湾遠征を行っても激しいコンタクトの中でシュートを決め切るタフネスさが出ており、「日本とスタイルが違う国と戦うのは慣れが必要」と手応えもつかんでいる。

2017年度からFIBA主催の国際大会の方式が変わり、ワールドカップ予選はシーズン中の11月と2月にも行われることになった。さらに、東京オリンピックの開催地枠を確保するために、国際大会の結果と強化の内容が問われることになり、その上でBリーグは年間60試合に増えている。

コンディションを配慮するのは何も選手だけではなく、体調管理を預かるトレーナーも、選手起用を考えるヘッドコーチも同様。バスケ界をあげて、これまで経験したことのない新たな領域を学ばなければならない。辻の腰痛に見る代表選手のコンディショニングは、今後の課題だと言えよう。

辻自身は回復に務めながらも、次なる目標をしっかり見据えている。

「今シーズンは今まで以上にコンディショニングを学んでいるし、自分の身体と向き合うようになりました。練習後のケアや、今、佐藤さん(晃一、日本代表スポーツパフォーマンスコーチ)とやっている(悪い箇所を治しながら自身のパフォーマンスを上げる)エクササイズにしても、こういうものが必要なんだと感じています。自分の目標は今回のイラン戦ではなく東京オリンピックなので、今は治すことに専念します。でも次の重要な国際大会には『辻の力が必要』だと言われるように、Bリーグで存在感を示して頑張っていきたい」