Bリーグ成功のカギとなるアリーナ建設を実現させるには?

トンネルのような細く短いゲートを抜けると、カクテル光線まばゆい異空間が広がる。大型ビジョンが吊り下げられ、興奮を余すことなく見られるすり鉢状の観客席。NBAのアリーナは非日常に誘われる。だが日本では、アリーナスポーツで成功している会場がほとんどないのが現状だ。

「5000人を収容するホームアリーナ」は、Bリーグのクラブライセンス条件の一つとなっている。しかし、全国主要体育館150カ所でこの条件を満たしているのはたったの33カ所しかない(編集部調べ)。4000人を条件にすれば、概ね3000人台の公共体育館においても、コートサイド席や架設スタンドを設置することでクリアできる。それでも思い切って5000人としたのにはワケがある。

「せっかく自治体が動くかもしれないチャンスなのに、4000人ではバスケ界が得しない。だから5000人と思い切って言った。皆さんがこのチャンスをものにできる二度とないきっかけだ」と、日本バスケ界の立て直しを行った昨年のタスクフォース会議で、川淵三郎チェアマン(現JBA会長)は全チームオーナーの前で訴えた。

トッププロリーグ誕生を機に自治体を動かし、地域住民とともにアリーナ環境の整備ができる最大のチャンスが到来した。いち早く動いたのは、大阪エヴェッサだった。2015年4月より7000人収容可能な舞州アリーナと10年間の定期賃貸借契約を締結。同年8月にはネーミングライツ契約が決まり、府民共済SUPERアリーナとしての運用をスタート。Bリーグ開幕に向けてハード面の準備を万全とした。

同じ大阪で話題を集めているのが市立吹田スタジアムである。

4月29日、スタジアム建設募金団体の代表理事を務めた金森喜久男氏を講師に、寄付金で建設された市立吹田サッカースタジアムの全容を明らかにするセミナーが開催された。ゴールデンウィーク初日にもかかわらず満席となったセミナー内容の一部を、金森氏と主催されたスポーツビジネスアカデミーの了承を得て、ご紹介できる運びとなったことに感謝する。

寄付金で建てたスタジアムは市に寄贈し、公共財産に。

ガンバ大阪がそれまでホームスタジアムとしてきた万博記念競技場は、「屋根がない」、「飲食が充実しておらず、しかも不味い」、「トイレが汚い」というクレームが多かった。また、6万人収容可能な埼玉スタジアムをホームとする浦和レッズと総収入を比較すると、20億円以上の開きがあった。

何より、「同じサッカーなのに面白さが違うのはなぜだ?」とレッズ戦を観戦した金森氏は驚かされる。すべてはスタジアムの問題であり、これを根本的に解決するためには「新スタジアム建設しかない」として立ち上がったのだ。

建設費は寄付金でまかなった。関西経済連合や大阪のスポーツ界、現在JBA会長を務める川淵キャプテンら多くの力添えがあり、企業から99.5億円、個人から6.22億円を集めた。これに助成金35.15億円を加えて目標額の140億円を達成し、スタジアム建設を実現したのだ。寄付金によって建てられた市立吹田スタジアムは、スタジアム建設募金団体を通じて吹田市へ寄贈された。

ガンバ大阪が所有する「ガンバスタジアム」では決してない。クラブは指定管理者として運営を行うが、スタジアム自体は吹田市や大阪府全員の公共財産である。ガンバ大阪のホームゲームだけではなく、4万人収容可能の国際基準を充たすスタジアムを作ったことで、2019年ラグビー・ワールドカップや2020年の東京オリンピック・パラリンピックなどサッカーに限らずビッグイベントがやって来る予定だ。

「サッカー観戦が変わる」と好評の吹田スタジアムの建設実現に尽力した金森喜久男は「バスケは必ずフィーバーする」と語る。

スタジアムが欲しい、という情熱だけで寄付金を募っても成功はないと金森氏は釘を刺す。コンセプトを明確にし、地域に還元できる「大義名分」が絶対になくてはならないと強調していた。観客や地域住民の立場に立って考えたプランを描くことが欠かせない。

セミナーの最後に、「バスケは必ずフィーバーする。皆さん、ご期待ください!」と心強い言葉を投げ掛けた金森氏は、Bリーグの開幕を心待ちにしている。現在、教授を務める追手門学院大学で、これから起こるであろうバスケフィーバーの要因をつかむべく、早速データ集めに取り組んでいる。

市立吹田スタジアムを手に入れるまでのスタジアム建設募金団体の経緯は、金森氏の著書「スポーツ事業マネジメントの基礎知識」(東邦出版/amazon→ http://amzn.to/26UVZiU)にて詳細に紹介されているので、ぜひご覧になっていただきたい。また、スポーツビジネスアカデミーでは、日本バスケ界がさらに上向くヒントが得られるセミナーが目白押しである。

金森喜久男
スタジアム建設募金団体 代表理事
追手門学院大学 経営学部 教授
パナソニック株式会社 客員
Jリーグ参与
松下電器産業株式会社(現パナソニック株式会社)に入社後、北陸支店長、松下電送システム株式会社常務取締役、松下電器産業パナソニックシステムソリューションズ社常務取締役を歴任。2008年?2013年までガンバ大阪の代表取締役。在任中はAFC委員、AFCプロクラブ委員会委員長も務めた。
著書「スポーツ事業マネジメントの基礎知識」

スポーツビジネスアカデミー(SBA)
2020年オリンピック・パラリンピック開催を契機としたスポーツ産業の発展、グローバル化をドライブするスポーツビジネス人材作りを目的として誕生。「ビジネスマネジメント」事業・営業系マネジメントセミナーとスポーツ×ICT関連セミナー、「フィールドマネジメント」競技系マネジメントセミナーの部門ごとにセミナーを用意。講師は、国内外のスポーツの現場で活躍されるプロフェッショナルな方々。生の声を直接聞くことができるとあり、多くの受講者が参加し、毎回盛況だ。またSBAセミナー講師には、Bリーグの葦原一正氏も名を連ねている。
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