文=鈴木健一郎 写真=野口岳彦

勝利のカギは「ディフェンスをしっかりやって速攻を出す」

先週末に敵地で千葉ジェッツとの2連戦を戦ったシーホース三河。土曜の第1戦では競り負けたが、翌日には課題を修正して完勝を収めた。エースの比江島慎は、第1戦では15得点4アシスト、第2戦では10得点3アシストの数字を残している。

スタッツとしては下がったが、比江島が満足しているのはもちろん勝利した第2戦の出来だ。第1戦の課題を「ディフェンスをしっかりやって速攻を出すこと」と振り返った比江島は、「それができたから勝てました。それが分かったという意味で価値のある2試合でした」と語る。

「ディフェンスをしっかりやる」とは言葉にすると簡単だが、コート上で40分間実践するとなると話は別だ。第1戦でやれなかったディフェンスについて比江島はこう説明する。「一つひとつ細かいところなんですが、プレッシャーをかけて相手に気持ち良く打たせてしまったし、外してくれたところでオフェンスリバウンドを取られたり。つながれてつながれて、という展開だったので。今日はリバウンドも取れたし、最後の大事なところで集中して守ることができました」

ディフェンスがうまく行けば攻撃にも良い形でつながる。「一番確率の高いところで得点を取れたし、アシストもできていた」と比江島は自身のオフェンスについては及第点を付けた。

地区が異なる千葉との対戦はレギュラーシーズンではこの2試合だけ。次の対戦があるとしたらプレーオフでの顔合わせとなる。オールジャパンでは準決勝で敗れている相手で、比江島も「千葉は僕が考えるに一番苦手な相手」との意識を正直に明かした。

「富樫(勇樹)にしても阿部(友和)さんにしても速いし、(マイケル)パーカーにしても走って来る選手です。僕らもハリーバックをするのですが点を取られることが多い。しっかり守ってしっかり走って来る真面目なチームなので、そこはやりづらいですね。ピック&ロールの守り方もウチは決してうまいわけじゃない。今日はまだ修正して対応できましたが、良いイメージはないです」

だから比江島は1勝1敗という結果を「連敗しなくて良かった」と受け止めている。「千葉に1勝できたことは自信になります。負け癖がつかなくて良かった。タイラー・ストーンがいたらまたどうなるか分からないですけど、それでも今日勝つのが大事でした。どこが優勝してもおかしくないチームを相手にして大事なのは、まずは連敗しないことだと思っています」

比江島個人の課題は「大事な場面で決める力を身に着ける」

実際、三河はここまで30試合を戦って7敗を喫しているが、連敗は開幕直後の名古屋ダイヤモンドドルフィンズ戦で喫した1回のみ。他の負けはすべて2連戦で先勝した後の負けで、今回の千葉戦は第2節以降で初めて、「第1戦を落として迎えた2戦目」となった。ここで負けなかったことに比江島は大きな意義を見いだしている。

シーズンも折り返し地点に入り、「一人ひとりがやるべき役割をしっかり分かっています。最初はつまづきましたが、そこは良くなっている点です」と比江島はチームの成長を語る。課題はやはりディフェンスだ。「10点差離したところから追い付かれる展開が多いので、そこから引き離す力が必要です。油断してリバウンドを取られたり、ディフェンスが緩んでしまうところがあるので、そこはしっかり引き締めたいです」

比江島自身の「やるべき役割」はアシストとシュート、得点に直結するプレーだ。「そこは意識してやっているつもりですけど、まだ自分が満足する数字は残せていない。今日も引き離す場面でシュートを外してしまったりとか。大事な場面で決める力を身に着けたいです」

個人にしてもチームにしても、いきなり強くはなれない。焦ることなく、一歩ずつ着実に。西地区首位を快走する三河に慌てる必要はない。じっくりと力を蓄え、来るべきプレーオフに最高のチームが出来上がっていればいいのだ。それは比江島も同様。千葉との第2戦を終えた後にそのままNTC(ナショナルトレーニングセンター)へ向かった比江島は、夏からほとんど休みなくフル稼働し続けているが、過密日程との付き合い方はもう分かっているはずだ。

今週末はホームに戻り、こちらも優勝候補の一角であるアルバルク東京との初対戦を迎える。相性や過去の対戦成績を持ち出すことに意味はない。焦らず騒がず、やるべきことに集中するだけだ。