広瀬健太

文=丸山素行 写真=B.LEAGUE

15分間で5アシスト4スティール3ブロック

1月16日、サンロッカーズ渋谷はレバンガ北海道とのハイスコアリングゲームを85-80で制した。

速攻での得点で29-6と大きく上回ったことが勝因となったが、その速攻を生み出すディフェンスで貢献したのが広瀬健太だ。

第1クォーター途中でコートに送り込まれた広瀬は、約5分間で2アシスト1スティール1ブロックを記録。これらの数字がほぼ得点に直結していた。その後も、広瀬はバランサーとしてチームに安定感を与え、守備でも効果的な仕事をした。

「足が良く動いて、しっかり守れた」という広瀬は、15分間の出場で5アシスト4スティール3ブロックをマーク。ポジショニングやチップアウトなど数字に表れない部分での貢献度も高いが、「目に映るようなところで結果が出た」と、この日はスタッツで違いを見せた。ただし本人は「スティールしたのも、チームで周りにプレッシャーをかけた結果」と、いつものように謙遜する。

黙々とミッションをこなす仕事人気質の広瀬だけに、表情を露わにするシーンはそう多くない。だが第2クォーター残り8分22秒、ピック&ロールから長谷川智也の3ポイントシュートをお膳立てした際、時計が止まらない状況で広瀬は珍しくガッツポーズをした。

その直前の場面、折茂武彦のシュートをブロックした広瀬は、ボールをプッシュして長谷川の3ポイントシュートをアシストしていた。「2本連続で決めて、全部僕のパスからだったので。彼は僕のパスからしかシュートを決めないので。彼の得点の半分は僕のアシストです(笑)」とジョークまで飛び出し、「良い流れを実感したので」とガッツポーズの理由を語った。

広瀬健太

いまだ上位チームを破る成功体験がないSR渋谷

北海道に競り勝って連敗を止めたSR渋谷だが、終盤に1点差に詰め寄られるシーンもあり、「今日はもっと点差を離して勝てる試合だったんじゃないかなと思います。突き離せるところで突き離しきれないところは正直ある」と広瀬は課題に目を向けた。

SR渋谷は現在14勝18敗と、苦戦した序盤の出遅れを取り返しつつある。それでも、取りこぼしは少なくなったが強豪と称されるチームから勝利を挙げられていない。リーグ初年度以来となるチャンピオンシップ進出を果たすには、そうした上位チームを破ることが必要となり、広瀬はその点を強調する。

「勝ち癖、負け癖みたいなところがあって、下位チームには取っているんですけど、上位チームに勝たないと本当にステップアップしたとは言えないんじゃないかと思っています」

そうした強豪と呼ばれるチームは、「自分たちのスタイルがしっかりある」と広瀬は定義する。SR渋谷は伝統的にディフェンスのイメージが強く、現在の平均73.5失点という数字はリーグで5番目に良い。それでも「ディフェンスが自分たちのベースだというのはチーム内で話していますが、それが今揺らいでいるかと。80点じゃなく70点以下に抑えられるようにしたい」と原点回帰を目指す。

SR渋谷は次節、栃木ブレックスと対戦する。故障者を多く抱えながらも、既存戦力で『堅守速攻』のスタイルを体現し、リーグ2位の好成績を収めている。さらには日本代表の比江島慎も加入し、より手ごわい相手となった。

「上位チームに勝たないとステップアップしたとは言えない」と言う広瀬。同じディフェンスにプライドを持つチームであり、リーグの強豪である栃木に勝つことができれば、SR渋谷は本当の意味で上昇気流に乗るはずだ。オールスターブレイク明けの初戦、SR渋谷は早くもターニングポイントを迎える。