長岡萌映子

文=丸山素行 写真=鈴木栄一

「チームとしてまとまって、勝ちに繋げられる」

昨日行われた皇后杯の準決勝第1戦、トヨタ自動車アンテロープスがデンソーアイリスに勝利したポイントとして、髙田真希を徹底したディフェンスで抑え込んだことが挙げられる。キャプテンの三好南穂は「1人ではなく5人で守った」と相手エースを封じたチームディフェンスを誇ったが、その中心にいたのは主にマッチアップした長岡萌映子だ。

スキルとフィジカル、そして経験豊富な髙田を止めるのは至難の業。それでも長岡はタイトなディフェンスで自由を与えず、容易にボールを受けさせなかった。言わば長岡の『髙田越え』がデンソー撃破に直結したわけだが、長岡は「超えたかどうかは分からないですし、自分の中ではいつまでもあこがれの存在です」と髙田へのリスペクトを忘れない。

「ポストプレーヤーとして自分がプレーすることもあるので、そういう時はリツさん(髙田のコートネーム)は上手いですし、本当に尊敬します。今回のワールドカップとか、リツさんの戦う姿を見て学ぶことはたくさんあったので」

長岡はそう語るとともに、チームの勝利であることを強調することも忘れない。「スタッツを見れば自分や(馬瓜)エブリンが得点を取ってチームを勝たせたように思われるかもしれませんが、今日は特にチームディフェンスが良かった。それができたのが大きいです」

トヨタ自動車は昨シーズン開幕前に長岡やエブリン、三好といった代表クラスの選手を獲得し、JX-ENEOSサンフラワーズにも引けを取らないタレント集団となったが、ここまでタイトルには手が届いていない。「タレントが揃っている分、個性が強すぎて個々になりがち。そういう試合が何回もありました。それが今は出なくなってチームとしてまとまってプレーできて、勝ちに繋げられました。それでファイナルの舞台に立てるのが大きな収穫です」

『髙田越え』についても、長岡が個人のマッチアップで果たしたとは思っておらず、チーム同士の戦いで乗り越えたのだと強調する。「個人としては髙田さんはすごい選手です。試合としてはチームが勝って超えたかもしれないですけど、私の中ではいつまでたっても『師匠』だと思っているので、一緒にプレーできる、戦えるのがうれしいです」

長岡萌映子

渡嘉敷と宮澤、エースとの対決は「相当ハード(笑)」

もう一つ、乗り越えなければならないのが今日のファイナルで対戦するJX-ENEOSサンフラワーズだ。長岡がマッチアップするのは3番なら同学年のライバル宮澤夕貴、4番なら日本のエース渡嘉敷来夢となる。宮澤とのライバル関係については「そう思われがちですよね、高校の時からずっとライバルって言われてきて(笑)」と、マッチアップする様子を思い浮かべているのであろう笑みが浮かぶ。「お互いライバル視してるかもしれないですけど、戦ってきた仲間ですし、自分としてはプレースタイルが全然違うので、このままお互いのプレーを出していければいいと思います。JXにはタクさん(渡嘉敷)も、吉田(亜沙美)選手も藤岡(麻菜美)もいて、それこそ代表のメンバーがたくさんいます。それに対してチームで戦っていかなければいけないです」

宮澤と渡嘉敷はまさにJX-ENEOSの得点源。おそらく長岡はこの2人と交互にマッチアップすることになるだろう。ここで勝てばチームはタイトルにぐっと近づくし、長岡が圧倒されてエースを勢い付かせるようではJX-ENEOSの優位は動かない。「宮澤は3番でライバルですし、4番で出る時は渡嘉敷選手、相当ハード(笑)」と長岡はそのマッチアップを楽しみにしている。

これはトヨタ自動車を今シーズンから率いるヘッドコーチ、イヴァン・トリノス・ガルシアの影響だ。決勝進出を決めて「バスケットは楽しまなければいけない。ファイナルを楽しもうと選手には伝えるつもりです」と語った指揮官の考えが長岡にも伝わっている。「個人の出来はもちろんありますが、コートで楽しむことを考えます。ミーティングでコーチも言っていたんですが、『どれだけ楽しめるか』です。自分たちのバスケットに自信を持って楽しもうと思います」

日本代表で一緒に戦ってきた仲間がライバルとなる。一歩も引けないマッチアップとなるが、その切磋琢磨がお互いを高め合う結果になるはずだ。皇后杯ファイナルは11時に試合開始となる。