文=鈴木健一郎 写真=本永創太

「やらないといけないことができなかった」のが敗因

オールジャパンの前年王者であるシーホース三河は、準決勝で千葉ジェッツに敗れて大会を去ることになった。栃木ブレックスを破り勢いに乗る千葉は、攻守が噛み合いあなどれないチームへと成長していた。結果、決勝では川崎ブレイブサンダースも下して優勝している。

三河のエースである比江島慎は、準々決勝が終わった時点で、今シーズンのBリーグでもまだ対戦のない千葉について「やったことがないので何とも言えないです。どちらかと言うとやりたくない相手」とコメントしていた。この時に抱いていた形のない不安が的中してしまう結果となった。

すべては立ち上がりだった。比江島と金丸晃輔、当たれば止まらないスコアラーを擁する三河にとっては打ち合いこそが望ましい展開だったが、千葉の集中したチームディフェンスを崩すことができず、第1クォーター、第2クォーターともに13点と得点が伸びない。攻めあぐねている間に、千葉を守備から勢いに乗せてしまった。

「前半、チームがリズムに乗れませんでした。自分が行こうとしなかっただけなので、最初から積極的に行けば良かったと思います」と比江島は唇を噛む。

鈴木貴美一ヘッドコーチが「思った以上にシュートが入らない厳しい展開」と振り返ったように、比江島に限らずチーム全体のシュート成功率が上がらなかった。一発勝負のトーナメントでこういう展開が来てしまうと厳しい。「そうですね、それまでシュートは入っていたので、そのままのリズムで入ってしまったということもあります」と比江島は言う。

「リバウンドを取って走って得点に繋げることが自分は得意なのですが、前半は相手に同じことをされてしまって自分たちのリズムが作れなくて、やられてしまいました。後半も出だしにシュートが入らなくて。相手のディフェンスがハードだったのもありますが、やらないといけないことができなかったというのが敗因です」

「プレッシャーはなかった。楽しみながらやっていた」

第3クォーターまで41点と、自慢の攻撃力を千葉に封じられた。第4クォーターにようやく『比江島タイム』が訪れ、最後まであきらめず追い上げたが及ばず。「流れが悪くてもディフェンスでプレッシャーをかけて、シュートが入らない中でもオフェンスリバウンドをみんなで取ったことは大きいと思います」と第4クォーターの逆襲を振り返るが、勝敗を分けたのはそれより前の時間帯だ。

比江島自身は試合の入りが重かったことに加え、石井講祐や原修太の徹底したディナイに苦しめられた。「そこは確かに厳しかった。あそこで足を止められてしまいました。どうにか打開できれば良かったんですけど、力不足です」

第4クォーターが始まる時点で18点差。「厳しいとは思いましたが、全然あきらめてはいませんでした」と比江島は言う。強引に仕掛けてタフショットを沈めることで流れを呼び込む、エースの仕事を一応は果たした。ただ、残り1分の時点で68-75と7点差まで追い上げはしたが、そこまでだった。

連覇へのプレッシャーについては「何一つ感じていませんでした。楽しみながらやっていたので、そこは言い訳にはなりません」と否定する。それでも、悔いの残る負け方だったのは確か。チームとしても個人としても、すべてを出し切ったとは到底言えない出来で、持ち味を出せないまま相手のペースで試合を進められてしまった。「流れが悪い時にもっと早く、がむしゃらに流れを変えられるようなプレーをすればよかったと思います」と比江島は振り返る。

これにてオールジャパンでの挑戦は終わり。だが、しばしの中断期間を挟んでリーグが再開する。「ここで終わってしまったので切り替えて。こういった重いゲーム、流れが悪いゲームも多々あると思うので、その課題をリーグ戦でしっかり修正して。最後に勝てればいいと思うので、絶対に勝ちにいきます」

チームが苦しい時に流れを変えるのがエースだ。その役割を果たせなかったことに比江島は大いに責任を感じていた。流れが悪いなりの戦い方、その精度をいかに高められるか。三河にとっては早急に克服しなければいけない課題が残った。