文・写真=小永吉陽子

昨年の夏、U-18日本代表はアジア選手権で準優勝を果たし、18年ぶりに世界へのチケットをつかんだ。今年7月にエジプトで開催されるU-19世界選手権に向けて、すでに10月より毎月1回の強化合宿が組まれ「選手を競わせて選考を行う」方針の下に競争が行われている。
インターハイで活躍した福岡第一のガード重冨周希と友希の2人、今大会で平均38.7得点を叩き出した193cmの山口颯斗(正智深谷)はアジア選手権後に追加招集されている。ウインターカップに出場したU-19代表候補たちの活躍ぶり、そして新たな代表候補は出現したのか、大会を振り返ってみたい。

杉本天昇(土浦日大)
生粋の点取り屋にポイントガードの役割をプラス

U-18アジア選手権のカザフスタン戦で43得点をマークし、高校界屈指の得点力を見せつけた杉本天昇(185cm)。ウインターカップでも得点にリバウンドにとフル回転。また「3年生になってからトライさせている」(佐藤豊コーチ)というポイントガードについても、時おりボール運びやゲームの指示をする場面が見られた。
「この身長だとポイントガードができたほうがいいし、菅原と高原が点を取れるようになってきたので、自分にディフェンスを引き寄せてパスをさばけるように」(杉本)とプレーのバリエーションを増やしているところだ。
準々決勝では得点を取る役割に戻り、北陸学院の大倉颯太とのスコアラー対決が期待されたが、相手のゲームコントロールにハマって最後までリズムをつかめず、タフショットを打たされてしまった。杉本にしては物足りない18得点というスコアに、「自分の責任です」という言葉を残して東京体育館を後にしている。
U-19代表ではどんな状況でも、どんな体勢でも打ち切ることができる強みを生かしたシューター起用になるが、ポイントガードに取り組んだことで新たな魅力も出てくるはずだ。

津屋一球(洛南)&水野幹太(福島南)
代表で交友を深めた2人のエース、早すぎるクリスマス決戦

U-18代表の活動を通して仲が良くなったという2人のエースは、2回戦で激突した。水野幹太(184cm)がキャプテンとして、そして司令塔として牽引する福島南は、上背のある選手は不在だが意志の疎通が取れたチームプレーを展開して、インターハイでは初の4強入り。洛南は京都府予選で東山に敗れインターハイ出場を逃したが、国体ではその東山のメンバーと組んで優勝。津屋一球(188cm)は東山の岡田侑大とともに得点面で貢献している。
ともに「ここが最初のヤマ」と臨んだガチンコ決戦は、62-60で洛南に軍配が上がった。しかし洛南は終盤にリバウンドを取られて福島南の猛追に遭っており、続く3回戦の延岡学園戦でも終盤にリバウンドを支配されて大逆転負けを食らっている。この詰めの甘さによって上位進出には至らなかった。「自分がもっとエースの自覚を持って大事な場面で引っ張っていかなければならない」(津屋)という反省点を挙げている。
2人ともU-18アジア選手権での出番は限られたが、代表の一員として学ぶことは多かった。「ゲームメークも得点もできるポイントガードになるために、これからもU-19の合宿で学びたい」と水野は決意を新たにしている。

赤穂雷太(市立船橋)
194cmの大型ポイントガード「国際大会にすごく出たいです」

U-18アジア選手権に出場したメンバー以外で、ウインターカップでの活躍が目立った選手を挙げてみたい。

市立船橋の赤穂雷太は194cmの大型ポイントガードとしての将来性を見せた。近藤義行コーチが「日本代表の司令塔になれる資質がある」と、1年前の新チーム開始と同時にコンバートに踏み切った成果が表れつつある。実際には、チャレンジ中の1番(ポイントガード)と従来の4番(パワーフォワード)を兼ねながら、走力、ボール運び、パスに関して成長を見せている。
今後は「勝ったり負けたりするゲームの局面で判断ができるようになること」(近藤コーチ)が課題だが、これにはさらなる経験が必要だ。世界を目指す上で赤穂のようなビッグサイズのガードを育成するならば、早くから国際大会で経験を積ませたい。

岡田侑大(東山)
ウインターカップ得点王は「外のシュート力が必要」と自覚

ウインターカップの得点王に輝いたのは、東山を準優勝に導いたエース岡田侑大(187cm)。得意のドライブを中心に平均30.40得点を叩き出しつつも、マークが厳しくなるとアシストに転じる能力を見せてアシストでも3位(平均3.60本)を記録。
岡田はU-19にも将来のA代表にも意欲を見せつつも「自分はドライブインしかないから、外のシュート力を身につけなければならないと思う」と自身の課題を冷静に見つめている。

大倉颯太(北陸学院)
大ブレイクした2年生エース「海外と戦ってみたい」

今回のウインターカップで最もブレイクしたのは、北陸学院3位の原動力となった2年生エース、大倉颯太(184cm)だろう。布水中で全国制覇の経験を持ち、身体能力を生かしたダイナミックなプレーが持ち味。それだけではなく、今大会はゲームの流れを呼んでコントロールをするクレバーさも見せつけ、ポイントガードを目指せる資質も見せた。
国際大会出場にも前向きで、「海外の選手やチームと戦ってみたいです。国際大会で日本人が通用することを視野に入れて、ピック&ロールで自分も周りも生かす練習をしています」と意欲を見せる。


次回のU-19代表候補の強化合宿は1月中旬に予定されている。身体作りが進んでいる大学生からは、早生まれの三上侑希(中央大)、増田啓介(筑波大)、伊森響一郎(青山学院大)の3選手が参加。また、ゴンザガ大の八村塁にも参加資格があり、もしチームに加入できれば、これまでにない競争の中でU-19代表が結成されることになる。