文=鈴木健一郎

「日本のスタンダードを国際的なレベルまで高める」

2019年のワールドカップ、そして2020年の東京オリンピックに向け、男子日本代表が本格始動した。

先週発表された重点強化選手68名から、今回は25名が招集された。日曜のBリーグの試合を終えてすぐに代表に合流し、月曜と火曜の2日間の合宿を行う。このハードスケジュールに心身ともに慣れることも、今回の狙いの一つ。もっとも、どの選手も疲れを見せるどころか、新たな指導者によるメニューを精力的にこなしていた。

長谷川健志ヘッドコーチの退任後、後任が決定するまで暫定的にチームの舵取り役を担うテクニカルアドバイザーのルカ・パヴィチェヴィッチが、今日の練習後に取材に応じた。

来日してからの3週間でBリーグの試合を10試合以上見ていると言うパヴィチェヴィッチは、今回の招集メンバーの顔と名前、そしてプレーの特徴がすでに頭の中に入っていた。その上でこの2日間の練習をこなした感想は、「日本人選手は質の高いものがあるが、ただ今の現代バスケットで求められるところで言えば向上しなければいけない点がある」とのこと。

「私が来た理由はそういう要素を持ち込むこと」と言う。

「動きも含めて気持ちの面でも激しさ、積極性」

パヴィチェヴィッチは来年5月か6月に行われる東アジア選手権まで暫定的にチームの指揮を執ることになる見込み。とはいえヘッドコーチではなく、『日本のスタンダードを国際的なレベルまで高める』ために、多くの選手を代表合宿に呼び、レベルアップさせるのが彼の役割だ。

彼は『3つのゴール』を設定している、と説明する。

1つ目はディフェンス、激しく継続性のある守備だ。パヴィチェヴィッチは語る。「動きも含めて気持ちの面でも激しさ、積極性、攻撃的なものを一人ひとりが持つ。ソリッドネスをみんなで共有して、ディフェンスの中でズレを作らない。ところどころでやれている選手もいるが、 それを40分間のゲームで継続してやれるのか。40分間そういう気持ちを持って激しくやることを求めていきたい」

2つ目はオフェンスの多様性。「これまで日本人の選手で素晴らしいタレントを持ったオフェンスの人間を見てきて、能力は高いがシューターとかドライブとか、何かに特化したスペシャリストが多い。ところが今、ヨーロッパで求められているのは、ドリブルができてシュートも打ててパスもできて、いろんなことができる選手。オールラウンダーということです」

そして3つ目はフィジカルだ。「最終的にはディフェンスもオフェンスも、それをなし得るためのフィジカル的な部分が必要とされる。力とか筋力もそうだし動きとか走力もそうだし、スタミナもそうかもしれない」

「この一つの過程が東京に、そのまた次に繋がることを願う」

今日で第1班の合宿は終了。来週はまた別の25選手が招集され、今回と同じ指導を受ける。パヴィチェヴィッチは言う。「みんな日曜の試合が終わってここに来て、休みもなく代表の練習をしている。質を上げるためにみんなが協力している。クラブも協力するのは簡単ではない。クラブは主力選手を手放している状況でいる。それでもこの合宿で素晴らしかったのは、全員が責任感を持って、コーチ陣もモチベーションを持って来て、一人ひとりがそれを表現して最善を尽くしたこと」

「この一つの過程が東京に、もちろん2020年だけとは言わずまたその次に繋がることを願っています」